2011年2月8日火曜日

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【北海道&東日本パスの旅 12日目】さらば東北本線 (下)






いよいよ新幹線ばかり客が流れるばかりで、鈍行列車を潰そうとしているようにしか
私には見えない。地元利用者は不便を強いるばかりなら、新幹線など造る必要はないように
思うときがある。新幹線に乗って移動時間は短縮したが、人は急かされるようになった。
旅行者も新幹線の停車駅まで一気に乗ってしまうから、途中でふらっと寄り道するという
考えは無くなる。観光客の流れが固定されてしまって、有名な観光地以外には金を落とす
ことがないので、安定して栄えている街とそうでない街の格差がどんどん広がっていく。

11:06発の一ノ関行きは2両編成。IGRいわて銀河鉄道が遅れても接続はしないだろう。
新幹線の客だったら遅れても接続するに違いない。観光客と地元客が混じった車内はすでに
席は埋まっており、揺れる車内で立っているのは少々憂鬱な気分になる。

JRとしてはこの東北本線も宇都宮まで第3セクター化したいに違いない。
最低限の車両を走らせて、利用者が減少すればそれで自然消滅していく。
国鉄からの経営方針のまま、今もどこかで線路は消えようとしている。

都市をつなぐ幹線なのに、ロングシートだけの無粋なステンレス車両に乗っていると
景色もあまり楽しめないこともあってか、どうしてもプラスの思考に向かなくなる。
それでも来る列車が乗れるかどうかが不安だった時代に乗っていた宮脇俊三氏から見たら
いつでも乗れるだけ贅沢だ、とお叱りを受けるかもしれない。だが、当の宮脇氏も作品中で
ロングシート車両に乗ったときの景色の楽しみ方に苦労されていた事が書かれている。
座って首をひねるのはしんどいので、仕方なく立って景色を楽しむという按配である。

各駅で地元利用客が降りて行く。車内を見渡す限り、地元の若い人は少ない。若い人を
見かけたらそれはおそらく私と同じく旅行者であろう。
手ぶらでポーチを着けている人、スポーツ新聞を広げている帽子をかぶったおじいさん、
見た目は行儀が良さそうな老人の方々。そしてトイレ付近には若者の2人組。
2人組は旅行の途中か、帰るところだろうか、暇を持て余している様子である。

先頭から2つ目のドア付近にももう一組の若者が立っていた。席が空くとすかさず座った。
また例のメルトダウンが発生しそうな予感なので、トイレにこもる。

村崎野を過ぎると学生さんの白いシャツが目だって混雑するが、次の北上で大半が下車。
このロングシート車両に乗るのも今回が最後になるだろう。
すぐ向かいで居眠りをしている若い女性の足元にはアスパム物産の青い袋。青森駅から
少し歩いたところにある三角形が特徴的な建物が描かれている。ずっと乗っているように
記憶しているが、もしや同業の士なのだろうか。鉄道ブームに沸いてきているそうだが、
若い女性が土産袋を携えて鈍行列車に乗っているのは、正直まだ違和感がある。

若い女性はもう1人の女性と2人組の様だが、彼女達の今日の日記には東北本線の車内で
ほとんど居眠り(笑)、という内容になるのだろうか。

水沢で降りていったカップル。黄色いチェック柄のスカートから出ていた足は異様に細く
見えた。女の子は無理にダイエットでもしているのか。変に心配になってしまう。
風に揺られてホームの風鈴が響く。ドアが閉まるとともに聞こえなくなった。
こうしてロングシートに座っていると、鉄道で旅をしようというキハ、じゃなかった気は
起きないだろうと思っていたが、しばらくして再び禁断症状が発生するから困った事だ。

この10日間ほどの旅で原生花園や止別の食堂や北浜の喫茶店で雨に降られた日を除いて
幸運にも天候には恵まれた。天気予報によれば、今月一杯は暑さが続くだろうという。
入道雲を見る限り、確かに暑さはまだまだ続きそうだ。
乗り潰しと北海道を満喫するべく避暑の目的も兼ねた旅だったのだが、北海道の予想外の
暑さに避暑の目的は全く果たせなった。しかし予想以上に自分としては夏の北海道を
腰を据えて満喫できたことに大変満足している。今後は足を向けることはあるだろうか。

青森を早朝に出発して鈍行を乗り継ぐと、一ノ関で昼飯の時間帯になる。
以前の旅では駅弁を買ったのだが、ロングシート車両で食べる気分も勇気もなく、
結局仙台のベンチでもそもそと食べた思い出が蘇ってきた。
仙台では駅弁以外の選択肢として、30分の間に改札付近で食べられる店に入らないと
いけない。どうしたものだろうか。

一ノ関では再びロングシート車両の仙台行きに乗り込むことにする。
客車時代のボックスシートならまだしも、ロングシートで背中を丸めてコンビニで買った
おにぎりをほおばる光景は何だか滑稽に見えてしまう。しかし特急列車もない東北本線
では選択肢は他にないのだ。

もちろん常磐線から特急列車で上野までという選択肢はある。
新幹線ほど金をかけたくないけれど、少しなら時間を掛けて旅をしたい人たち向けにも
せめて盛岡から仙台まで特急列車を走らせることはできないのだろうか。

ロングシートの埋まり様を見れば、シーズンならクロスシートの需要はありそう。
583系のようにとは行かないが、臨時の快速列車でクロスシートなら景色は単調でも少々
旅情を感じることが出来るかもしれない。鉄道旅では車両は結構影響していると思う。

ロングシートが停車するホームでは駅弁を売っている。特急列車でなくても我々の一部が
ロングシートで食べる需要が少なからずあるからだろう。そばやうどんのスタンドもある。
だが、立ちながら食事はしたくない。座ってゆっくりと味わって食事をしたいのだ。

発車間際になると、ロングシートは地元客と観光客でほぼ埋まる車内。
相変わらず、先ほどの鉄道地図帳の女性は立ちっ放しで前面展望を楽しんでいる。
もしかして東京まで一緒の列車かもしれない。もう1人前面展望を楽しんでいるのは帽子を
被った少年。ハーフパンツにTシャツの格好だが、どうやら荷物が置けそうなスペースを
有効活用して食事をしながら前面展望をしているようだ。次回乗る機会があれば、この
アイデアを活用させて頂くとしよう。

先ほど乗ってきた列車とは違い、こちらはそれほどの混雑ではない。
席が埋まり、少々の立ち客が端に寄って立っているという状況である。

花泉。おばあさん2人がゆっくりと慌てる様子もなく降りていく。反対側のホームには
制服姿の女の子2人が列車を待っている。RED BEAR率いるコンテナ列車が視界を遮る。
油島。待ち人はおらず。静かにホームを離れていく。小田急よりも静かに。
先ほどの帽子の少年はすぐ隣に座ったが、よく見ると肌が荒れている。アトピーだろうか。
向かいの中年男性はTシャツにジーパンという格好だが、どこかへふらりと散歩なのか
小さな鏡を見ながらあごの下あたりの毛抜きに勤しむ。トイレでやれよ、と心で呟く。

貨物列車とは何度かすれ違うけれど、RED BEARのコンテナ列車しか見かけない。
それだけコンテナ車両で輸送する需要があるから、JR的には喜ばしいこともしれないが。
510形と呼ばれるこのタイプの機関車はどこでも良く見かけるようになった。勢力範囲は
拡大しているらしい。最近、JR東日本が初めて開発した510形をベースにした北斗星色と
カシオペヤ色も運行についており、撮影してみたいと思う今日この頃だ。
EF81形の置き換えとして開発されたが、初めはあまり好きにはなれないかなと思ってたが、写真や実車を見ているうちになかなか良いデザインではないかと思える様になってきた。
しばらくすれば、この付近も彩り豊かな510形が牽引する貨物列車が走るようになるだろう。
小牛田。一ノ関同様に離れたホームに停車している4両編成。一ノ関や盛岡と同じように
乗換え時間はあまりない。この列車も立ち客は少ない。席も所々で空いている。
向かいに座る中年女性の3人組は東北旅行の帰りらしいが、旅行の話は聞こえてこない。
女性は年齢に関わらず、旅行よりも同性の他人の話題に強い関心があるらしい。
男性同士のグループと女性同士のグループでは後者の団結力は圧倒的だ。時間の使い方も、生き方も実に合理的だと感じる。合理的に生きる人種なのだと私は思っている。
おしゃべりに夢中に見える女性陣もさりげなく周囲は観察している。たとえば向かいの
3人組のように。だからこれが若い女性のグループだと、まるでこちらが会話を盗聴して
いるような変な罪悪感というか、気まずさがある。途中で下車してくれると安心する。

松島を出るとトンネルとトンネルの間から左手に海が広がっているはずなのだが、
曇っていて見えなかった。晴れていればわずかな区間ではあるが、景勝を楽しめる。
地元利用者は高齢者が多い。男性諸氏は3タイプに大別できるかもしれない。
サンダルと帽子とスポーツ新聞のぶらぶら系、リュックやトランクケースで出かける
ハツラツ系、そして少数派の品の良い紳士である。どのタイプに属するかは育った環境、
人間関係で分かれていそうだ。

仙台。ここでは次の列車まで30分ばかり時間が空く。S-PALの地下レストランでカレー南蛮
を注文した。旅の最後をケチケチしても仕方ないので、生ビールもついでに注文。
15:02発に乗っていく予定だったが、15:18発の原ノ町行きに乗ることにした。
少し帰りが遅くなってしまうが、ゆっくりと常磐線で帰ることにしたのだ。

発車間際に乗り込むと分かってはいたが、席は埋まっていて少々混雑している。
大半は地元利用者だろう、車内は生活臭で満ちている。
館腰。白きシャツの学生さん4人、車内前方にはあずき色のジャージ軍団。中学生か。
場所と列車は違えど、学生さんの雰囲気に大差はない。亘理。学生さんが大勢下車する。
台風の影響を心配したが、雨は降っているが、これなら今日中に帰れそうである。

新地。先ほどの白いシャツの4人はまだ立っている。原ノ町まで行くのだろうか。
別の学校の学生さんが乗って来る。トイレそばのロングシートでは行儀悪く中年の
サラリーマン風が座席の上に足を伸ばしてくつろいでしまっている。常磐線らしい光景。

駒ヶ嶺。先ほどの4人とともに他の学生諸君も降りていく。
ようやく空いたボックスシートに座ると、隣のボックスシートでは1人、制服の女の子が
口を開けたまま上を向いて気持ち良さそうに居眠りをしている。

相馬。学生さんの団体が乗り込んでくる。ボックスシートは女の子4人で埋まるだろう。
彼ら地元利用者に譲るというより、ロングシートからなら会話が聞こえてきても
変に気まずい思いをせずに済む。お互いにボックスシートの背凭れで見えないからだ。

女子高の教室は今乗っているような車内のような状態なのだろうか。
乗客の大半は学生さんで占められる。放課後の教室のような雰囲気の列車は相馬を発車。
単線故に下り列車とすれ違いのために、途中4分ほど停車する。以前乗ったときも同じ
列車だと思ったが、これほどまでに学生さんの姿があっただろうか。前に乗ったときは
たまたま夏休みに入っていて学生さんが少なかっただけに違いない。

北海道と比較する意味はないのだが、やはりこちらは人が多い。稚内でキヨスク店員の
おばちゃんの話を思い出す。娘さんが一旦東京に働きに出たが、結局は稚内に戻って
しまう気持ちが何となく分かる。人が多いとどうしてもストレスを感じてしまうだろう。
北海道にとって本州を「内地」と呼ぶように、東京は内地の中の内地、異国という目で
見ているのかもしれない。前方に目を向けると大胆にも床に足を伸ばして座り込む女の子、
人の目を気にする様子もなく携帯電話を弄っている。お行儀の悪さはどこも同じらしい。
山陰本線の旅で、出雲大社へ向かうバスから見掛けたが、横断歩道を会釈しながら
渡っていく小学生の女の子達の姿が幻に思えて来る。蟹田でも地元の男の子が顔を知らない
私にきちんと目を見て挨拶してくれたのも幻だったのだろうか。

床に座り込んだままの女の子はそのまま居眠りをしている。これくらい図太くないと今後
生き残れないのかなと変に考え込んでしまった。いや、ここ注意するところだろうが・・。

鹿島。大半の学生さんが降りていくが、まだ大半が車内に残っている。
結局、終点の原ノ町まで「常磐線放課後の動物園号」に乗り合わせてしまった具合だ。
「旭山動物園号」という易しいものではない。あちらは特に動物園へむかうこども達が
車内でも楽しめるように企画されたイベント列車だが、こちらは普段の生活路線だ。
彼ら以外の地元利用者で混んでいればまだ良いが、若い女性陣のおしゃべりを聞かぬ振り
をするのと同等の気まずさというか、見てみぬ振りをするのは精神的に疲れるものだ。

原ノ町。ここでいわき行きに乗り換える。引き続き学生さんの姿があるが、先ほどのような
動物園状態では無くなった。集団でなくなるとその静かさのギャップが激しい。
白い制服の女の子も携帯電話を弄っている分には大変静かにしている。

小高。学生さんが何人か降りていく。双葉で数十人の学生さんが乗り込む。
学校帰りの時間帯らしい。学生さんばかりが目立つ。よくみると改札付近にも同じ制服が
集団で群がっている。ここで動物園号は再び運行復活した模様だ。

常磐線は徐々に首都圏に近づいている。現実の世界に戻っていく。何だか淋しい気分だ。
夜ノ森。学生さんがまとまって吐き出されていく。園長格が降りたようで車内は再び
静かになる。富岡。雨が降っている。ここではまた別の動物が乗り込んでくる。
終点のいわきまでこの動物園号は運行される見通しらしい。
木戸を出るとわずかな区間だが海が見える。慌てていたら水戸と間違えるかもしれない?
だが、すぐに木々によって視界は遮られる。もう少し海に寄ってくれると奥羽本線の車窓
と同じような風景が楽しめそうだ。末続。常磐線で海の見える唯一の駅だろうか。
晴れていれば、青い海に誘われて一旦下車するのも良いだろう。四ツ倉までは海が見える
景勝ポイントだと覚えておくことにしよう。

いわき。水戸行きに乗換え。見慣れた車両に乗り換えるころにはすっかりと夜。
動物園号は水戸までの長い長い距離を毎日運行されている。これもよく覚えておこう。
単に学校帰りの時間帯に乗り合わせてしまっただけだが、夏休みなどの長期休暇であれば
もう少し快適に乗り通すことが出来るだろう。
仙台からずっと学生さんで混んでいる地元の小田急線に乗っているような気分だった。

湯本。学生さんの乗り降りしかない。しばらくこの光景は続きそうだ。
泉。ここでも学生さんがまとまって降りていくが、すぐそばに立っていた女の子2人組は
男子諸君が階段までホームを歩いていくのを確認してからドアを出て行った。後ろから
声を掛けられることを警戒しているのか。
向かいに座っている男性は時刻表を開いているが、同業者かもしれない。

勿来。ここで動物園号は運行終了。水戸まで続くと思っていたが、客は我々のような
乗り通しの客と新たに乗り込んできた客を足してもガラガラの静かな車内。
高萩。車庫には懐かしい京浜東北線の209系が留置されている。
時刻表を開いていたメガネの青年は、「こち亀」を読んでいる。
車窓にBOOKOFFの看板が見えると、何だか都会まで戻ってきたという実感が沸いてくる。

日立。ここで急に混みだす車内。大半が仕事帰りの地元客だろう。仕事が終わった安堵感
のような空気が満ちている。ガラガラだった車内は静かに混んでいる。
もう首都圏に入ったなと嫌でも感じてくる。旅の終わりも近いことを感じてくる。
佐和。どっさりと人が降りていく。仕事帰りと学校帰りが混じっている。沿線には
学校が多いのだろう、ほとんどの駅で学生さんの姿を見かけた。

水戸。上野行きに乗換え。いわきで駅員に尋ねたとおり、台風による影響を受けている。
それでも20:15発は3分遅れで発車した。遅れを取り戻そうと列車は出来る限り、スピードを
上げていくだろう。見慣れたステンレス車両に妙な安心感を覚える。

友部。上を向いて歩こうの発車メロディーとともにドアが閉まる。
この分だと小田急もダイヤ乱れが酷いことになっているかもしれない。

石岡。特急列車の通過待ち。3分ほど停車。土浦でも数分ばかり停車する。
ドア上の電光案内には他線の運休や遅延情報が流れているが、珍しく小田急はない。
ここ最近は遅延への回復には柔軟な対応をしている印象を受けるが、今回はどうやら
頑張っている様子だ。

ひたち野うしく。ここでも5分停車。遅れている特急列車の通過を待ち、4分遅れで発車。
しかし途中から快速運転になるので、遅れは取り戻せるかもしれない。ようやく取手。
ここから快速運転となり、日暮里で下車する予定だったが、南千住で足止めを食らった。

車掌の車内アナウンスによれば、三河島で線路内に人の立ち入りがあったためという。
飛び込みだろうか。旅の帰り道、小田急に乗っているか、小田急に乗り換える前に
時々遭遇しているような気がする。甚だ迷惑な話である。しかしこのままでは小田急の
終電に間に合わなくなる。そうなると、新宿あたりでもう一泊せざるを得なくなる。

仕方ないので、つくばエクスプレスで秋葉原に出る。
秋葉原から総武線で御茶ノ水、そして中央線の乗り換えて新宿というルート。
どうにか終電に間に合い、最後は何だか慌しい帰宅になってしまった。

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