2009年5月26日火曜日

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松田
7:23発

↓ 2531M 御殿場線

8:36着
沼津
8:40発

↓ 747M 東海道本線

9:16着
興津
9:25発

↓ 749M 東海道本線

10:13着
金谷
11:07発

↓ 大井川鐵道 
  臨時SL急行

12:30着
千頭
13:22発

↓ 南アルプスあぷとライン
  (大井川鐵道井川線)

15:06着
井川  ※中部電力ダムの撮影
15:48発

↓ 南アルプスあぷとライン
  (大井川鐵道井川線)

17:38着
千頭
18:14発

↓ 大井川鐵道
  普通列車

19:28着
金谷
19:31発

↓ 844M 東海道本線

20:02着
静岡
20:04発

↓ 1472M 東海道本線

20:58着
沼津
21:09発

↓ 2590M 御殿場線

22:22着
松田



小学校かその前か。父に連れて行ってもらった記憶がある。
車内販売で買ってもらった機関車形キーホルダーに収まった砂時計は
まだあるのだろうか。
鉄道博物館の新幹線関連の玩具が展示されたコーナーで、
白馬・三豊市への家族旅行で帰る途中で寄ったソフトクリーム屋で
忘れてきてしまった新幹線のNケージを思い出したように。

休日乗り放題きっぷは、東海エリアのみ有効なので
沼津までは御殿場線に乗っていく。

御殿場線でずっと「かぶりつき」をしていたおじさん。
地元の雰囲気全開、帽子は被っていないが、着ているウェアは
ゴルフなんかで着ているような背中にアルファベットが入っている
もので、英語表記があればカッコいいとか考えているのだろうか。
ワンマン列車のために降りる際はドア横の開閉ボタンを押して開けるが
冬の冷たい風が入るならまだしも、開け放しでも問題ない季節だが
ドアが開いているのが気になるらしく、すぐに閉める。
遠くへ列車旅をしていると、車中でこの手の「ドア締めじいさん」を
見かけるが、偏屈な性格である傾向が強い。

沼津から普通列車はいずれの駅も飛ばさず停車していく。
松田から沼津まで1時間、沼津から金谷まで2時間。
3時間かけてようやく金谷駅にたどり着く。

あまり記憶にないのだが、千頭駅は変わってしまっただろうか。
SLの終着駅であり、また始発駅でもあるが、そうした思い出を
確かめに行く旅である。
JR金谷駅の改札を出て、すぐ右手に大井川鐵道の金谷駅の駅舎がある。
狙ったわけではないが、臨時のSL列車が運転される。
毎日運転される11:48発の前に、11:07発に発車する。

人気のSLだから事前予約しないとだめかと思ったが、
大型連休をはずした通常の休日だったためか、
すんなりと窓側席を確保することができた。
あわせて井川線(南アルプスあぷとライン)まで乗り降り自由な
「大井川・あぷとラインフリーキップ」(5500円)を購入。
確保できなかった事を考えて、10:21発の普通列車に乗るつもりで
駅に来たわけだが、40分ほど時間が余ってしまった。
時間を潰したいが、駅の周りに喫茶店のような店がない。
探し歩くだけで終わってしまいそうなので、駅舎の中の壁に貼られた
車両の写真を見上げたり、駅舎を撮影したり・・。
売店にあった土産品のキーホルダーに見覚えのある機関車形が
ぶらさがっているのを見つけたが、砂時計であったはず部分が
中に納まっているものが、よく見ると砂時計ではなかった。
色のついたガラス管のようなものになっている。なんだろう。








目的の列車は電気機関車E102が客車とSLを最後尾としてゆっくりと
牽引して入線してきた。発車まで少々時間があるから、
客車をしげしげと観察すると、ドアも客車内の至るところで木が
使われている。合成の木目ではなく、本当の木が使われている。
車両と車両をつなぐ幌も足元を見ると、昔から使い込まれている事を
示しているように、日の光が漏れており、レールが隙間から見える。
ドア。手動である。走行中に開くと運転士に見つかるような
最新のシステムなど無縁。もちろん客が間違って開けないように
走行中は車掌がそこに立つことになる。



扇風機。「JNR」、「日本国有鉄道」のロゴ。
窓。下から全開にできる一枚窓。もっともそうでないと車内冷房に
慣れてしまっている我々は少々辛い。はじめから開いていた。
写真、特に左カーブ時に見える前の車両を撮影するにはもってこい
の環境である。ただしメガネとデジカメを落とさないように注意。




客車がガクンとひと揺れすると、そろりそろりと動き出す。
しばらくは全開の窓から覗いて前に見える車両とその先頭で
黒煙をあげる機関車を眺める。天気にも恵まれ、心地よい風が入る。
この開放感がなんとも嬉しくなる。



金谷駅の売店で買っておいた駅弁の蓋を開くとしよう。
缶ビールをプルタブを開いて、箸をつけるが、小さい頃の思い出は
蘇らない。どうも終点の千頭駅で機関車の前で記念撮影した事しか
覚えていないようだ。

ビールを飲みながら気持ちよく酔っていると、
車内販売のおばちゃんが買い物カゴをぶら下げて、やって来る。
売店では手に入らない車内限定ということで、「SL動輪焼」という
あんがびっくりするほど入っているというどら焼を一箱購入。
ついでにキーホルダーはないのかと尋ねたが、後でまた車内に
やってくるまで待ってほしいという。どうやらワゴンでは乗せきれない
売り物を買い物籠に入れて売りながら、ワゴン販売もこなす
一人二役をこなしているらしい。なんとも激務である。

7両編成と長いのは途中の駅で4号車から7号車、先頭の4両が団体が
客が乗り込むためだった。パック旅行の団体だろうか。

途中の長いトンネルをもぐっているうちに全開の窓から黒煙が
入り込み、車内もぼんやりとかすんでしまった。
トンネルの闇と車内の白熱灯とその灯がトンネルの壁に四角く
漏れているが、トンネル内にぼんやりと充満している黒煙の
せいで前方がまったく見えず、昭和にタイムスリップして夜汽車に
乗っている気分になった。読んだことはないが宮沢賢治の
「銀河鉄道の夜」のシーンに出てきてもよいくらいの雰囲気。
トンネルを抜けると、現実に戻ってしまったような、
夢の世界から抜けてしまったような。

かっぱえびせんの中身が無くなりつつあり、あと10分で終点の
千頭駅というところで、先ほどの車内販売のおばちゃんがやってきた。
やはり思い出のキーホルダーは同じ機関車形だったが、砂時計を
止めてしまい、その代わりミニライトに変わってしまったらしい。
「SL車内販売」と刺繍されたエプロンを着たおばちゃんが
走り回っているのを見て、何も買わないのは悪いような気がしたので
「大井川鐵道 C11」と刻印された矩形のキーホルダーを買った。




SLの終点千頭駅。機関車の線路の前で記念撮影ができたと思ったが
今はデッキに乗ることはあっても、線路に降りる観光客はいない。
ホーム周りも何か昔とは違って、窮屈な印象がある。
線路に降りてもよい開放感がなくなってしまったようだ。

改札そばの売店にあったキーホルダーもやはり同じだった。
かつて買ってもらった砂時計のものは無かった。
そのまま井川線の改札へ入ろうとしたが、次の発車まであと40分ほど
時間がある。しばらく機関車を見てから他のホームに停まっている
普通列車を見てみる。元近鉄特急に使われていたということで
全席クロスシート。「ビスタカー」を思い出す。



対して煙を吐く機関車の向かいのホームで停車しているのは
元京阪電鉄の特急車、車内にテレビがあったことから「テレビカー」
と呼ばれていたそうだが、車内に入ったがテレビはなかった。
こちらも元特急というだけあって、全席クロスシート。








そうしているうちにもう一つのイベントがホームで待っていた。
機関車の回送線への入れ替え作業である。
ここまで機関車が運行不能になった際に備える意味で、客車の
一番後ろに連結してやってきた電気機関車E102は一旦切り離されて
金谷方面へとポイントまでバックして、機関車と客車が停まっている
隣の線路へと入っていき、機関車と肩を並べる。

今度は機関車が金谷方面へホーム内にある渡り線までバックし、
機関車が客車から切り離されて、機関車だけまたもとの停止位置へ。
そしてまたバックして渡り線を渡って、電気機関車のすぐ後ろに
位置する格好になるが、そのままバックしていく。
しばくして電気機関車も渡り線の後ろまでバックして、今度は
渡り線を渡って、蒸気機関車が停止していた位置で停止。
渡り線のポイントが切り替わっていることを確認してから
ゆっくりと客車と連結。そしてまた停止位置まで引っ張る。

最後に客車の最後尾に蒸気機関車がゆっくりと近づいて連結。
見ていると短時間でいとも簡単にやっているように見えたが、
その作業員同士の連携は長年の経験と信頼がないと難しい仕事だ。
ブルートレインと電気機関車の連結、切り離し作業も見てきたが、
こちらの方がもっと先輩であり、迫力が違う。

前に電気機関車、客車、その後ろに蒸気機関車という今では見かける
機会があまりない光景がここでは毎日見ることができる貴重な鉄道。
鉄道博物館では展示資料こそ見られるが、動いている姿を見たり、
それに乗ったり、客車の揺れを体で感じることはできない。
電車も当時は活躍していた私鉄の車両が廃車ではなく、こうして
地元の足として活躍しているのは、当時をよくは知らない私でも
なんだか嬉しくなる。





電気機関車と客車7両と蒸気機関車の編成はホームからかなりバックして
今度は回送線と分岐するポイントの後ろで停止。
ゆっくりと回送線に入って行き、しばらくして停まった。
乗客がこうした光景を撮影する時間を考慮しているのか、
乗り換える次の井川線の発車時刻まで40分ほどあるのは丁度良かった。




そして井川線。「南アルプスあぷとライン」と呼ばれる赤い列車は
軽便チックな屋根が低い車両。後でwebで調べてみたが、やはり元々
ダム建設など敷かれた専用鉄道であり、そのためにいつも乗っている
列車や千頭まで乗ってきた客車に比べると車両規格が小さい。
SLが牽く客車同様にこちらも乗降口のドアは手動。
フックで鍵をかけるだけで、走行中も開けようと思えばできてしまう。
SLの時とは違って、車両間の通り抜けができない構造なので
一人しかいない車掌が乗っていない車両なら可能ではある。
一部車両の半分が、トロッコ列車のように柵だけになっている展望席
となっていて、ロングシートのように正面から景色を眺めることが
できるようになっている。ドアを開けなくても車外に出られてしまうが
危険なので絶対にしないように(笑)。する者はいないと思うが(笑)

この車両も冷房などそんな贅沢なものは付いていないが、
窓は上から全開にできる一枚窓。顔や手を出して撮影するには
この上なく素晴らしい環境である。乗降口のドアと天井が低いので
頭上に気をつける以外には座席も気動車なんかで見かけるクロスシート。




井川駅を離れた列車はその小ささゆえに遊園地のトロッコ列車が
普通の踏切を渡るような気分になる。
千頭森林鉄道と呼ばれていただけあって、森の中に線路が延々と
敷かれていて、駅があっても利用する人がいるのかと思えるほどの
秘境駅に停まっていく。川根小山駅のホームの狭さと低さはきっと
日本の鉄道で1位か2位を争うかもしれない。







この「南アルプスあぷとライン」のハイライトは、90‰という
急勾配を登るために設けられたアプト区間だろう。
アプトいちしろ駅に到着してしばらく停車。後に2両の電気機関車が
連結される。機関車の車輪の真ん中に歯車のついた車輪があり
これがレールの真ん中に設置されたラックレールに噛み合いながら
我々が乗っている車両を後押ししていく。
始発の伊川駅~走行中は観光案内の車内アナウンスを、ホームに
ついてから乗降客のために各車両のドアを開閉、
そしてこのアプトいちしろ駅では電気機関車が問題なく連結されたか
を確認する作業もこなす。車掌は一番大変な仕事のようだ。
そういえば、SLの乗務員は駅の窓口できっぷの販売業務もしていた。
大井川鐵道では、少ない人員でも観光客がいつでも楽しんでもらえる
ように体を張って精一杯サービスしていることが感じられる。
機関車でもそうだったが、このあぷとラインでも車両と乗務員や
作業員が一体となっていることが素晴らしい。
小さい頃に連れて行ってもらった時は気づかなかった。
今、こうして再び訪れて気づくこともある。





次の長島ダムまでがアプト区間。急勾配をゆっくりと進みながら
右手に見える長島ダムでは大量に水が放流されており、運がよければ
虹が見えることがあると車掌の車内アナウンス。
残念ながら虹は見えず。

尾盛駅はクマが目撃されたらしく、駅舎に「クマ出没注意」と白い紙
が張り出されており、車掌のアナウンスでも降りても命の保証は
できませんのでご了承くださいと告げられる。
大抵の秘境駅は命の心配までしなくて済むのだろうが、この尾盛駅は
はるかにレベルが上をいっている。こんな駅があるとは・・・。



奥大井湖上駅はさらに秘境駅としてはレベルが高い。
鉄道ファンには有名な、鉄橋上に設けられた駅であるが
はるか下には奥大井湖の水面が広がるその鉄橋の上を全開の窓から
走る姿を見るのはなかなかの壮観である。

またもうひとつの鉄橋を渡るが、枕木と鉄骨以外はなにも無いので
深い谷底が真下によく見える。落ちたらまず助かるまい。


接岨峡温泉では反対方向の列車とすれ違い。
奥泉ダムを右手にみれば、あぷとラインは終点に近い。






終点の井川駅も駅舎がないと列車のホームとは思えない。
工事車両の留置場所に駅名版を駅舎をあとで付け加えたような
感じだが、40分ほど後に発車する折り返しの列車が千頭まで行く
最終列車。夕方16時前には最終列車なのである。
この40分でできるのは駅から少し離れた中部電力のダムから
山々の景色を眺めるくらいだが、ダムや森の中の駅も含めて
この鉄道に乗らないと見ることができない景色でもある。
深い森の中に線路があるだけでなにか神秘的に感じてしまうが
そこに営業列車が走るのだから、思えば夢のような鉄道である。
昔アニメ放映していたピーターパンの話で、森の中で
白く光るレールを見たことがあるとピーターパンが話すシーンが
あった気がしたが、まさにこのあぷとラインがそのイメージ
にぴったりかもしれない。



井川駅の駅舎を出たところにある男子トイレにだけ鏡がない。
女子トイレに入るわけにもいかず、駅の窓口で鏡を借りることに
なってしまった。きっぷやお金がやりとりされる窓口越しで
鏡が渡された。トイレ内にフックがないので、外の引っ掛ける
ところを探してぶら下げて使った。洗顔ペーパーで拭うと
すぐに黒く汚れてしまった。SLの黒煙は凄まじい。
洗顔ペーパーは必携である。持っていて良かった。

大井川鐵道は列車の本数が多くないので、日帰りには向かない。
井川線で途中の奥泉からバスで寸又峡温泉まで行き、
ゆっくりと温泉に浸かりながら黒煙や汗を綺麗に流して
一泊して帰るのが王道なのだろう。

行きと同じくまた全部で61のトンネルを潜るが、
観光鉄道として、トンネルの数はできるかぎり少なくして
景色を楽しめるようにしているらしい。資材輸送が減り、
旅客輸送が主な収入源になっているが、赤字の経営状況が続き
このあぷとラインは中部電力が必要上保有している関係で
赤字は中部電力が負担している。






接阻峡温泉で接阻峡温泉止まりの反対方面から来た列車を
後に連結して、長編成となって終点千頭へと向かう。






今度はアプト区間が下り坂になる。上り坂では最後尾に連結して
後押ししていたが、今度はブレーキの役目となるべく先頭に
連結されて牽引していく。








行きは見られなかった長泉ダムの虹も帰りは見ることができた。
奥大井湖上駅の鉄橋は「レインボーブリッジ」と呼ばれているが
車掌の観光アナウンスでは「これが本当のレインボーブリッジ」
とうまいことを告げる。
2時間近くも乗っていれば、ビールも飲みたくなるが
残念ながらトイレはないので、最終列車の乗る際には要注意。
つまり終点の千頭までトイレに行きたくても我慢である。



千頭から普通列車である。行きに見かけた元近鉄の特急車の
クロスシートに腰を落ち着け、発車するのを待つ。
といっても、少し時間があるので改札の外に出て、食べ物と
飲み物を井川線の踏み切りそばの商店で仕入れて戻ってくると
改札横の「SL資料館」が気になった。開館時間は16時までと
なっているようだが、扉が開いており「開館中」と出ている。
きっぷの窓口で記念入館券(100円)が購入できるらしいので
窓口で購入。駅員はすでに閉館してドアを施錠をしている
ものと思ったらしく、見てもよいと承諾を得た。


発車まで10分ちょっとだが、展示されたヘッドマークや部品、
写真などを一通り眺め、出ようと思って最後に見た展示物、
車体下部に取り付けれる「小田急電鉄」の銘板とともに
この大井川鐵道をかつて走った時の小田急ロマンスカーの写真。
ヘッドマークは「おおいかわ」である。
こんなところで小田急とつながりがあるとは思わなかった。
今、このロマンスカーが大井川鐵道で走るとしたら鉄道ファン
どころか、一般人を含めて大変な騒ぎとなるだろう。
私も会社を休んででも乗り行くだろう。




普通列車だが、トイレはない。
元特急車両なので、トイレがあるのかと思ったが油断した。
しかしなんとか我慢はできそうだ。
あまり乗客がいないので、固定ボックスになっている向かいの
シートに足を投げ出して寛がせてもらう。
しばらくすると夕焼けを背景に、手前の大井川が流れる景色に
本当にたそがれる。「たそがれきっぷ」がなくても十分である。
一日大井川鐵道三昧だったが、今度は寸又峡温泉あたりにでも
宿泊してゆっくりと帰ってくる旅としたい。



おまけ。
松田駅で小田急線に乗り換えると新松田止まりの赤い1000形。
向かいに急行本厚木行き。時刻表では休日に2本のみ設定されている。
実は平日朝にも別の駅でこうしたネタ列車同士の組み合わせが
あるが、それはまた別の機会に。