2009年3月29日日曜日

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【北海道&東日本パスの旅 6日目】
宇都宮の中年男、旅の終わり

青森
6:12発

↓ 1524D 東北本線 ※朝飯
 
7:42着
小川原
8:14発

↓ 566M 東北本線

8:39着
八戸
8:52発

↓ 4522M 青い森鉄道~IGRいわて銀河鉄道

10:54着
盛岡
11:06発

↓ 1536M 東北本線

12:35着
一ノ関
12:46発

↓ 534M 東北本線

13:33着
小牛田
13:38発

↓ 1564M 東北本線

14:24着
仙台  ※昼飯
15:02発

↓ 586M 東北本線

16:23着
福島
16:28発

↓ 2148M 東北本線

18:32着
黒磯
18:38発

↓ 1586M 東北本線

19:27着
宇都宮
19:29発

↓ 1330Y 東北本線
 
20:44着
大宮
21:02発

↓ 2021K 川越線

21:25着
川越
21:48発

↓ 2167H 川越線~八高線

23:02着
八王子
23:05発

↓ 2342K 横浜線

23:17着
橋本
23:21発

↓ 2370F 相模線

23:50着
海老名





5:39。急行「はまなす」は定刻にいつものホームへ停車した。
青森から彼は奥羽本線へと発着するホームへと去っていった。
仙台まで出るそうだが、なんとか時間的に行けそうということ
だから、また会う可能性がかなり低いだろう。



6:12発の八戸行き普通列車に乗る。
席に落ち着き、買っておいたおにぎりとやきそばパンをほおばる。
4両編成の気動車はボックス席に一人が座る程度の乗車率。
東青森を出てから、旅最後の朝日が右手から差し込んでくる。
北海道で何度か見た、ぼやけた太陽とは雰囲気が違う気がする。
同じものを見てるのに、場所が違うだけで印象も違う不思議。

西平内の下りホーム。待合室でぽつんと一人座って待つ少女。
その背後に朝日が光りだしている。
列車旅の道中で時々見かける光景だが、首都圏近郊とは違って
単独でホームで待っていることが多い気がする。
北海道で見かけた、学校帰りと思しきジャージ姿やウィンドウ
ブレーカーを上に来たような黒髪の女の子とはまた違った
「萌え」があるのかもしれない。

今車窓から見ている朝日が昇り、高くなり、夕日となって沈み、
さらに夜になったころ、静かにこの6日間の旅が終わる。
今日で旅が終わる寂しさだけは8回目の旅でも拭えないようだ。

上北町で中学生か高校生と思しき学生で車内は華やかになる。
制服を着た女の子の3人連れ。我がボックス席の前に立つ。
どうやらこの席に座りたいアピールを展開するようだ。
3人とも会話をしながらもこのボックス席に狙っているらしい。
試しに席に置いた荷物を自分のところへ寄せても、
座る気配はない。私が席を離れるを待っているようだ。

途中で降りることにする。
時刻表で開いてみると、この列車では八戸に早く着きすぎる。
次に乗り換える列車まで30分程時間が空いてしまうからである。
幸いにもこの次の列車なら、乗り換え時間もちょうど良い。

デッキに出ると、通路を塞ぐように座り込む女の子たち。
その一人は家では朝ごはんを食べる余裕はないのか、手作りと
思しきおにぎりを食べている。おにぎりはよいが、せめてホームで
食べてほしいものだ。こうなると、デッキに出てからホームに
列車が停まるまでが少々気まずい。





降りた駅は小川原(こがわら)。
長編成だった客車時代の名残で、4両編成には長すぎるホームの
中ほどに停車し、また出発していった。
ホームの待合室でしばらく待つ。
しばらくすると上り列車接近の自動アナウンス。
先ほど停車したホームをEF510という形式の電気機関車が
貨物を牽引して高速で通り過ぎていった。
また列車接近のアナウンス。
貨物列車が高速で通過。
2本の貨物列車を見送った後、今度は下り列車がホームに停車する。
東北本線に蔓延る、鉄道オタクには悪評のロングシー車両701系。
そして8:14.やってきた次の上り列車もやはり701系。
小川原まで乗ってきた4両編成の気動車は車両基地への回送を
兼ねた客扱いだろうか?





八戸から盛岡までJR線ではなくなる。
元々JR線だった線路をそのまま利用しているが、新幹線開業の際に
JRから経営分離したためだ。
だが「北海道&東日本パス」は追加料金なしで普通列車に乗車できる。
ここが青春18きっぷとは違うところである。
別の鉄道会社線といっても、車両も元々JRで使っていたものを
塗装を変えているだけで、ロングシート車両からロングシート車両に
乗り換えた感覚しかない。
非常に退屈な区間である。せめてクロスシートなら駅弁を食べながら
景色を楽しむということもできるのだが。

新幹線からの乗り換え客がJR線の乗車券で乗れると勘違いして乗って
しまうことがあるのだろう、繰り返し自動アナウンスでJRの乗車券で
乗車できない旨を流している。
一時期、青春18きっぷでの誤乗や不正乗車が多発したために
青春18きっぷでは乗車できない注意書きの看板が目に付いた気がしたが、
見かけなかった。だいぶ浸透してきたのだろうか。

一人挟んで、同じ側のロングシートに座る若者2人。
ここでも時刻表を繰って、旅程の相談をしているようだ。
退屈区間はどうしても、意識が飛んでしまう・・・。

目が覚めると終点盛岡の直前だった。
車内は立ち客もいるほど混んでいる。盛岡から再びJR線。
東北本線を一路、埼玉県の大宮まで乗り継ぐことになる。
この盛岡での乗り換えは面倒くさい。別の会社線同士だから改札が
あるのはわかるが、わざわざ階段を昇り降りさせてまで、ホームを
離さなくてもよいものと思う。
目が覚めるのが遅く、一足早く次の列車に乗り換えるタイミングを
逃してしまい、案の定、ロングシート車両には席が埋まっており、
立つ場所すら探すほどに人が乗り込んでいる。
こんな状況では駅弁を食べる気には到底なれない。

区間利用者からしても、こうしたシーズンに顔を出す我々観光客に
ストレスを感じていることだろう。いつも使っている列車で座れないと
なれば尚更だろう。さらにどの駅でも乗降客がそれなりにあるので、
列車が進んでも車内が空くことはなく、席が空くこともない。
東北本線なのに環状線でない山手線に乗っているような
気分になってしまう。おまけに車内が変に暑い。
上着なんか着ていると、すぐに汗ばんでくる。
車内を見渡すと、部活帰りの学生だろう、制服やスポーツウェア
という格好でも、北海道で見た女の子に感じた雰囲気は薄くなっている。

まだ東京ではないが、東京から少し離れたところという感覚であり
旅の気分もこのあたりでだいぶ捨てはじめている。
だから新幹線で早めに逃げてしまおうという誘惑に負けそうになる。
B寝台車に乗っているので、すでに今回の旅の趣旨から外れて
しまっているが、出来る限り「北海道&東日本パス」の旅をしたい。
その気持ちを強くして、列車に乗り続けるのである。

移動手段として利用している者からすれば、口で言わないものの
そんな馬鹿馬鹿しいこと、と心の中で思われているかもしれない。
しかし、それはその人自身が思っていること、自分が好きな事なら
この世の中に基準は存在なんてしないと私は考えている。
趣味も仕事にも共通することだろう。

だから「変わり者」と言う人たちに問いたい。その基準って何?と。
音威子府で出会った男もそういえば、そのことを力説していたことを
思い出した。

これほどの時間をかけた旅をしてみたいほどの好きな人かどうかは
思い込みを捨てて一度「北海道&東日本パス」を片手に北海道へ旅を
されるとよいだろう。人間は体験しないと決して理解できないように
プログラムされている。
途中で嫌になれば、飛行機なり新幹線なりで帰ってくればよいだけだ。
もし「マニア」とそうでない人の基準とするなら、この企画乗車券を
使った旅を挙げるだろう。この「試練の旅」とも見える線路の先にある
駅に降り立った時の達成感、風景を楽しみしている人種、それが
私のようなオタクである。

普通列車に乗る旅を重ねると、時刻表を開くたびに感じるのは
列車旅の余裕がなくなってきていることだ。
エスカレーターを待つ列の後ろに並ぶ利用者が増えている。
階段を使えばよいのだが、そこに頭がいかない。頭を使わない。

新幹線や特急、飛行機、夜行バス、昔よりも安価で遠くまで旅を
する交通手段が増え便利になった。
短時間で効率よくが当たり前の時代である。
便利を当然と思っていれば、頭を使わない。いや使えない。

東京から北海道へ向かうとき、どんなルートを思い浮かべるだろうか。
飛行機や新幹線と特急を乗り継ぐというのはすぐに思いつくだろう。
移動時間をなるべく短くという考えだ。普通列車を乗り継ぐなど
まず考えない。時間がかかりすぎるからだ。

そして普通列車の場合は何度か列車に乗り換える必要がある。
目的地が遠ければ遠いほど、インターネットの路線検索は使えない。
ピンポイントの時刻確認しかできないからだ。
北海道への乗車ルートはいくつか考えられる。それを確認する
ためにも紙の時刻表がどうしても必要になる。

「JR時刻表」のページを捲ると、ページのほとんどが上から下へと
羅列されている数字郡がある。
主要駅を除いて発車時刻を表しているが、何度かページを捲って
いるうちにその数字の密度が路線ごとに異なることに気づくはずだ。
密度はすなわち列車の発着頻度であり、その沿線の利用者の多さを
想像できるだろう。
びっしりと数字が並んだ東京近郊に比べると、北海道の函館本線は、
数字が飛び飛びになっている。宗谷本線に乗って稚内までの旅を
してきたが、時刻表でよく見てみると、日に3本しか停まらない駅が
あったりして驚く。列車がこれだけ少ないと、その沿線では
列車以外の交通手段が必要になる。
列車が少なくなったのは、自動車がこれほどまでに普及して
列車を生活に必須の足として利用しなくなっているからである。
行動の自由度では車には適わない。
この宗谷本線でもやはり車が移動手段としては必須であることを
列車の窓越しでも実感できたほどである。

巻頭にある索引地図には、JR路線図が駅名とともに載っている。
ピンク色の数字はその路線の時刻があるページである。
よく見るとJR線をあらわす太い黒線(幹線)と太い青線(地方交通線)に
混じって細い青線が結んでいる箇所がある。
元々私鉄のものと、JRから経営分離した第3セクター線として
経営している路線である。

東京駅から北へ向かう普通列車はない。新幹線ならある。
新幹線しか利用したことがないと、東京から同じように北へ出発
する列車があると思い込んでいる方もおられるかもしれない。
北への列車の始発駅は今も上野駅である。そして新宿駅でもある。
そして新幹線と比べると普通列車が走るルートはいくつもある。
それでも列車が唯一の交通手段だった時代に比べるとかなり
路線は減っているが、それでもいくつかのルートが考えれる。
巻頭の索引地図とページを繰っていると、この路線では乗り換え
られなくても別の路線では乗り換えれることを発見したりする。
乗り換え時間がかなりあるなら、その駅で駅弁を買ったり、
駅前周辺を散策したっていい。
「北海道&東日本パス」はJR北海道とJR東日本内の普通列車に
乗り放題の企画乗車券だが、一定のルールがある。
その制約された中で、どのルートで乗って、どこで降りようか、
どんなふうに時間を使おうかとあれこれと考える楽しみも
時刻表は提供してくれる。また乗っている列車が反対方向の列車と
すれ違ったり、どの駅で特急列車などの通過待ちや抜かされるかも
おおよそ前後の列車の発車時刻から推測できる。実際に列車に
乗っているとき、トンネルや駅を通過する時刻を書き込んで
旅行記として楽しむという使い方もあるかもしれない。

そして車窓に流れる風景がゆっくりと進んでいく。
飛行機や新幹線、特急列車ではまるでテレビのように見た内容を
忘れてしまうが、風景だけでなく、沿線にどんな利用者が乗って
くるのかが見えてくる。
だから旅の始点と終点だけでなく、途中の景色も触れることに
なって充実した旅になる。時間がかかるから生まれてくる余裕だ。

時刻表を元に計画した旅程で、実際に旅に出ると
時刻表には書いていないことを感じたり、見たときの感動も
列車旅の楽しみである。
そして旅が終わって今度はどこへ行こうかと、または行けな
かったところを行くために旅の経験からこの駅は乗り換えに時間が
かかるからそのひとつ前の駅で乗り換えるとか、この路線は
乗ったから、今度は別の路線に乗って見ようなど、
考える楽しみが増えてくる。

路線が少なくなったから旅に余裕がなくなったのではない。
我々が自ら余裕を無くすように行動しているからだ。
時間を効率的に使おうと便利で速い交通手段に傾倒し、
頭を使わなくなっている。
時間の使い方だけでなく、考える余裕もなくなっている。

鉄道オタクは時刻表で頭の体操をすると言われているようだが、
別に鉄道オタクに限らず、誰でも頭の体操になる。
自分が高齢者で同じ列車旅をするなら、時間と体力と相談しながら、
頭を使う普通列車の旅を選んでいることだろう。
自分で考え、それをすぐに実行に移せるという魅力がある。
普通列車の旅ほど楽しく時間の使い方をカスタマイズできる
ものはないと最近感じるようになった。

だからJRの在来線がどんどん消えていくとき、
「青春18きっぷ」「北海道&東日本パス」などの企画乗車券も消え、
こうした旅の選択肢、言い換えれば時間の使い方や楽しみ方に
余裕が無くなってしまうのではと心配している。
飛行機や新幹線など速達列車に否定的な文章を書いているのは
そういった理由からである。

時間は昔も今も1日24時間。誰でも平等に与えられたものだ。
時間がないのではなく、時間を作るものであると思う。
よい機会は待ってもこない、自分から掴みに行くものだと
音威子府の男も話していたことを思い出す。

列車は一ノ関に近づいても相変わらず、人の乗り降りがある。
席の空き具合は変わらずである。
そしてワンマン列車の利用者としては運転士すぐ後ろのドアの
そばという一番避けたい位置に立って頑張っているが、
向かいにも一人の男性が運転士とは背中を向ける形で立っている。
携帯電話を弄るわけでもなく、ボーっとしているその若い男は
お世辞にも顔はイケ面ではない。
茶髪、ピアス、黒い薄手のジャケット、目に付くのが
派手な縞々のピンク色の細いネクタイ、黒地に赤鉛筆で
殴り書きしたいような柄のズボン、足元に旅行用のスーツケース。
無理矢理格好付けてみた感じが出ていて
こうした男はどうしても気になって見てしまう性格だ。

これで「青春18きっぷ」なんかの旅をするとしたら、
ちょっと興味がある。どんなところへ行くのだろうか。
外見がかわいい女の子ならその後を尾行するか(笑)

一ノ関に到着。
しかし短い乗り換え時間のなかで、別のホームの意地悪にも
階段からさらに離れたホーム前方に普通列車が待っているので
走るような移動となる。
普通列車の旅ゆえに時間がかかる。運休でもしてその駅で
一泊しても大丈夫なように、明日まで休みをとっているが、
「北海道&東日本パス」の有効期限は今日いっぱいである。
今日の夜には東京近郊に入るので、正確には東京近郊の
最終電車までとなる。
列車を一本くらい見送って、ゆっくりと昼ごはんとしたい
ところだが、そうすると今日中には帰れなくなる。
せめてクロスシートなら、駅弁を買って食べるところだが。

昼ごはんに頃合いの時間だが、仙台まではこの701系に乗って
頑張るしかいない。
だから一ノ関で駅弁の立ち売りをしているおっちゃんに、
「どこで駅弁を食べるんだい?」と問いたい。

列車を見送れば、今日中に帰るためには新幹線に乗っていく
しかない。ダイヤも乗り換え時間も新幹線誘導と思えてくる。
一ノ関から乗り換えた2両編成も利用者が少ない故かと思ったが、
列車本数が少ないことも新幹線利用促進の運行に思えてくる。
一ノ関から仙台までの2時間近くを昼ご飯を我慢して
ロングシートで過ごす事になる。単なる被害妄想だが、
そう考えてしまい、この2時間近くは嫌な気分になってしまう。

北海道も体の芯から冷えてしまいそうな稚内の夜を除けば、
着込むほどの寒さではなかった。3月だからというのもある
だろうが、東京へ近づくたびに暑いくらいの陽気である。
ずっと北海道の冬に慣れた者にとっては、東京の冬は対して
寒くは感じないんだろうなと少しだけ実感できた。

小牛田から仙台行きに乗り換え。
またホームを移動しなくてはならない。
ロングシートはいい加減に飽きてきたが、この列車に
乗り換えないと帰れない。
斜め向かいでは化粧に勤しむ若い女性、正面にはガニマタで
イヤホンを耳にして音楽を聴いている太目の女性。
左隣ではPSPに熱中している男性。普段見ている光景と何ら
変わらない。旅の気分はこうして萎んでいく。

岩切で乗ってきた高校生と思しき女の子2人。
1人は革靴のかかとをつぶすように履いている。
学校の制服としたは部活で履くようなハーフパンツという格好。
人目を気にしない風な人種は話すときの一人称が「うち」だ。
ただ、自分に不都合な男性諸君には近づかない防衛本能までは
捨てていない。次の東仙台で降りていった。


仙台で立ち食いスタンドで昼ご飯とする。
本当は駅の外に出て、ゆっくりと散策しながらの昼ご飯と
したいところだが、次の列車発車まで30分もない。
仙台からはセミクロスシート車両。
クロスシートがあるだけで、同じ風景も少しは楽しめる。
しかし、東京方面に向かって旅が終わろうとしている今、
行きの様に気分はそれほど弾まない。
時間帯が昼間のためか、席もそれなりに埋まっている。
でもまだ半自動ドア地域。降りるときはボタンで開ける方式だ。

岩沼を出てしばらくすると、常磐線の単線が緩やかなカーブを
描きながら左奥へと分かれていった。
槻木では福島まで結んでいる阿武隈急行に乗換えられる。
もしかしたらこの阿武隈急行に乗ると、福島からこの列車よりも
早く乗り換えることができるかもと時刻表を調べてみるが、
まったく変わらなかった。それでも良かった。
旅をまだ終えたくないと、東京へと近づく普通列車の中で
抵抗している気持ちがあるのだ。


そんな気持ちがあるので、ならこの先の郡山から水郡線で
常磐線の水戸に出てはどうだろうかと調べてみる。
早いどころか、家に帰る時間が余計に遅くなってしまう。

13:48。白石着。
つい21時間ほど前には北海道は札幌の手前の同じ駅名を
通ってきたというどうでもよい事を思いかえす。

福島から黒磯行きに乗換え。
列車の「黒磯」という行先表示を見ると、ようやく帰ってきた
という感がじわじわと出てくる。この黒磯から東京近郊なのだ。
またホームの移動。セミクロスシート車両だが、クロスシートは
すでに埋まっている。ここはトイレ側のかくれクロスシートに
座ることにする。ロングシートを窓と垂直にした席だが、
座るとすぐ目の前のロングシートを見つめる形になる。

このあたりの座先には見るからに偏屈そうな高齢者が座る傾向が
あるが、特に気にしない。列車に乗るたびに色んな人が乗って
くることに慣れているから、今更驚かない。
クロスシートの正面にロングシートがある車両は今乗っている
福島~黒磯の車両以外では、北海道の釧網本線の車両くらいか?

すぐ目の前には2人のご老人。手前の方は桜餅を食べ始める。
その奥の方が口笛でも吹き始めたかと思ったが、口笛に聞こえた
のは、車両と車両とつないでいる幌回りの金具が軋む音らしい。
なんとも生々しい軋み音である。前の旅の「口笛おじさん」
再びと期待していたが、残念であった。

五百川着。ドアの窓越しにゆっくりと沈みつつある夕日が優しく
差し込んでくる。旅最後の夕日と思うと寂しくなってくる。
眠気もわずかに出てくる。

「はまなす」ではB寝台で横になって寝てきたとはいえ、
たった2~3時間ほどしか寝ていない。揺れるベットでは
熟睡とはいかないが、不思議と意識が飛んでいない。

安積永盛(あさかながもり)着。
夕日がまだ完全に沈んでおらず、空の青さがはっきりとわかる。
この時間に家に帰っていたい、新幹線で早く帰りたいと
すぐ横に見える新幹線の高架線を見上げているとそういう衝動に
駆られる。でもなんとか抑える。

須賀川着。他に席は空いているだろうになぜか私が座っている
すぐそばのロングシートに座る3人の高校生と思しき女の子。
これが1人だったらまずこのロングシートには座らないだろう。
そう思って会話をしている3人をさりげなく観察する。
鏡石でひとり降りる。だが、2人になっても向かいの空いている
ロングシートに移動する気配はない。
2人になった途端に弾みだす会話。この2人と先ほどの1人という
関係だろうか。手前の子は外見ではそんな感じではなさそうだが
聞こえてくる会話から「マジ受ける~」「まじうぜぇ」と
都会的なしゃべり方であった。
ひとりがまた次の駅で降りたが、手前の子はドア側に寄っただけ。
別のロングシートに移動しないことに妙な安心感。

黒磯に着くころには、いつの間にか空は暗くなり始め
このまま行くと黒磯のホームに列車が停車する時には夜空に
なっていることだろう。
もうすぐ、旅の最終日の夜を迎えようとしている。

白河に定刻着。例の子はここで降りていった。
ここまでダイヤ乱れに遭遇することなく順調に線路を走ってきた。
実に日本の鉄道は正確であることをつくづく実感する。
正確であるから、安心してその線路上に身を委ねてどこへでも
行くことができる。

隠れクロスシートから少し離れたクロスシートには先ほどからの
同じ顔ぶれの2人組が座っているが、先ほどまでの元気はもう
あまりない様子でおとなくしている。

黒磯着。ここから東京近郊区間。
「北海道&東日本パス」では最終電車まで有効な区間である。
またホームを移動。次の列車では何とかクロスシートに座る。
黒磯を出ると、宇都宮のひとつ手前、岡本まで半自動ドア。
同じボックス席に座ってきた男性に話しかけられる。
時刻表を開いている若者に自分の同じ年頃時代を重ねたのだろうか
鉄道でどこまで行ってきたかを尋ねてきた。
6日間かけて網走から稚内と宿泊しながら、夜行列車で青森まで
出て、朝から一路列車で家に帰る途中であることを話すと、
男性は来週から1週間の予定で四国のお遍路巡りをするそうだ。
夜行バスで一気に四国まで行き、現地では徒歩で札所を訪ね
20番札所辺りまでを考えているそうだ。札所と札所は離れている
ところでは徒歩で7時間、大人の足で25~30km程の距離とのこと。

定年退職の身分らしく、まとまってできた時間を自分で考えて
計画した旅を楽しみにしているのが顔に滲み出ている。
それまで会社と家を往復するだけの決められた日々にストレスを
感じていたことが想像できる。
列車は決まったレールの上しか走れないが、レールは一本ではない。
ある制約のなかで、自分自身で考える旅。
実はある程度の制約があった方が、パズル要素が強く感じられて
考えることが楽しくなる。

携帯電話とパソコンでインターネットで路線検索ができる時代。
このデジタル時代に時刻表というアナログなものを熱心な若者に
この男性は懐かしさも覚えていたのかもしれない。

宇都宮着。男性は頑張ってください、と言葉を残して去った。
音威子府の男も言っていたが、私は何を頑張るのだろうか。
これから家に帰るだけなのだが・・・。
東北本線では最後の列車に乗り換える。すっかり窓の外は夜。
旅はもうそろそろ終わりに近づいている。

大宮でわざわざ、川越線に乗り換えてみる。
まだ旅を終えたくないという気持ちが残っている。抵抗に近い。
新宿からロマンスカーで帰れば、楽に早く帰れるが、空席照会を
確認すると満席。ロマンスカーでゆったりと夕ご飯という戦略は
失敗に終わる。キャンセル待ちで席を確保できる可能性もあるが
確保できない場合のリスクを考えたくない。
私にとっては、小田急線の新宿駅は天国と地獄である。




乗りつぶしの意味もある。
乗るべき川越線の列車まであと15分しかない。ホームへと降りる
階段から少々離れている立ち食いスタンドで腹に無理やりに
詰め込むように食べ、急いでホームへと階段を駆け下りる。
ギリギリでどうにか列車に間に合った。
今月14日に開業したばかり西大宮と次の指扇で上り列車の到着待ち。
単線のためにホームで交換することになるが、埼京線の車両が
単線で走っているのでちょっと違和感がある。
中央線でいえば、青梅線みたいなものか。

八高線では高麗川までは乗ったことがあるが、川越に用がないので
高麗川~川越もまだ乗ったことがない区間であった。
時刻表を見ると、八高線は八王子から川越直通の本数が多い。
逆に高麗川から高崎方面は極端に本数が少ない。
そのため少し待っていれば、八王子行きはやって来る。

川越から乗った列車は途中の高麗川で10分程停車。
金子でも5分ほど停車する。車内では先ほどから規則的に
「プシー、プシー」と音がする。その方向を探ると、車両の端の
ロングシートで横になって寝ているお爺さんが音源だった。
それだけならともかく、静かな車内でふいにおならが2回響き渡る
ものだから、思わず笑いそうになった。
そんなお爺さんを乗せて、列車は八王子に向けて疾走している。
駅へ着くたびに数分間停車するのんびりとした近郊列車だが、
地方交通線らしく、駅間距離が長い。もちろん、北海道の石勝線で
乗ってきた、占冠~トマム~新得には遠く及ばない。

拝島で4分停車。ここで川越行きが遅れているために接続を取る為に
3分ほど遅れて拝島を発車することになった。
まるで旅を終えたくない私の気持ちに応えるような遅れだ。
終点八王子まで3分遅れを引きずり、この列車を接続するために
23:05発の横浜線も2分ほど遅れて発車した。
それでも橋本でJRの列車旅では最後となる相模線に乗り換えて
海老名に着く前ににはその気持ちを車内に捨てることができたようだ。

あとで確認したが、不正乗車をしていたことがわかった。
「北海道&東日本パス」で快速列車のグリーン車指定席は利用不可。
今回「ムーンライトえちご」のグリーン席に乗車したが、指定席のため
別途乗車区間の乗車券が必要だったが、グリーン車指定席券と
「北海道&東日本パス」を有効に使うため、日付が変わる最初の停車駅
である高崎までの乗車券しか、購入していなかった。
しかし、車内検札でも特に車掌には言われなかったので、
グリーン車指定席も乗れると思い込んでいたのである。

利用されるときは注意されたい。
このときの車掌は「青春18きっぷ」では乗車不可という意識があったが
「北海道&東日本パス」には気が回らなかったのかもしれない。

つくもノヲ”X="1≠ 439


【北海道&東日本パスの旅 5日目】
B寝台でお別れ

稚内  ※駅弁購入
10:58発

↓ 4330D 宗谷本線 

14:13着
名寄
14:37発

↓ 3326D 宗谷本線
  快速 なよろ8号

16:03着
旭川
16:09発

↓ 2232M 函館本線

17:52着
岩見沢
18:05発

↓ 3242M 函館本線

18:42着
札幌  ※夕飯、風呂
22:00発

↓ 202 函館本線~千歳線~室蘭本線~函館本線~
     江差線~海峡線~津軽線
  急行 はまなす

5:39着
青森



予定では朝食なしと考えていたが、ビジネスホテルの朝飯は
美味しいことをこの前の高崎で一泊したときに改めて感じて
朝食を付けてもらうことにした。
和食をゆっくりと食べて、出発に備えて準備する。






10時丁度にチャックアウト。
10:58発までまだ少し時間がある。
待合室の中の立ち食いスタンドでは、うどんを啜る客と
店のおばちゃんが親しげに話す光景。
駅弁を売っているキオスクでは宝くじも売っている。
稚内駅は最北端の宝くじ売り場でもある。

買った駅弁を抱えて、定刻に普通列車は発車。
昨日一緒に降りた「道路地図」の彼は乗っていない。
その代わり、札幌で一泊してゆっくりと名古屋まで
向かう男は私と同じ「鉄」の匂いがする。
旭川まではどうやら一緒らしい。

南稚内では地元の連中が数人乗り込み、皆前方の
ロングシートに寄り集まって座る高齢者。
若い連中は私のような観光客だけ。






南稚内~抜海は鳥肌の景色が右手に展開する。
少しの間だが、海が見え小高い丘に隠れてしまう。
線路は家も何もない白い絨毯を優雅に大きくカーブする。
「地図帳」では、この区間から見える利尻富士を眺める
余裕は無かったが、何もない白い絨毯に単線の線路を
進む風景は見た者にしか分からない絶景である。

雪の上の作業員。黄色いヘルメットを被った数人が
こちらへ敬礼する姿が横切っていった。

車両後部の運転台横の窓ガラスから流れていく線路。
ふと、小さな台を通り過ぎる。いや南幌延駅である。
しかし、本当に駅なのか。
少し離れた横を国道を通り過ぎるだけの場所に
ぽつんとある小さなホームを列車はあっさりと通過する。





12:16。雄信内着。
雨が降り出してしまっている。ここで特急の通過待ち。
車両後ろ側の運転台横で待つ。するとしばらくして
トンネルに入り、しばらくして遠ざかっていく。
宗谷本線唯一の下平トンネルである。1256m。

紋穂内を出て空を見上げると、再びぼやけた太陽が
厚い厚い雲から透けて照らし出している。
そして私の意識が飛びそうになる。



稚内への列車では、音威子府で1時間20分も停車したが
旭川へ向かう列車では長時間停車がないため
稚内から5時間ほどで旭川に到着する。
飯田線も乗り継いでいくと6時間かかるが、営業キロは
宗谷本線の方が長い。飯田線よりも時間がかかると
思い込んでいたが、飯田線のほうが停車駅の数が多いのだ。





名寄では快速「なよろ8号」に乗換え。
時刻表では名前があるが、列車では「快速」のみの掲示。
地元の利用者もいるのだろう、一両の車内は席がほぼ
埋まるほどの乗車率である。
稚内から一緒の男はロングシートの一番運転よりに座る。
時折その場で立ち上がって、運転台の後ろから前を見る。
先ほどの列車でも同じように前面展望に忙しいようで
同業者として、非常に目に付く存在である。
名古屋まで頑張るのだろうか。

名寄のホームを離れ、しばらくすると右手にブルドーザー。
ここでも除雪作業に忙しい。
隣のボックス席にも同業者と思しき男性が座る。
こちらは旭川まで一緒だろうか。
もしかしたら、急行「はまなす」でも一緒かもしれない。
行きと同じように、帰りも確実に自由席を確保するためには
「はまなす」が入線する2時間ほど前にはホームに並ぶことを
考えると、予定通りなら札幌では自由時間は1時間ほどだ。
士別着。降りる人よりも、それ以上に乗ってくるので
車内は賑やかになる。特急とのすれ違いでしばらく停車。

和寒から塩狩までは上り坂を喘ぐように、ゆっくりとした
速さで進んでいく。持参の「地図帳」には記載はないが、
気動車であってもこの塩狩峠は、そうそう容易には
進ませてくれないほど、急勾配なのである。





旭川から乗換え。この辺りから札幌近郊の雰囲気である。
滝川では15分停車。ホームへ出て、列車にカメラのレンズを
向ける女性。メーカーはcanon。
若い女性でも鉄道を趣味とすることがより身近になった。

「はまなす」では眠れないならと、札幌ではなく違った
ルートから、「はまなす」に乗ろうかと考えてみる。
時刻表を開いてみると、札幌から小樽行きに列車が出ている。
しかし乗換え時間は2分。おまけにホームは1番線から4番線と
階段を降りて昇って別のホームへ移動せねばならない。
間に合うのだろうか。間に合えば、小樽から長万部まで
乗り継ぐことができる。長万部にも「はまなす」は停車する。

長万部では「はまなす」到着までに2時間あるが、
食事はともかく、風呂に入れるところがあるか分からない。
未乗区間という意味では、ぜひ乗って行きたいところ。

岩見沢からオールロングシート車両に乗換えて
札幌に近づくたびに迷いが出始める。
区間利用者の存在を知っているので、座れないことは
きっとないと思われる。が、一番重要な事を忘れていた。
これで旅は終わりではないのだ。家に帰るまで後1日以上は
列車に揺られていくことになる。体力温存のためには
自由席で頑張るのは少々辛い。明日は早朝の青森のホームから
スタートし、その日の夜になってようやく家に着く。
金が少々かかってしまうが、指定席料金で横になれる
カーペットカーか、満席ならB寝台となる。

札幌着。やはり小樽行きに乗り換えるには無理があった。
階段を降りようとしたところで、発車するところだった。
改札を出て、カプセルホテルを探すがありそうで見つからない。
その代わり、シャワー室があるネットカフェを見つけて、
体を流す。マット敷きの席はリクライニング席と違って
横になることができる。ネットカフェを宿代わりにして
旅行することも可能にはなったが、ビジネスホテルとは
違って予約できるわけではないので、空いていないときの
リスクがある。それに札幌で宿泊するしても明日中には
帰ることができない。それだけ遠い線路の向こうに今いる。

携帯電話とデジカメの充電が終わり、ネットカフェを出て
駅のみどりの窓口へ向かう。
案の定、カーペットカーは満席であった。
急行券と指定席料金だけで横になれるとあって、人気が高い。
B寝台で寝ていくことにする。しめて15000円ほど。
走る高いホテルである。


発車30分前。旅最後のラーメンを食べようと、
駅前周辺を探すが、2件ほど見つける。しかし少し駅から
離れており、ゆっくりと食べることができない。
結局、前の旅と同じようにショッピングモール内にあった
「らーめん共和国」の今回は「美深ラーメン」でビールを
飲みながらの晩御飯となった。
醤油ラーメンだが、汁の味が濃厚な一品。


発車15分前。そろそろ駅へ向かわないといけない。
入線時刻は21:38。すでに青い車体はホームで発車待ちを
しているはずである。階段を上がる。発車10分前。
一通り、車両の撮影を済ませたところで自分の寝台へ。
乗車券+急行券+B寝台券が一枚になったマルス券には
「増1号車」。同じB寝台の1号車と2号車の間にもう一両、
増結1号車が連結されている。それだけ需要があるのだろう
両隣の1号車と2号車も寝台がまずまず埋まっている。






下段向かいの客に挨拶する。
同世代と思しき男性は時刻表を見ながら、旅程を紙に書いている。
札幌を離れて、しばらくは窓の外を見ていたが、カーテンを引く。
すぐに眠れない。
23:07。車内アナウンスがB寝台車とカーペットーカーのみ
車内放送を打ち切ると告げる。ドリームカーと自由席車両は
東室蘭を出てから車内放送を打ち切るとのこと。
車掌が1車両ずつ、電灯を暗くしていく。

いつのまにか、意識が落ちていたのだろう。
ふいに何か衝撃があり、急に目が覚める。収納式の荷物置き場に
押し込めていたリュックが車両の揺れで落ちてきたのだ。
床下に落ちたリュックを拾い、携帯電話で時刻を見ると、1時15分。
GPSで位置を確認すると長万部を出て、山崎駅を通過しようとする
ところを列車は走っている。
目が覚めるとなかなか寝付けない。カーテンを開けて、洗面台へ
ゆれる車内の中を向かう。
寝ぼけた目で歯磨きをする。自動販売機で缶ジュースを買う。
2号車と3号車のデッキから、ドア越しにドリームカーの車内を見る。
行きのムーンライトえちごで乗ったようなグリーン席だろう。
自由席に比べると快適度は違うだろうが、寝台ほどには眠れない。

北海道新幹線が開業した暁にはこの青い急行客車は消えだろうか?
しかし北海道新幹線は木古内から小樽方面を経由して札幌という
ルートらしくこの急行列車が停車していく、苫小牧、東室蘭、
長万部などを通らない。
急行料金が余計にかかるが、地元としては始発や最終列車としての
足として少なからずの需要があるだろう。
しかし、車両の老朽化を理由に廃止されるかもしれない。
今後の動向は少し気になるところである。



寝台に戻り、缶ジュースを飲みながら時刻表を開く。
東室蘭以降で眠りについたらしい。「次の停車駅は東室蘭です」
というホームのアナウンスが小さく聞こえ、次のホームの蛍光灯の
白い光を覚えている。目が覚めるまで1時間ちょっとしか寝てない。
今度は目が覚めないようにとしっかりと寝ることに決めていたが、
また覚める。窓の外を確かめるまでもない。函館だろう。
機関車の交換を見物しようと同業者がホームを足早に通り過ぎる。
初めての北海道旅行で寝台特急「北斗星」に乗ったときは
食堂車へ入れないことから敬遠していたが、最近は浴衣の身軽さが
いいように感じてきた。浴衣姿で機関車交換を見るにはちょっと
ホームは寒いので、ボーっと寝台で窓からホームを見るだけにする。

機関車の交換を終え、そろりそろりと列車は再び動き出す。
動き出してしばらくしてまた眠りへと落ちていく。

また目が覚める。長い轟音が続き、途切れてまた長い轟音。
しばらく窓の外を見ると、トンネルが終わり空が白んでいる。
青函トンネルを抜け、青森側へやってきたようだ。
しばらくして今まで暗くなっていた電灯がもとの明るさに戻される。
5時10分。あと20分ほどでこの寝台から降りなくてはならない。
一眠りするには個人的に時間があと1時間ほど足りない。

向かいの客はまだカーテンを閉じているが、すでに起きている気配。
洗面台へ向かい、歯磨きから戻ってくると彼は窓の外を眺めている。
少し話してみると、彼は内地(北海道)から本州へ出て、青森からは
奥羽本線と羽越本線を乗り継いで、米坂線に乗り、仙台に行く旅らしい。
内地出身の彼にとっては、「はまなす」は旅のはじまりとなる列車だが、
私にとっては北海道とはお別れする列車となる。