2010年4月2日金曜日

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【青春18きっぷの旅 5日目】シャワールーム、そしてサンライズ


↓ 4032M 山陰本線~伯備線~山陽本線~東海道本線
  寝台特急 サンライズ出雲

7:08着
東京




目が覚めた。時間は3時半過ぎ。時間的には東海道本線のどこかを走っているはずだ。
しばらくして駅に運転停車。豊橋と書かれた煌々と光る駅名標とホームの明かりを
見送った後、シャワー室へ向かう。この時間ではまだ誰も使うものはほとんどいない。





中に入り鍵を閉める。案内パネルの指示通りに右下の挿入口にカードを差し込むと
「シャワーがご利用できます」に案内点灯が切り替わり、カードが返却される。
折り戸を空けると、それまでシャワー横の「0分00秒」だった残時間のデジタル表示が
「6分00秒」になっている。折り戸を閉めて「START」を押すとシャワーが出るが
お湯になるまで20秒ほどかかった。「STOP」を押せばシャワーは止まる。
「START」を出すたびに20秒待たないといけないのかと思ったが、それは初回だけで
後は押してもすぐにお湯が出てくる。ここで残表示を6分に戻せないか、「STOP」ボタンを
ずっと押してみたり、何回か押してみたりを試してみたがダメなようである。

シャンプーやボディソープは備え付けられているが、タオルは車掌から購入するか
自分で持参する必要がある。出雲市駅前の温泉で身体を洗うために1枚使ってしまったので
手元には1枚しかない。仕方なく手でこするように体と顔を洗う。持ってきたタオルを
バスタオル代わりに拭いたあと、折り戸を閉めて案内パネルの洗浄ボタンを押す。
すると扉の向こうから勢い良く噴射される音が聞こえてくる。天井にあるノズルから
洗浄する液体が噴射されるようだが、再度折り戸を開けてみると壁に付いている泡は
あまり綺麗になっていない。お湯は残り3分丁度使える。先ほど挿入したカードを
もう一度挿入してみたりしてみたが、残時間は「3分00秒」からは変わらなかった。
ドライヤーも備え付けられているが、風は弱いので濡れた髪を乾かすだけでも時間が
かかりそうだ。タオル持参が無難であろう。
移動しながらシャワーを浴びるなんて贅沢は寝台特急ならではである。
さっぱりした心地でそのまま個室で寝ないでいることにした。寝台特急に乗ると、不思議な
事に一度目が覚めるとなかなか眠くならないのである。この分だともうすぐ東京という
ところで眠気が襲ってくるに違いない。


東海道本線になって最初の停車駅である静岡。まだ始発列車が動き出すには
少しだけ時間が早いためか、未明のホームに待っている人の姿は見当たらないと思ったら
動き出してからホームに親子連れらしき人たちが見えたが、降りてきた人たちだろうか。
富士も同様にホームに待っている人は見かけない。





富士川を渡る頃にはこれから太陽が昇ってくることを予告するようにぼんやりと空が
白くなり始めている。熱海を出た頃にこの特急列車の名前の通り、太平洋からの
朝日を拝むことにできた。しばらくは太陽とにらめっこするように走っていく。
横浜に近づく頃にはすでに今日一日が動き出している事を感じる。こちらは貨物線側から
二宮へ停車しようとしているお馴染みの東海道線車両をしばし見つめる。
6:19。「ムーンライトながら」ではよくお世話になった車両とすれ違う。
「鉄道ファン」によれば現在はすれ違ったJR東海の373系ではなく、JR東日本の183・189系
が使用されているようだ。時間からして東京を5:20発に出る普通静岡行きに違いない。
普通列車でありながら、特急列車の座席に静岡まで乗っていけるお得な車両として
特に青春18きっぷで旅をする者の間では結構有名な列車だったはずである。










そろそろ東京だろう。見慣れたビルの谷間を列車は走っている。
見慣れた車両が併走している。青春18きっぷの効力がまだ今日1日残っているが
リュックに仕舞ってある「赤福」も心配である。東京駅でしか売っていない
東京バナナの「黒ベエ」をおみやげに買わないといけない。
今回は新宿から素直に帰る事に決めた。終点東京駅のホームで一晩かけて乗ってきた
「サンライズ瀬戸・出雲」が車庫が品川へ引き返していくのを見送った。




おまけ。
帰りがけに3月13日のダイヤ改正にあわせて開業した横須賀線の武蔵小杉駅に行ってみた。
南武線とは乗換えに10分ほどかかる。実は南武線からの乗換えなら向河原から歩いたほうが
もしかしたら少し早いかもしれない。もちろんまだ2010年版のGoogleマップでは駅は存在していない。

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【青春18きっぷの旅 4日目】妖怪列車、暖かなステンドグラス

岡山
9:18発

↓ 845M 山陽本線~伯備線

11:00着
新見
11:17発

↓ 827M 伯備線~山陰本線

13:08着
米子
13:47発

↓ 137D 山陰本線

14:59着
出雲市
(電鉄出雲市)
15:30発

↓ 一畑バス

15:55着
出雲大社 ※参拝
17:13発

↓ 一畑電車

17:24着
川跡
17:27発

↓ 一畑電車

17:36着
(電鉄出雲市)
出雲市
18:55発

↓ 4032M 山陰本線~伯備線~山陽本線~東海道本線
  寝台特急 サンライズ出雲


全5日の行程で計画した旅だが、旅の内容的としては最終日。
5日目の午前中にはこの地を離れて東京へ戻っているはずである。
昨夜は岡山駅に着いたときから、学ランを着た不良が数人ホームでうろついているのを
見かけた。彼らのボスを待っている風ではあった。市電で一駅目で下車し、予約した
ビジネスホテルへ向かう途中も酔っ払いの中年集団が円陣になってしゃべっているのを
見かけたが、それだけで柄の悪い連中が多いのかなという印象を受けてしまう。




3日目と違って、今日は朝ごはんをゆっくりと食べる時間がある。
ホテルの1階にあるレストランでバイキング方式による朝ごはん。
人が集中する7時過ぎではなく、終わりに近い時間(多くのビジネスホテルは朝食の提供
時間として9:00までが多い)であれば、ゆっくりと自分の食べたいものを選んで
食べることができる。旅の経験上から知り得たものだが、青春18きっぷのように基本的に
鈍行列車で移動行程を組もうとすると、列車の本数が少ない故にその日最初に乗る列車が
朝早い時間か、9時~11時という出発になる。前者はビジネスホテルの朝食提供する
開始時間、つまり7時には大抵間に合わない。早朝に起きた直後では食欲はすぐには
出ない体質なので、ロングシートで無い事を祈りながら駅の売店で買ったおにぎりや
パンを列車内で食べながら朝の車窓を楽しむことになる。
後者の場合はゆったりと朝ごはんを食べてから出発できるので、できる限り最近の旅では
この行程になるようにしている。

今日も昨日同様によく晴れている。
これなら気持ちよく旅の最終日を楽しむことができそうである。
まずは岡山から伯備線の旅。時刻表の索引地図では倉敷で乗り換えるように見えるが、
実際は岡山を始め、相生や姫路、赤穂線の播州赤穂からも発着している。
というわけで倉敷までの短い区間ではあるが、久しぶりの山陽本線である。
グレーに青のラインが入る4両編成は岡山を1番線から発車した。






倉敷を出て左手に分かれている山陽本線に別れを告げて、いよいよ伯備線に入る。
それまでの賑やかな風景から急にローカル線らしい風景が流れてくる。
東京へ戻るために乗る予定の寝台特急でも同じ線路を走ってくるが、そのころには
すっかりと窓の外は夜。明るいうちに景色を楽しもうと伯備線を行程に組んだのである。
米子から出ている境線で妖怪の国へ訪れて、それから出雲大社へ訪れてようと考えたが
ゆっくりと見て回るにはどちらか一方を選択しないといけないらしい。
旅に出る前にここで少し迷ったが、出雲市から寝台特急で帰ることを考えたら、ゆっくりと
出雲大社を参拝してから帰ろうと考えた。未乗である一畑電車に乗る目的も果たせる。

伯備線になっても、地元利用客の乗降はありそうな雰囲気である。
途中までは複線だったが、しばらくして単線へ。山陽新幹線の高架を潜ると複線に戻る。
清音では右手の窓から岡山方面の列車を待つ学生を含んだ地元らしき客がホームで
待っている光景。その相生方面の列車とすれ違いながら、総社ではまとまった客が下車。
前回の北海道への旅から列車内であっても、「大」がしたくなる時がある。
この間はよく揺れるトイレに手すりに掴まりながら籠ることになるので、しばらく風景は
楽しめない。残念なことである。
トイレから出ると、列車は次の美袋(みなぎ)に向かっているところであった。
「美嚢」で「みなぎ」と読んでいたものを「嚢」がいつからか「袋」になったのが
由来らしいが、諸説が色々ありそうで定かではない。難読駅名としては定かである。
(後で調べたら駅舎も国の登録有形文化財に指定されているそうだ)

着席後の失敗。途中の新見までは車窓のメインは左側であったこと。
右側からではのんびりと続いている川や山の景色は手前の人の目が気になってしまう。

木野山から先はドアは手動扱い。長時間停車しないのであれば、手動扱いにする必要は
無いような気がするが、車内温度保持以外の運用上の事情があるのだろう。
備中川面で岡山方面への普通列車を待ち合わせるために5分ほど停車。
我が列車が停車中のホームで上を見上げると白い雲が動いている。

井倉へ向かう途中で、岡山方面へ向かう特急やくもの通過待ち。
隣のボックスシートに座る若い女性。周りの目など我関せずという雰囲気で向かいの
シートに足を投げ出している。若い女性の一人旅もまだ少し珍しい目で見られるが、
足を投げ出すとなれば、かなりの神経を持った「鉄子」なのだろうと思っていた。
(この時は女性の容姿をしっかりと見たわけではなかったのだ)

ピンク色をした「やくも」が通過すると、ようやく列車は動き出す。
新見に到着。ここで列車に乗り換えるのだが、下車してから先ほどの女性の容姿を
見てしまったのだ。屋根がぶら下がる駅名板に向けて小さなぬいぐるみを掲げて撮影。
周りの目など全く気にしないところは全く尊敬せざるを得ないが、鉄道界の「腐女子」、
いや本人には悪いが、正直妖怪かと思ってしまった。ぬいぐるみ女と呼ぶべきか。

乗換え列車ですでに例のぬいぐるみ女が座るすぐ後ろのボックスシートに座る。
終点米子で境線に乗り換えるのだろうか。それならある意味は納得である。
それとも縁結びのために出雲大社へ向かうべく、出雲市まで一緒なのだろうか。






新見からはそれまでの4両編成から短くなった2両編成。
電化、非電化と分かれているわけでないので、通しで運転すればよいだろうに
車両運用や乗務員交代など色々と事情があるのだろう。新見で駅弁でもと思ったが
残念ながら販売していなかった。備中神代(こうじろ)でおばあさんが2人下車。
反対列車と行き違いのために、そのまま2分停車する。
新見からはそれまで左手に展開していたメインの風景が右手になる。
足立(あしだち)でもおばあさんが2人下車。ちまちまと利用客の乗降があるようだ。

時刻表上では幹線となっていても列車本数が多いわけではないので、ぬいぐるみ女を含め
客の顔ぶれはそれほど変わらない。上石見で野球部がよく使っているようなビニール製
の緑色のごついバックを肩に抱えて数人の男子高校生諸君が先頭よりの席に座る。
「まんが日本昔ばなし」を実写にしたらロケ地の候補になりそうな風景、そして右手に
県道8号線を見ながら、列車は進んでいく。
高校生軍団以外の目だった乗客がおらず、外は気持ちよい陽気だからのんびりした
時間が流れているような気がしてくる。油断すると意識がなくなりそうでもある。





生山で反対列車との行き違いのために8分停車。この間に高校生諸君はさらに乗り込み
かくして先頭車両の運転士寄りは彼らに占拠されることになった。
ぬいぐるみ女はあれから席を立つ姿は見られない。居眠りをしているのかもしれない。
後ろにあるロングシートに2人の女性。話し声が大きいので嫌でも会話の内容が聞こえる。



ガチャピンの目が怖いと話しているが、君たちの方がよっぽと怖い。
それにガチャピンに大変失礼な話だ。米子に近づくに連れて列車にはこうした妖怪が
増えてくるのかとちょっと心配になる。境線に乗るまでもなく、この列車はいつのまにか
妖怪列車になってしまうのだろうか。
腹が痛くて死にそう、と笑いながら話しているが、中途半端に車内で倒れてくれるなと
心に祈っていた。妖怪を助けるこちらの身にもなってほしいものだ。
それにこうしたタイプは病気や事故には妙な事に遭遇する確率は低くて、タフなのだ。
根拠はない。直感的にそう思えたのである。

車内の先頭に目を向ける。前に固まっては座れなかったのか、ケータイを弄りながら
顔に似合わないロン毛男。ピン芸人の狩野 英孝が真面目な話、イケメンに思えてきた。
爪を噛むしぐさが気持ち悪い。気になってついつい見てしまう。

上菅では反対側のホームに岡山行きが停まっていた。
黒坂(黒板ではない)で高校生が一人下車。次の根雨まで行く途中でこの列車に乗っている
のと同じ日野町の高校生が2人ジョギングしながら、手を振って挨拶している。
根雨で高校生数人が下車していった。その中ににセーラー服の女子高校生。
その芋っぱい雰囲気が好きである。

車内の後ろは相変わらず、腹イテー女2人の話し声がうるさい。
武庫を出ると、左手に国道。「米子 27km」の青い看板が見えた。
次の江尾に向かう途中で列車行き違いのために3分停車。実にのんびりした妖怪列車だ。

ここで前の席の主が動く気配がした。
どうやら例のぬいぐるみ女は予想通り居眠りから目覚めたらしい。
伯耆溝口。駅名からようやく山陰本線に近づいていることを実感してくる。
ここでも行き違い列車のために3分停車。すれ違ったのはEF64形電気機関車が牽引する
コンテナの貨物列車であった。こちらが先に発車する。

岸本でずっと乗っていた高校生を含めて3人が降りていった。
右手から山陰本線が合流し、伯耆大山。特急列車に乗るとこのあたりは通過してしまう
ので、合流したという実感はないだろう。この駅で山陰の中学生か高校生と思しき学生
集団で賑やかになる。残念ながらぬいぐるみ女は妖怪の国でもでも縁結びでもなく、
この伯耆大山で下車していったが、新見でも同じようにぬいぐるみを掲げて駅名板を
撮影していたところを見たのだろう、隣のボックスシートに向かいで座る4人の女の子
から「気持ち悪い」という言葉を発するのが聞こえてしまった。
きっと日本のどこの女の子も一部をのぞいたら、きっとこうも口が悪くて陰湿な雰囲気を
持ち合わせているのは同じなんだろうなと思ってしまう。自分が好意を持っている男性の
前ではこうした刺々しい雰囲気はうまく隠すのも一緒に違いない。









米子で浜田行きに乗換え。30分ほど時間があるのだが、駅弁を売っていた。
浜田行きの車内は席が埋まり始めていたが、何とかボックスシートを確保。
発車を待っている間にも乗客が増えそうな気配があり、車窓を眺めながら落ち着いて
食べることはできないようだ。少し気が早いがまだ動かない車内で、駅弁の蓋を開ける。

この列車に接続する鳥取からやってくる快速「とっとりライナー」が遅れているようで、
定刻より数分遅れてからの発車となった。汗ばむような日差しを受けながら、列車は
次の駅へと走っていく。
荒島で特急列車行き違いのために数分停車。高校生十数人が乗り込んでくる。
次の停車駅は揖屋(いや)。車内アナウンスで女性車掌が停車駅の案内を告げる。
「つぎはいやです。」何が嫌なんだ?・・・これ以上は妄想の駄文が続きそうである。
荒島を出て、次の揖屋まで右手には日本海が見えてくる。実際は先ほど通り過ぎた境線が
走っている半島と松江が根元になる半島に囲まれて湖状になっているが、流れているのは
間違いなく日本海の水である。かの宮脇氏なら手前の家や工場が邪魔となるのだろうか。

揖屋で乗ってきた中年男性は車掌から松江までの乗車券を買い求めている。
松江からも右手に海が続いているように見えるが、こちらは日本海ではなく宍道湖だ。
こちらも先ほどから手前を道路が邪魔している形が続く。

来待で特急列車の通過待ちのために2分停車。女の子2人の片方は中学生か高校生か制服を
来ている。列車通学といっても、北海道と同じように列車本数も少ない上に距離も長い。
私のような首都近郊で経験した通学体験とはまた感覚が違うだろう。
今後の世代が増えなければ、ここでは利用者の大半と占めると思われる学生が減っていく
一方である。利用者は減れば今こうして走っている列車も廃止になる可能性がある。
といって、私ができることは何もないけれど。






宍道の反対側のホームに幼稚園児の団体さん。若い女性は保母さんだろう。
ホームから転落しないように、これから乗る列車に乗り遅れないように目を配っている。
やってきた列車でその団体さんが見えなくなったところで、こちらの列車が発車。
道路の青い看板は「出雲 13km」。あと少しである。



行きも帰りも一畑電車と考えていたが、時間帯が合わないために行きだけは同じ会社が
運営する路線バスに揺られることになった。すぐに着くのかと思ったが、地元利用者も
利用するためか、道を曲がったりしているので少し時間がかかる。
地元らしき中年女性に2人掛けの窓側席を譲ってもらう。図らずも運転士すぐ後ろの席。
列車ではないが、「かぶりつき」である(笑)。国鉄線廃止後も旧大社前駅舎だけは
保存されているが、改修工事のためかその姿はシートに囲まれてしまっていた。





出雲大社へと続く大通りの入り口には白い大きな鳥居。それを潜ってしばらくすると
道に面して洋風の洒落た駅舎が右手に見える。一畑電鉄の出雲大社前である。
それを通り過ぎて坂を少しあがったところに入り口には先ほどよりは小ぶりな鳥居が
出迎える。この前でカップルや夫婦と思しき男女が記念撮影をしている。
2人組みや3人組といったまとまった人数は多いが、私のような一人旅らしき人は
あまり見かけない。縁結び祈願としても有名な地だけに若くてかわいい(中身は別として)
女性が多いようである。ナンパ(するほど私は気は大きくないが)するなら、ここは
成功率が高いかもしれないなんて考えてしまう。

境内は広くてもっと見るところがあるかと思ったが、肝心の本殿は工事中ということで
残念ながらその手前の仮本殿による参拝となってしまった。やってくる参拝客をしばし
観察していると真面目に参拝している者は年齢が若いほどいない様な残念な印象だ。
大きな注連縄の前で注連縄を掴みながら撮影していたり、賽銭箱に投げるのだろう金を
宙に放っているところをそばで見張っている警備員に注意されていたり、警備員が見張る
状況になっていること事態がすでに観光客のモラル欠陥が問題視されているのだろう。

当の私は何を願ったかといえば、縁結びという下心も少しはあったが
家族が元気であることも祈願しておいた。今年は波乱の年明けになることを覚悟したが
しばらくは何とかなりそうである。落ち着いた気持ちで日々を過ごすには周りが元気で
ないと何も始まらないと私は考えている。
工事中の本殿は屋根の葺き替えも実施中だが、一口千円から寄付を募っていた。
特に見返りを期待しているわけではないが、観光資源として役に立つならという
殊勝なつもりはないが、千円だけだが寄付した。そばに記念スタンプがあったので
持参してきたメモ帳に押印していると、本日の営業時間終了なのかそそくさと巫女さん
達がガラス戸を閉め始める。これくらいの時間になると、収・・いや浄財は集まらない
のかもしれない。ガラス戸が閉じられてしまうと寂しい雰囲気が漂ってくる。

このまま待っていても工事中の本殿が拝めるわけではないので、ゆっくりと入り口の鳥居へ
と続く境内の道を歩いていく。バスで通ってきた大通りを今度は歩いて一畑電鉄の先ほどの
お洒落な駅舎を目指す。途中の煎餅やのよい匂いに釣られて、2枚煎餅を買う。






ほどなくして気になっていた駅舎に到着する。道路を挟んだ反対側の歩道であれば
駅舎全体を撮影できる。外もそうだが、大きな引き戸を開けるとまるで千と千尋の神隠し
冒頭で出てくるようなあの駅(?)のような雰囲気である。
もと切符売り場など窓口となっていた半円形のスペースは今は改札横の小さな券売機に
代わってしまったようだが、その鉄格子のデザインはなかなか洒落ている。
改札口となる引き戸の上には次に発車する列車の案内表示器があるが、今時の電光表示
ではなく、下に出ているレバーをまわす方式という珍しいものである。
天井も吹き抜けように高く開放感があるが、ストーブを囲むようにして配されたベンチに
座ると中はとても暖かい。先ほど買った煎餅を齧りながら列車が来るのをしばし待つ。





改札がはじめる5分ほど前に黄色い列車がゆっくりと到着した。
改札口から降りてきた乗客が次々に出てくる。そしてしばらくして改札が始まった。
発車までの数分間で長く使われたことが一目で分かるホームとともにその黄色い列車を
撮影する。元々京王電鉄で使われた車両を譲渡されたが、京王の線路幅とは違うため
台車は現東京メトロから購入したものが使われていると車内の運転室を仕切る壁には
説明書きが張り出されていた。ロングシート車両の2両編成ではあるが、最近とは違い
窓枠で仕切られた窓ごとに蛍光灯が配されているのは新鮮である。





乗客はこのまま乗換え駅の川跡まではガラガラなのかと思ったが、次の浜山公園北口で
学生さんの集団が乗り込んで賑やかになる。先ほど出雲市へ向かう列車で感じた陰湿な
雰囲気は感じなかった気がする。

遥堪(ようかん)。こちらも難読駅名として有名な駅である。
列車は左右に車体を揺らしながら、単線をのんびりと走っていく。乗換え駅である次の
川跡に向かう途中、右手に古い車両が留置されているのが見えた。一畑電鉄がPRとして
今年の5月に母の病気で運転士になることを決断する男の物語として、使われている車両
らしい。そのそばでは幼稚園児と思われる小さな子供たちが数人、保母さんらしき男性と
ともにこちらに手を振っていた。
園児ではなかったが、出雲大社へむかう途中のバスから横断歩道を渡り終えた小学生の
女の子たちが停車している車に向かってお辞儀をしてから去っていくのが印象的だった。
出雲大社という観光地故に礼の教育も重んじているのかもしれない。
そうであろうとなかろうと、お辞儀をされれば運転する側も悪い気持ちはしない。
横断歩道を渡ろうとする人に気をつけようという気持ちは自然と芽生えるだろう。(と思う)
事故軽減としてもよい施策だろうと個人的には感じた次第である。
桜はまだ開花していないが、一足早く桜を見た気持ちになったのである。





川跡から構内踏み切りを渡って、接続する電鉄出雲市行きの同じく黄色い列車に乗る。
出雲大社前駅のお洒落な駅舎も印象的だったが、こうして列車に揺られると次回山陰に
来る機会があったら、松江しんじ湖温泉まで足を伸ばした列車旅も良いなと思う。


終点電鉄出雲市の直前で、この列車に似合わずコンクリートの高架線になる。
電鉄出雲市はすぐ隣がJR出雲市のホームであり、これに合わせる様な間借りしているな
印象である。こうして今回の一畑電鉄によって出雲大社までの旅は終わったが、
これから乗る寝台特急「サンライズ出雲」も楽しみのひとつである。
自動改札機がないのはちょっとだけ新鮮だったが、改札掛の駅員がいたので入線時刻を
確認すると18:42とのこと。まだ時間があるので、風呂にでも入りたいと思ってバスのりば
とは反対側に出てみると、丁度良く温泉の看板が大きな道路沿いに見えた。






ゆっくりと湯船に漬かりたいところだが、ギリギリで駆け込むのも嫌なので
少し急ぎ目に駅へと向かう。発車10分前。すでにホームには東京まで連れて行ってくれる
寝台特急が待っているはずである。駅弁でも売っていたらと思ったが、改札そばのニュー
デイズには見かけなかった。無難なコンビニ弁当が列車内で食べる夕食となりそうだ。
あとは流れ行く夜の山陰路を肴に個室で飲むビールやスナック、そして朝方の喉の渇きを
潤す飲み物を抱えて改札を通る。階段を上がるとすでにその黄土色の車体は発車を待って
いた。発車5分前を少し切っていたが、急いで先頭車両や側面の方向幕など撮影を済ませ
自分の個室に荷物を置いて落ち着く。車内の撮影も続けていると列車はゆっくりと
出雲市駅のホームを離れていく。ブルートレインと称される客車とは違って、揺れもなく
静かな発車である。さっそく本日の同業者を見かけた。私より年下の印象を受けるメガネの
少年は今、車内撮影に夢中になっている。車内探検の途中であらされるようだ。
私も彼に倣って(?)、車内の端から端まで撮影ついでの車内探検に歩いてみる。
個室ではない「ノビノビ座席」と呼ばれる2段式のベット風はまだガラガラだったが、
これから停車する駅で埋まっていくだろう。
「北斗星」にあるような車内販売や食堂車はない。(下りは岡山を出てから車内販売あり)
シャワールームはあるということで、この前の旅で帰りに乗った「北斗星」では朝使う
つもりでシャワーカードを購入したが、結局使わなかったのでよい機会だと思い、
すれ違った車掌さんからシャワーカード(310円)を購入。カードのデザインは「北斗星」と
は違い、こちらはサンライズエクスプレスの正面がロゴとともに配されている。
シャワールームも「北斗星」の場合は購入とともに使用時間が予約制だが、こちらは
空いているならいつでも使用可能である。











まったく調べていなかったが、3号車にはシャワールームのすぐ横にロビースペース。
通路を挟んで4人ずつ窓を向いて椅子が設置されているので、景色を楽しみながら
談笑したり、飲食ができるのがうれしい。今回指定したソロは3号車だけにあり、
寝るとき以外は狭いスペースに籠らないといけないソロ利用者にとっては、今回の私に
とってはゆっくりと夕食ができるありがたいスペースである。
そばにはトイレ、洗面台、自動販売機、屑物入れとあまり移動しなくても車内の用が
済むので、ソロは是非お勧めしたい個室である。




今、そのミニラウンジという称されるロビースペースで先ほど買った弁当を夕食に
食べている。しばらくは誰も座ってこなかったが、二人組みの若い男性が背中越しに
通路を挟んだ反対側に座った。車窓の外は真っ暗で、車内の灯が反射して談笑している
その2人組が見える。初めての北海道旅行で乗車した「北斗星」には今は運用していないが
広々としたロビーカーが連結されていた。(今もあるが、ミニロビーという名の通り、
カウンター席はなく、ゆったりした感じではなくなった)カウンター形式の回転する席と
ソファーがあったが、どちらもゆったりと景色を楽しみながらくつろげた。そこで
食べた車内販売で買ったアイスクリームと缶ビールを飲みながらの優雅な夜に比べると
こちらは移動する高級なビジネスホテルという感じだろうか。

夕食を終えると、今度は缶ビールとおつまみを自分の個室から持ってくる。
すぐそばなので移動も苦ではない。ビールを飲みながらこのニッキを書くべくメモを
しているが、すぐ隣に先ほど見かけたメガネの同業者がやってきてはすぐそばの席に
座りだした。そばの自販機でジュースを買ってそのまま自分のところへ戻るのかと
思ったが、またしばらくは座って飲んでいた。話しかけられるのかと思ったが、
そういうことはなく、この路線を乗り潰したことを確認したかのように気が済んだようで
そのまま戻ったきり、もうやって来る気配はなさそうである。

何度か客車型であるブルートレインには乗ってきたが、こちらは対して寝台電車。
結構飛ばしていくようなイメージがあったが、伯備線に入ってからは単線故に列車すれ違い
による停車と発車を繰り返す。最新型の寝台特急であっても、道は譲らないといけない
らしい。種別は特急でもメインはあくまで中距離を結ぶ特急列車なのだろう。
乗っていると寝台列車の時代は終わりつつあるのかなと感じてしまう。
特急だから先ほど昼間に乗ってきた普通列車よりは早く到着するはずなのだが、
伯備線での停車駅である新見までけっこう長いように感じる。
新見までは長いが、新見はすぐに発車する。客車のような鈍重さはなく、しずしずと
発車するあの独特の感じももちろんない。唯一のイベントは岡山での「サンライズ瀬戸」
との併合作業くらいだろうか。

缶ビールも空になり、おつまみも食べ終えた。自分の個室に戻ってもまだ眠くならない。
ふと少し離れたところに白くライトアップされた滝が見えた。昼間も確認しているが
その手前にディリーヤマザキの看板の灯が点っている。後で調べたら国道180号線沿いに
ある「絹掛の滝」という滝だとわかった。伯備線ではそれ以外で印象に残っているのは、
昼間の「ぬいぐるみ女」ぐらいである。


倉敷に到着すれば、あとは一路山陽本線と東海道本線を走るだけになる。
岡山の手前で、サンライズ瀬戸の後ろに併合する作業のために駅直前で停車と発車を
繰り返す旨の車掌の車内アナウンスがあったが、ホームの停車時間はわずか3分。
先に到着したサンライズ瀬戸なら後からやってくるこのサンライズ出雲の併合作業を
ゆっくりとホームで見物できるが、こちらはそうもいかない。
客車のように車内にいながらにして貫通扉の窓ガラス越しの見物はできないのだ。
車内アナウンスが伝えたとおり、岡山直前で列車は減速しはじめ途中で停車。
しばらくしてまた動き出すというのを何度か繰り返す。


岡山到着。3分後にはあっけなく発車する。
連結してもサンライズ瀬戸側にはいけないのかと思ったが、発車してしばらくしてから
通れるようになるとの車掌のアナウンスが流れた。その瞬間を見ようとすぐにまだ開かない
扉の前で待っていると、瀬戸側から物音がして車掌がこちら側の扉を開けた。
かくして7両+7両の長い14編成になって終点東京まで目指すことになる。
サンライズ瀬戸側も車内探検をしてみるが、何のことはないこちらと全く構成は同じ。
こうして用事が済んで自分の個室に入って部屋の明かりを消すと、こちらでもよく晴れて
いたようで、夜空の星が良く見える。寝ながら星空を見て移動できる感動は客車寝台でも
電車寝台でも同じようだ。この時間は寝台特急に乗らないと味会うことはできない。
そうこうしているうちに意識がなくなってきた。