2011年2月8日火曜日

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【北海道&東日本パスの旅 5日目】 再び2429Dとスパカツ

旭川
08:10発

↓ 2154M 函館本線

08:56着
滝川
09:37発

↓ 2429D 根室本線

17:39着
釧路






朝6時半に目が覚める。私の場合、起きなくてはならない1時間前にセットしておくのが
肝要らしい。目を覚まして歯磨きをする。旭川四条からも旭川からも離れた中間くらいの
地点に立地するホテルだが、窓を開けると宗谷本線の線路が見える。ゆっくりと列車が
走っていく姿を鑑賞できる。隠れたトレインビューホテルでもある。
このホテルはサウナやお風呂をメインに、月単位の連泊利用も提供しているために
マンションの部屋そのものなので、さながらウィークリーマンション利用者の気分だ。
ただし、ビジネスホテルと違って小さいながらもキッチンが付いているので、歯磨き
しながら、髭剃りをしながら、テレビを見ることができる。マンションの一室なので
広々としてゆったりしている。これで4000円を切るのだがら、かなりの良好物件(笑)。

旭川始発の列車に乗るため、7時半にはホテルを出払う。
発車10分前。ホームで待っていると5分前になって岩見沢方面から711系の赤い3両編成が
ゆっくりと入ってきた。先頭車両の前よりには、山登りにでもいくのか行商のような
大きなリュックを背負って何人か若者が乗り込んだ。

先頭車両の中央付近が空いていたので、左側のボックスシートを選ぶ。
右側にしなかったのは窓が少し汚れていたからだ。これは結構気になる事なのだ。
定刻どおり、列車が発車する。発車するとすぐ隣のボックスシートには高校生と思しき
年代のカップル。彼氏の方がやたらとテンションが高いのは、どうやら異性と付き合い
初めた経験が少ないのかもしれない。もっとも実は私はたった「一日」しかないので
人をどうこう言える立場にはないのだけれど・・。

制服姿の彼女はのどが渇いた、と言うので、ペットボトルのお茶を差し出していたのだが
どうやらそのやさしさは伝わっていなかった様だ。彼女の駅で降りて喫茶店でも連れて
いけば、彼の株はもっと上がったのかもしれないと勝手に心の中で指摘してみる。
しばらく何となく彼らを観察していると、彼女は納内で降りるようだ。
彼女がここで降りることは知らなかったらしく、つられるように後を追うようにして
降りていった。もう少し話していたかったのに残念、という表情に見えた。
彼女にとっては、単なる男友達なのかもしれない。それでも川の水面近くで誘うように
踊っている疑似餌を必死に追って、結局釣られてお終いとなったとしてもアタックする
ことに燃えるタイプに彼はどうやら当てはまりそうだ。九州のように3度断られても
諦めずにアタックするか、しないかでリアル充実(リア充、と略すらしい)か否かに
分かれるのかもしれない。ルックスだけではなく、プラスアルファが必要なのだろう。

納内を出てからしばらくしてトイレに行きたくなった。
以前ほど緊張しなくなったのか、決まった時間帯にお通じが来るようになったので
トイレのある車両か、その近くでないと少し不安になる。何度か旅を通して、少しだけ
度胸のようなものがついたのかもしれない。

滝川。本日のメイン列車でもある。
2429Dが列車番号だが、JR北海道が宣伝し、話題が広がったことで、芸能人のごとく
一躍時の列車になっている。以前はそれほどの乗車率ではなかったと思ったが、
席はほぼ埋まっている。私のように乗りとおす物、途中の富良野辺りまでの区間利用など
乗車目的は様々だろう。サイドボードもそれまでの白地に「釧路」と書かれただけのが、
専用のサイドボードに変わっており、JR北海道の力の入れようが伝わってくる。
(完全乗車証明書の配布期間も2011年の10月まで延長なったそうだ)

特に富良野への観光客にとっては、従来の特急列車だけでなく、「特別な」鈍行列車で
北海道のローカル線体験を気軽に楽しめる、という別のアプローチが選択できる。
もちろん旭川あたりに宿泊する行程が前提になるが、これをきっかけに時間をかけて
ゆっくりと旅行する機会が増えれば、今まで特急列車で素通りしていた観光客を取り込む
よい影響が生まれる事をJR北海道としても、期待しているのかもしれない。

この旅行のためにというわけではなかったが、最近読んだ鉄道関連の本によると、
もともと札幌などからはるばる20時間以上かけて走っていた列車の最後まで残ったのが
この滝川~釧路である。しかもこの滝川~釧路のダイヤは昔はほとんど変わっていない。
「はまなす」を除いた長距離の道内夜行列車が無くなった現在、将来夜行列車が不要に
なっても継続的に使用できるようなダイヤ編成は先見の明というべきだろうか。

今朝は慌しい出発で優雅に朝ごはんを食べる余裕がなかった。
途中で買う時間もなかったので、何も買わずに滝川まで来た。しかし腹が空いてきた。
2429D列車はすでに1番線に停車していた。そのそばの立ち食いそば屋から良い香りが
漂っている。食事は座って食べたいというのが信条なので、立ち食いそば屋は好きではない
のだが、駅スタンプを押すように旅の記念という気分からか、かけうどんを注文した。
おそらくJR東日本のエキナカにある駅そばよりもうまいだろう。小田急の箱根そばとは
肩を並べるかもしれない。つゆは濃い目。空きっ腹に染み渡る。美味しい。

食べている店員の若いお兄さんが顔を出す。店の中は大変暑そうである。
お兄さんと発車までのひと時をおしゃべりで過ごす事になった。話をするのが好きな様だ。
お兄さんいわく、この暑さは異常らしい。これは南稚内のキヨスクのおばちゃんも
同じ事を話していた。今の時期なら肌寒くなるはずだが、この暑さでは駅弁をあまり
置けないが、この滝川でもネタが痛んでしまうので、すし屋も泣いている状況らしい。
さらに盆地という地形から、寒いときは徹底的に寒いが、暑いときは徹底的に暑い。
根室に行くのだ、と話したら、根室はさらに暑いだろうという。海からの蒸気が暑さに
拍車をかけるそうだが、果たして真相はいかに。行ってみれば分かるだろう。

発車5分前になったので、お兄さんに別れを告げる。
かけうどんをさっと胃に流し込んで、すぐに車内に乗り込んで席を確保できたのだが、
今回は北海道をゆっくりと楽しむのが大きなテーマにしている。せこせこしてはいけない。
座れるところに座れば良いのだ。

定刻に2429Dは滝川のホームを離れていく。

赤平。れんが造りの駅舎は宗谷本線の美深を思い出す。
先ほどのお兄さんの話を思い出しながら、メモをしている。2429Dが停車していた1番線は
かつては駅弁の立ち売りがあったそうだ。今は数えるほどの気動車が発着するだけだが
かつては長編成の客車の窓から、客が駅弁を買い求める光景があったのだろう。

平岸を出たあたりで相席のおばあさんに話しかけてみた。
なんと同じ神奈川県の町田からはるばる列車でやってきたという。函館本線を回ってきて
今夜は釧路で宿泊。明日は釧網本線で旭川に戻り、札幌から北斗星で帰京するそうだ。

野花南を出てしばらくすると、長いトンネル区間となってしばしお話を中断。

度々鉄道旅をされているようで、東西南北のそれぞれの最端の駅は制覇したという。
「日本一周鉄道の旅」でトワイライト・エクスプレスにも乗ったという。うらやましい。
私はまだ憧れのその優雅な緑色の客車には乗ったことはない。果たして将来乗れるのか。

トンネルの湿気で窓が曇る。窓を開けていないと暑い。
北海道の夏はこうも暑いのか。以前訪れたときとはかなり気候が異なっている。

富良野。大半の客が降りていく。今や言わずと知れた代表的な観光地である。
例のおばあさんは景色を楽しみたいということで、斜め右後ろのボックスシートに移動。
会話もそれなりに気を遣うので、後は一人で楽しみたいのが本当のところだろう。

実際、私も只見線の臨時列車として乗った「風っこ会津只見号」で相席の青年との会話に
集中していると景色を楽しむのはなかなか難しいのである。
確かこの時は只見の駅前で、この臨時列車に合わせて食べ物や飲み物を販売する模擬店が
いくつか出ていて、買ったものでしばし昼ごはんとしたが、私が彼に近づくと彼は何も
言わずに別の場所へと移動してしまった。話しかけられるのはいいが、ある程度は距離を
置いて基本は一人で楽しみたいのである。

そうした経験があるので、後は一切話しかけることはしないことにした。

例のおばあさんは一眼レフで色んなアングルで停車中の二両編成にレンズを向けていた。
富良野を発車間際。隣のホームでは青年がデジカメに三脚を立て、自分を入れて撮影して
いた。隣のボックスシートに座る中年男性は恐らく同じ目的の客だろう。
すでに持ち込んだ日本酒やら食べ物やらを広げた半個室状態で撮影業務も忙しそうだ。

金山。お父さんらしき男性と小さな女の子が降りていく。
女の子を抱いたその男性の手にはおむつの袋がぶら下がっていた。買出しも大変のようだ。

東腰越。なんという湖だろうか。その奥を山が囲んでいる。
駅舎そばにどこかのホテルらしき送迎ワゴンが待っていた。そのワゴンに列車を降りた
中年女性客が一人乗り込んだところで、列車は発車していく。

次は幌舞。ではなくて幾寅。
この駅でまとまった人数が降りるのは、同じ考えで降りる人だけである。
ゆっくりと撮影したいなら、次の列車を待つ行程を組む必要があるだろう。

隣のボックスシート氏は席を暖める余裕はなさそうだ。
主がほとんど座っていないその席に目を向けると、「全国駅前銭湯情報」なる本があった。
そんな本があるのか。500円で買える安宿情報本なら知っているが。

落合には12:08着。ここで13分ほど停車する。
観光客としてはひとつ隣の幾寅で停車してほしいのだろうが、退避設備上の理由の他に
じっと13分も停車するのは、この落合駅が元々、蒸気機関車の配置が必要だった歴史を
経てきた名残ではないかと思われる。今でこそ、狩勝峠を短編成の気動車は難なく
上ったり下ったりをしているが、勾配をできる限り避けるように配された旧線の線路は
今の新線よりはもう少し北寄りを遠回りする形で機関車がうなりを上げながら、客車を
牽引していた時代があった事だろう。しかしその眺めは今の新線になってからは失望の
声が聞こえてくるほど、絶景だったという。今は列車の中からその眺めを拝むことは
叶わないが、今も列車が走っているなら、日本「三大」車窓である。(今は「二大」・・)

落合のホームからも見えるが、列車が発車してしばらくするとトンネルの入り口が近づき
列車ははトンネルの闇と轟音に包まれる。落合側と石勝線のトマム側からやってくる線路
は同じトンネル内で合流し、根室本線として釧路まで向かう形になっている。
そうした線路配置のため、釧路方面に向かうときは「入り口が2つ、出口は1つ」という
全国にも珍しい構造の長大トンネルになっている。

12:25。右手から線路が合流し、その3分後にはトンネルを出た。
先程の銭湯情報氏は相変わらず、デジカメ業務に忙しい様子である。

トンネルを出たら、進行方向左側のボックスシートに座るべきだ。
大きなS字カーブを描きながら、列車は狩勝峠を下がっていく。旧線に比べたらこちらの
眺めは劣るのだろうが、斜め上に視線をやれば先程走ってきた線路が見えてくる。
能ある鷹は爪を隠す、ではないが、それほどスピードを出していなかった気動車は
この大カーブを気動車らしからぬ軽快なスピードで飛ばしていく。気持ちいい。
過去にもここは列車で通り過ぎているが、カメラを向けてしまう魅力があるらしい。

記憶通り、十勝清水では学生さんの団体や地元の方が乗り込んで来る。
ここから先も記憶違いでなければ、地元客の乗降が続く筈である。
今乗っている列車も含めて、札幌近郊路線を除いてはまだ車両の端がロングシートで
それ以外が4人がけのボックスシートというスタイルになっている。
若い地元客、すなわち高校生などの学生諸君はロングシート、私のような観光客は
ボックスシート、という基本的な住み分けが出来ている。

ボックスシートに先客がいる場合はそうなるけれど、団体のリーダー格が人数分座れると
計算したならボックスシートにも座ってくる。尤も計算というよりはその時の気分
というのが、正確なところか。残りのメンバーはその気分に合わせて動くのである。
気分優先で動く団体さんの場合は、ボックスシートで座れない人が出るとその人は
私が座っている側のボックスシートには座らずに肘掛けに寄りかかるよう立つ。
座れる席があっても大抵は座らない。理由は簡単。気まずいからである。

白いシャツの制服を着た女の子とパピコ。ショートヘアの子はパピコを手にしながら
友達と談笑している。私は今、パピコになりたい。

白糖。ホームではこの列車狙いと思しき男性がカメラを向けている姿。5分停車。
西庶路。学生さんが一人乗車。庶路。民家に柵がないホームはどうやら使われておらず
代わりに植物が植えられているので、間違って待つ人はいないだろう。

夕日を背にして列車は釧路に近づいていく。
阿寒川を渡る頃には風に乗って磯の匂いが開けた窓へ入ってきた。

大楽毛。ここで12分停車する。
貨物列車の通過。上り普通列車が島式ホームの反対側へ到着すると同時にこちらは発車。
新富士に向かう途中で高架になる。新富士で地元客が数人乗車。釧路はもうすぐだ。

先程の町田からやって来たおばあさんは親切にも運転士から訪ねた情報を教えに
私のボックスシートに来てくれた。改札口の駅員に申し出れば乗車記念証がもらえる
とのこと。そして列車は8時間を経て、終点釧路へ。
8時間はあっという間である。静岡県を鈍行列車で横断するのは苦痛でしかないが、
この2429Dでは8時間でも不思議な事に物足りない気持ちになる。

ホテルに荷物を置き、洗濯物をコインランドリーに放り込む。
この地ではB級グルメと有名(?)な「スパカツ」を食べに、下調べしておいた
「レストラン泉屋」に電話で営業時間を確認する。webでは22時となっていたが、
実際は21時半まで。21時にオーダーストップだという。コインランドリーでの
洗濯、乾燥が終わって出かけることにする。

さて、スパカツ。注文してしばらく待つとウェイトレスの若い女性が持ってきたのは
熱々になった鉄板にスパゲッティーとトンカツが載ったものである。
初めてなので無難に普通のサイズを選んだのだが、普通でもお腹いっぱいになる。
というより、なんとか食べきったという感じであった。
会計時にウェイトレスに訊いたら、丸い鉄板で出る「大盛」もあるとのこと。
私の能力ではとても無理であろう。

明日のために、今日は早めに寝ることにする。

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