2011年2月8日火曜日

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【北海道&東日本パスの旅 7日目】 駅の食堂と駅の喫茶店と

東根室
6:01発

↓ 5624D 根室本線

8:24着
釧路
09:05発

↓ 3728D 根室本線~釧路本線

11:36着
止別
12:48発

↓ 4732D 釧路本線

13:00着
原生花園
13:49発

↓ 4731D 釧路本線

14:12着
知床斜里
15:14発

↓ 4735D 釧路本線

15:49着

16:03発

↓ 8737D 釧路本線

16:44着
摩周
17:06発

↓ 4737D 釧路本線~根室本線

18:29着
釧路
19:33発

↓ 2532D 根室本線

22:12着
帯広






朝4時半に目が覚めた。いや覚めてなくては困る。
始発駅の根室から乗るつもりだったが、東根室から乗っていくことにした。
降りる機会はあっても、乗り込む機会はそうそうないからだ。せっかくだから最東端の駅
から乗り込まない手はないと思って、早めに起きたというわけだ。
鈍行列車だけで移動する旅は必然的に早朝の列車で移動を始めることが多いので、
早寝早起きという、本来の人間が持っている生体リズムに戻れるので健康的であるが、
普段の生活でそれが実行できていないので、やはり早起きは少々辛いときがある。

根室駅からなら徒歩30分は見ないと不安である。地元の慣れている人でなければ
すぐに迷ってしまうような場所にある。成央小学校まで来れば、セイコーマートを目印に
左に曲がったり、右に曲がったりして住宅街の中にある。

「東根室地下道」と名づけれた線路のガード下を潜り、東根室へと向かうが、雨が降る
高台にあるホームには誰一人待ってはいなかった。ホームから見ると、向こうから犬の
散歩に歩いてくるおじいさん。朝飯前の運動だろうか、雨合羽を着て歩くおばあさん。
散歩がてら、東根室のホームの様子を覗くのが日課になっているのかもしれない。
おじいさんの付ける日記には、「今日の朝には珍しく、ホームに待ち人が・・」と書かれる
のかもしれない。2両編成の気動車は時刻通りにやってきた。わかってはいたが、すでに
始発駅の客で席は程々に埋まっている。根室本線らしく、朝霧のぼんやりした中を気動車は
走っていく。花咲、西和田の車両型の駅舎はまた綺麗に塗り直されていた。
駅名のフォント、ツートンカラーのデザインは同じ人が担当したものかもしれない。

昨日見た落石~別当賀の海と緑の丘は乳白色の霧に包まれて見えない。
晴れている日中帯に撮影、鑑賞するのがベターなのである。

別当賀。車両型の駅舎はペイントされているが、左下には「花咲線全通80周年 2001.7」。
厚床小学校が描いた様で、今年で89年目。来年90年を迎えることになる。
我が小田急線が我が80周年を最近迎えたので、それより少し前に全線開業したことになる。

朝早く起きているので、油断していると意識が飛びそうになる。
厚床。乗っている列車は2両編成だが、ここで後ろの一両を切り離すために6分停車する。
切り離された一両が唯一の臨時列車8325Dとして、厚床発根室行きとして発車するらしい。

「意識飛び」対策ではないが、時刻表を開いてみると今乗っている列車は茶内で
快速「はなさき」と交換するようだ。こちらが先に発車するようだ。
姉別。地元らしき若い女性が一人乗車。さらに時刻表を見ていくと厚岸で厚床止まりの
5627D、終点のひとつ手前の東釧路で5629Dと交換し、こちらが先に発車するだろう。

浜中。地元らしき数人が乗車。ほとんどがおばさんだが、2人ほど制服姿の女の子たち。
地元の高齢なほど、降りるのに近いロングシートの傾向が高いように思われる。
女の子2人は気まずくない位置を瞬時に「検索」して、後ろの方へと移動していった。

茶内。整理券の発行機械でトラブル発生。旅に出るとまれにこうした光景を見かけるが
乗務員が直そうと試みるも大抵は直らない。ワンマン故に運転も車掌も一人でこなさない
といけないので、機械を細かく見ている余裕などない。結局終点の釧路で直すらしい。
釧路で交代してから、トラブル関連諸々の報告をしないといけないので、乗務員の仕事が
余計に増えるのである。

糸魚沢で一人乗車。糸魚沢を出てからしばらくすると左手に湖、右手に沼が広がる。
よくこんな所に線路を敷いたものだと関心してしまう。
厚岸。地元のおばちゃんが2人下車。入れ替わりに学生さん数人の白いシャツ軍団。
後は高齢者が数人乗り込んできて、車内は賑やかになる。この車両の定員に近い乗車率
に違いないだろう。

門静。一人乗車。花咲線のラッシュ時間帯だろう。上尾幌でもおじいさんが一人乗車。
ロングシートを根城とする白きシャツ軍団は音漏れするほどの音量で耳へ音楽を突っ込み
任天堂のDSでゲームをする光景は北海道では列車を「汽車」と呼ぶ以外にこのまま首都圏
の通勤電車に切り取って見比べてもまったく違和感はない。

武佐。ここでいよいよ立ち客まで出てくるようになる。
このまま釧路まで乗っていってもよいのだが、気が変わって東釧路で降りることにした。
まだ下車したのない駅だからだ。東釧路から釧路まで歩いてとも考えたのだが、地図で
確認すると、東根室よりもさらに長い時間が掛かるようで道順は分かりやすいけれども、
逆に列車に乗り損ねる心配がある。

トイレがないので、近くのガソリンスタンドで借りる事にした。
釧網本線の起点駅であることを示す、0キロポストが立っている。待合室の駅舎を通りすぎ
構内踏み切りでホームに上がる構造の島式ホームになっている。ホームにはすでに白い
シャツの男子が一人。高校生だろうか。後は地元らしきおじいさんが一人やって来た。
それ以外に乗客は増える様子はなさそうである。昨日の暑さが嘘のように涼しい。
釧路側でも雨が降ったようで、日が差していないために暑さが和らいでいるのだろう。

もう一人乗客が現れた。青いブレザーの男子が一人、耳から音漏れさせながら駅舎に戻って
時刻表を確認し、また戻ってくる。北海道が地元の知り合い曰く、道民は時間にルーズだと
話に聞いていたが、昨日のノサップ岬へ行ったときに見かけた車の追い越しといい、
この男子のせっかちそうな雰囲気といい、結構せっかちな人種かもしれない。
北海道の多くの地域が車で移動することが前提になっているだろうから、運転本数の少ない
列車をじっと待つという耐性が備わっていないかもしれない。

ホームの時刻表には鹿対策のために、花咲線の発車時刻を変更する旨の張り紙があった。
鹿のために徐行運転するのは、北海道くらいだろう。我が小田急線は何も無くても大抵
徐行運転するのだが(笑)

列車がやってきた。根室よりもさらに混んでいるようだ。通勤、通学、そして我々観光客
が混じる車内は私のような関東圏に住む者はまず体験する事はない。
デッキには立ち客。車両真ん中のテーブル席は始発からすでに狙っていたのだろう、
おばさん方の団体が陣取っている。摩周まで足湯めぐりか、釧路湿原までの客だろうか。

釧網本線も列車本数はそれほど多くない。列車によっては車両運用の事情なのだろう、
あと数駅行ってくれば次の列車に乗り継げるのにという駅止まりの列車がある。
網走周辺まで行って折り返すか、釧網本線を乗り通すかのどちらかを選ぶことになる。
後者の場合はあまり寄り道ができないが、前者なら乗り降りする列車を調べてみると
何とか寄り道はできそうだと分かった。

まずは今乗っている快速「しれとこ」で止別まで行く。
そしてそのホームにある食堂で食事、次の列車で北浜へ。最後は原生花園に降りてから
釧路へ戻ってくるという予定である。特に原生花園は期間限定の臨時駅なので、下車する
機会も貴重なものになる。

釧路湿原。後方のデッキではスポーツ刈りの少年が夢中でカメラを向けている。
デッキにいた数人が降りていく。塘路でも数人が降りていく。団体客かもしれない。
釧路行きの普通列車とすれ違う。後方のデッキは撮影会場の様相を呈している。
テーブル席は相変わらず、おばちゃん方の談話室になっている。「談話室滝沢」ならぬ、
「談話室釧網本線」というところか。にぎやか車内の中、車窓からは釧路湿原が広がる。

茅沼。丹頂鶴が見られることで有名だが、この時期では流石に見られない。
ホームに機関車の動輪。おばさんが一人乗車。標茶では数人が降りていき、2,3人が乗車。
標茶あたりまでが地元利用者がよく利用する範囲かもしれない。釧網本線に入ってから
ある程度の規模がある街並みが広がる。窓を開けると心地よい風が吹いて来る。

南弟子屈の青い車両型の駅舎を通過。摩周。降りる客はなし。若い男性、中年男性が
一人乗車。席は結構埋まっている。網走まで午前中に出る貴重な列車のため、必然的に
混んでくるのは仕方がない。車内にはどこからマクドナルドのポテトのような匂いが
漂ってくる。誰かがお昼ご飯として食べテいるのかもしれない。
私の隣には摩周から乗り込んできた若い男性が座り、カメラを取り出して撮影を始めた。
どうやら車窓の景色を撮っているようなので、声をかけて窓側を譲ることにした。

こちらは座れればどこでも良いのだ。譲ったら何故かカメラ撮影を止めてしまい、
お互いの旅行話で盛り上がることになった。彼は周遊きっぷで、北海道を回っているようで
宗谷岬に行ったという写真を見せてくれた。北海道に2編成しかないという形式の車両の
写真や最近運行している国鉄色の赤い塗装のキハ40系も見せてくれた。
あと、釧路の駅弁情報。摩周の温泉情報や、摩周湖の鏡のような水面、そして川湯温泉、
砂湯があることは初めて知った。彼は知床斜里へ向かう予定だったが、旭川に向かうことに
するそうだ。離れた席から中年男性が一人こちらにやって来たが、旅の途中で一緒になった
旅行仲間のようだ。雨が降っている止別のホームに降り立ち、車内に残る彼らに手を振って
発車する彼らの列車にお別れの挨拶をする。駅舎の屋根には食堂の「駅馬車」のシンボル
なのか、風見鶏のような馬が立っている。観光客向けでもあるが、中に入ると雰囲気から
地元の人たちの憩いの場としても愛されている駅の食堂という感じだ。気取らない雰囲気が
大変落ち着いて個人的には好きである。ラーメン一杯だけにしようと思ったが、じゃがバタ
も気になるので一緒に注文。ゆっくりと食べないと次の列車まで間が持たない。
雨が降っていなければ、食後に駅周辺を歩き回ることにしたかったのだが、雨では店に
閉じこもっているしかない。食後にコーヒーでも飲んでゆっくりとしたいが、まだ旅の
半分なので、何があるかわからないので手持ちの現金はなるべく節約しないといけない。

発車時間になる少し前に店を出る。あわてる事はない。目の前がホームなのだから。
小さな女の子が乗り込む。その次に私が乗り込む。緊張しているのだろう、すぐ後ろに
人が気づかないくらいで、閉めようとしたドアを私が抑えてようやく振り返った。
列車は北海道では見慣れた白地に青と緑の帯が入ったキハ40系の1両。
浜小清水。制服の女の子が一人乗車。原生花園では中年夫婦が一組乗車。雨は降っている。

北浜。ようやく降り立つ事ができた。オホーツク海に近い駅として有名だが、
その駅舎にある喫茶店が気になって降りることにしたのだ。まず目を引くのが壁や天井に
喫茶店への扉と向かいのトイレのドア以外にはビッシリと貼られた名刺。しかし天井を
よく見ると、古いタイプの青春18きっぷや磁気定期券も何枚か画鋲で貼られている。
というより、天井にはどうやって貼ったのだろうか?肩車でもして貼ったのか(??)

撮影を済ませて、逃げ込むように店内へ。
カウンター席とテーブル席があり、テーブル席は客車で使われたらしいシートをそのまま
利用しているようで、ボックスシートでコーヒーを飲みながら、冬なら流氷を眺めつつ
列車がやって来るのを待つという何とも洒落ていて、贅沢な喫茶店である。

ボックスシート側に目を向けると、2組ほどのグループがボックスシートに座っている。
マスターの収集品だろうか、天井近くの壁にタブレットを収めるキャリア(自転車の
ワイヤー錠のような形状といえばわかるだろうか)や、蒸気機関車の車両形式を示す
プレートなど鉄道部品が控えめに展示されていて、気づく人には楽しめるようなしぶい
演出がされているのが何とも好ましい。なお、ボックスシートに座ってもよいかと
マスターの奥さんと思しき中年女性に訊ねたら、2人組以上でないと駄目らしい。

ボックスシートの客がいなくなってからマスターがもう忙しくないので、座ってもどうぞ
と言ってくれたのだが、列車の到着まで後数分だったので気持ちだけ有難く頂き、
レジ横に駅スタンプがあったので、手持ちのメモ帳に押していると列車がやって来た。

次は原生花園へひとつ釧路方面へ戻る。狭いホームに下りると生憎の雨模様だが、
この雨でも私の他に何人かが降りる。駅舎では入場券やオレンジカードの販売している。
節約したいところだが、観光客としてはただで見て通り過ぎるのもなんだか忍びないので
入場券の10枚セットを一枚購入した。
原生花園は海岸沿いに小さく作った花壇のような風情で、一周20分ほどもあれば見るのに
十分だろう。だがこの雨では、鳴り砂浜まで降りていく客は皆無らしい。
鳴り砂浜に着くまでに雨に濡れた植物に触れて、ズボンはほんのりと濡れていく。
これが分かっているから、後から観光バスでやって来た団体の観光客も誰ひとりとして
下まで降りてくる人は見かけなかった。
雨のせいで水分を含んでいるためだろうか、踏んでも音が聞こえなかった鳴り砂浜・・。

原生花園の植物に水遣りするためなのか、「となりのトトロ」に出てくるような昔の
レバーを上げ下げする方式の手漕ぎポンプ式の井戸がある。
晴れていれば他の観光客の目もあってちょっと恥ずかしいが、雨で誰もここまでやって
来る気配はないので、気にせずにレバーを上げ下げしてみる。水は出てこなかったが。
北海道の原生花園にくれば、もれなく「となりのトトロ」のあのシーンが体験できます(笑)

団体の観光客は望遠鏡のところまで、しばらくしたら姿が見えなくなった。
踏切を渡ったお土産などを売っている建物などに避難したのだろう。

先ほどの駅舎に戻ると、1600円分の「入場料」(原生花園は無料です)を支払ったのが
良かったのか、駅員が使っている本物の制服で記念撮影のサービスをしてくれるという。
この年になって、駅員の服を着て写真を撮られるとは予想していなかった。
制服といえば、小さいころに消防士の作業着を来た記憶ぐらいしかない。
少し寒いのもあるが、黄色い足の蚊が刺してきてかゆいので、踏切を渡ったそばの建物の
中へと逃げ込む。お土産や食べ物を販売しているが、観光地なら割高なのはどこも同じ。
しかし何も食べずに列車まで時間を潰すのは厳しそうなので、ジェラートを出す店で
夕張メロン味を選んだ。2色盛りのサービスをしてくれるというので、流氷オホーツクを
組み合わせにしてみた。氷のイメージしたような塊だが、どこかで食べたような味。
次回は食べるだけでなく、この目で本物の流氷をお目にかけたいものである。

列車の到着時間を見計らい、駅舎に戻ると原生花園に停車するキハ54系のオレンジカード
まで衝動買いしてしまった。何という不覚。販売員を兼ねた駅員氏が教えてくれた通り、
やってきた列車はキハ54系であった。乗客は結局先ほど降りた私と一緒におりた老夫婦
だけであった。知床斜里でまとまった客が下車。中斜里も同様に数人が下車していく。
ただし、南斜里から乗客に変化はなし。緑でようやく乗客が何人か乗り込んでくる。
ここで14分ほど停車する。前回乗車した臨時列車として運行されている「足湯めぐり号」が
先に発車してから、しばらくしてこちらも発車する。Iphoneはここでは電波は圏外。
こと釧網本線では圏外になる区間が長い。緑からは上り勾配が続いているのだろうか、
ケーブルカーのようにゆっくりとしたスピードで走っていく。トンネルを抜けると本来の
スピードに戻る。川湯温泉は残念ながらすぐに発車するので足湯はできなかった。

摩周。ここでは22分停車する。網走行きの列車と交換する関係だが、これだけ停車すれば
ちょっとの間だが、足湯を楽しむことができる。生憎の雨でも何人かが足を入れている。
見た目とは違い、足湯はこんなに気持ちいいものだと前回の旅で教えられたからだ。
川湯温泉よりはぬるいので、ずっと浸かっていたいが、そうもいかない。
網走行きの列車がやってくれば、こちらが発車する。まだ雨は降り続けている。

磯分内。乗客なし。標茶では学校帰りの制服姿が何人か乗り込んできた。
車内に少々の生活臭が漂ってくる。五十石。乗客なし。茅沼でもなし。丹頂もなし。
塘路で先ほどの学生さんが2人ほど下車していく。網走方面の列車と交換して発車する。
細岡。相変わらず、Iphoneは圏外である。隣のクロスシートでは窓側に座って携帯電話を
いじる女性が窓に反射して映っている。そのうちに3本の指で彼氏をダウンロードする事が
できるに違いない。火葬されるときは棺には花ではなく、携帯電話のモックアップで
埋めつくされる時代になるのかもしれないという妄想をしてしまった。

釧路湿原を出ると、Iphoneの電波が戻りつつある。遠矢で学生さんが数人降りていく。
すっかりと夜になった東釧路でも学生さんが殆ど降りていく。反対に停まっているのは
根室行きだろうか。そして終点釧路。ここでは次の列車まで約1時間待ちとなる。

計算していなかったが、釧路が舞台になっているという恋愛漫画の原画展が本来は17時まで
だが、今日は19時までやっているそうなので、時間つぶしに覗いてみることにした。
恋愛漫画を見たことはないので、よくは分からないが、少女が夢見る恋愛漫画らしい。
展示された数々の原画をゆっくりと見たが、釧路駅の1番ホームが出てくるのが何とか
分かるだけで、あとは地元でこの作品を読んでいるでないと共感できないだろう。
「僕等がいた」というタイトルのポスターが至るところで見かけたので、釧路駅が・・
というところで覗いてみたのが正直な理由だろう。全く不純な動機で申し訳ない。

19:33発の新得行きは1両編成。学生専用かと思われるくらい、学生さんしか乗っていない。
学校帰りの学生さんが、家路へ向かう途中の車内は仲間と談笑する大事な時間だろう。
特に列車本数が限られているような地域なら尚更である。どこかでカップラーメンを
啜るような音が聞こえたとしても気のせいということにしておく。
扉で仕切られたデッキもジャージと制服姿の女の子同士が談笑する秘密の空間となる。
扉越しに見る限り、誰にも聞かれたくない本音トークが繰り広げられているに違いない。

新富士。仕事帰りのサラリーマン風と学生さんが数人降りていく。
ジャージ姿のメガネの男の子がうろうろと前へ行ったり、後ろへ行ったりと落ち着かない。
列車の交換のために5分停車。ホームの反対側を釧路方面の特急列車が通過していった。

左斜め向かいのボックスシートでは制服の女の子が一人、無防備にも向かいの席に足を
投げ出した格好で鞄を枕代わりに気持ちよさそうに居眠りしている。
現在車両は、学校帰りの学生さん専用、走る談話室となっている模様。

新大楽毛。乗降客はなし。後方のボックスシートは男の子と女の子たちが一同にじゃれ合い
背中越しに楽しそうな空気を感じる。某掲示板だとこの場合「リア充爆発しろ」か。
乗ってくる客は学生さんだけだ。見事に私だけが客としては浮いている。
青春18きっぷではないシーズンは、学生さんばかりのまさに背中越しに感じているような
青春時間が日々、垂れ流しになっているのだろう。
列車を通じて、釧路の夜の日常を覗いているのは私にとっては非日常で何だか楽しい。

釧路発の青春列車はボックスシートの至るところで、リアル「僕らがいた」状態(笑)
あの恋愛漫画のコマの中に一人、放り込まれているような変な気分でもある。

庶路。学生さんが2人降りていく。クロスシートに座る友達にバイバイと手を振りながら
デッキの下に消えていった。
西庶路。夜のホームに学生さんと仕事帰りの中年男性が降りていく。
車内から徐々に青春の空気が抜けていく。夜の列車は静かになっていく。
左斜め向かいの女の子はようやく目が覚めたようだ。目が覚めるやいなや、早くここから
脱出する事を念じているかのように、両手で携帯電話で音楽を聴いている。

列車という空間でどうしたらよいか、時間の使い方は下手に見える。
携帯電話がないと、きっと彼らは急に踊りだすかもしれない。
村上龍著「5分後の世界」のロシアンマンボの後に、ヒュウガウィルスと同じく
倒れてしまうかもしれない。

白糖。学生さんが数人降りていく。待合室にいるジャージ女とボックスシートに座る
太目のジャージ女がガラス越しにお互いに手を振り合う光景。後方のデッキを振り返ると
高校生らしき男の子と女の子が微妙な距離を保って、会話しているようだ。
その距離は友達だがまだ彼氏彼女ではない、ということを示しているのか。

宮脇俊三氏よろしく、地元の日常を運ぶ列車にぼーぅと身を委ねるのは好きだ。
乗ったことがない路線で、こうした日常風景に出会える事は楽しみの一つである。
利用するのが主に地元の人間である以上、路線を特徴付けるのは日常の空気である。
このまま知らない日常に逃げ込みたいと思う瞬間が時折、やって来る。

後ろのボックスシートは部活帰りの集団らしい。
音別でここまで続いてきた青春列車は打ち切りとなり、完全に静かな車内となる。
ホームへ降りていった彼らの野郎どもは一緒の帰り道で女の子に告白するチャンスを
女の子たちはそんな事はお構いなしに、他の男の子が自分のことをどう思っているのか
何となく探りながら、だらだらと話しているのかもしれない。

相変わらず、雨は降っている。私を含めて野郎は4人ほど。
尺別。乗降客なし。運転士の吹く笛の音だけが夜のホームに響くのみだ。
直別も厚内も同様に誰も降りず、乗ってはこない。上厚内で3分停車。反対側を特急列車が
通過すると発車する。Iphoneはほぼ電波は圏外が続いている。
暗がりの中を、いつの間にか常豊信号所を過ぎたらしい。車窓を注意深く見ていたが、
駅名票のような看板を見つけることは出来なかった。

浦幌。昼間とは違い、誰も乗ってこない。半袖では少々肌寒くなってくる。
昼間の暑さとは対照的な夜の北海道ではやはり、上着を持ってきた正解だったようだ。
利別。浦幌行きの普通列車と交換。先ほどの浦幌行きは空気輸送状態だったが、
今交換した浦幌行きは2.3人ほどの客の姿があった。

幕別。背の低いシルクハットのようなものを被ったクラシックな格好の若い女性が一人。
駅前では学生さんと思しき若い連中がたむろしていた。次は帯広。今夜の宿泊地である。

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