2010年7月6日火曜日

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【周遊きっぷの旅 入門編】「周遊きっぷ」って何?





2010年3月13日、JRダイヤ改正。
ニュースでは北陸方面を結んでいた寝台特急や急行廃止を取り上げていたが
ニュースの裏でひっそりと廃止になったものがもう一つある。

「ぐるり北海道フリーきっぷ」である。
往復に新幹線+特急列車、あるいは北斗星のB寝台、Bソロが選べ、しかもJR北海道全線の
特急列車は指定席で乗り放題、5日間有効というかなり使えるきっぷであった。
時期によって値段が異なるが、一番安い時期で35000円台。

行きに朝一の新幹線で北海道に向かい、帰りは北斗星にすれば
1日目の午後から、5日目の晩まで4日半をJR北海道全線の特急列車まで追加料金なしで
鉄道の旅を満喫することができた。
有効期限は5日間だが、途中下車さえしなければ継続して券面の最終駅まで乗車できる
という「継続乗車船」制度が適用されるため、5日目の晩に出発する北斗星で6日目の朝
下車するまでは有効だからだ。

それが亡き今、宮脇俊三よろしく真面目に北海道までの往復乗車券を買おうものなら
それだけで私の財政は火を噴くことは間違いない。時刻表のページを開くたびに
気になっていたきっぷ、「周遊きっぷ」を使ってみることにしたのである。

JR時刻表のピンク色のページに詳細が載っており、長文の内容に敷居が高そうな気が
してくるが、よく読んでみればそれほど難しくはない。(かもしれない・・・)

周遊きっぷは「ゆき券」「ゾーン券」「かえり券」の3つで構成される。
「ぐるり北海道フリーきっぷ」の乗り放題区間に相当するのが、周遊ゾーンと呼ばれ
北海道ゾーンの他に、東京や四国などいくつかの周遊ゾーンが設定されている。
「ゆき券」「かえり券」はこの周遊ゾーンまでを往復する乗車券であり、
周遊きっぷを購入するためには次のいつくかの条件を満たさないといけない。
これらの条件が気軽に購入できない要素になっているようだ。


★購入する上での基本条件★
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●周遊きっぷは「ゆき券」「ゾーン券」「かえり券」でセット販売されるため
 「ゾーン券」だけを購入することはできない。また周遊ゾーン内の駅では
 同じ周遊ゾーンの周遊きっぷは購入できない。

【例】北海道ゾーンの周遊きっぷは北海道ゾーン内の駅では購入できない

●1つの周遊きっぷに組み込める周遊ゾーンは1つだけ。
 複数の周遊ゾーンは組み込めない

【NGの例】ゆき券→ゾーン券(北海道ゾーン)→ゾーン券(札幌・道南ゾーン)→かえり券

●往路復路ともにそれぞれ営業キロが201km以上であること
 ただし、北海道、九州、四国の各ゾーンについてはソーンまでの片道に航空機が利用可。
 この場合ももう一方の片道の営業キロが201kmであること
 航空機を利用する場合は、空港までのJR運賃は別に払う必要がある

●ゆき券→ゾーン券→かえり券の順で使わないといけないため、
 往復乗車券としては購入できない。
 ゆき券、かえり券はそれぞれ片道乗車券の扱いとなる

●周遊ゾーンには出入口駅がいくつか指定されており、出入口駅は同じでも構わない。
 ゆき券の最終駅、かえり券の出発駅は必ずこれらの出入口駅であること

【例】北海道ゾーンの場合は出入口駅が中小国である
   ゆき券は出発駅→中小国、かえり券は中小国→帰着駅となる

●ゆき券の出発駅とかえり券の帰着駅は同じであること
 出発駅が特定都区市内の駅の場合は、帰着駅も同じ特定都区市内であること
 特定都区市内なら出発駅と帰着駅は同じでなくても構わない。

【例】上記の例でゆき券の出発駅が小田原駅なら、かえり券の帰着駅も小田原駅となる。
【例】長津田が出発駅の場合。長津田は横浜市内の駅なので、かえり券では
   長津田ではなく、横浜で下車することもできる。もちろん横浜市内は
   途中下車はできない。旅の最後に横浜市内を途中下車せずに一筆書きで
   列車に乗りながら自分の最寄駅で下車・・なんてことが可能である。

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と、この6つの条件が周遊きっぷを購入する上での基本となる。
周遊ゾーンまでの往復が全て普通列車だけなら、上の6つだけ知っていればよいが
特急列車、急行列車を使う場合はさらに次の事も知っておく必要がある。
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■ゆき券、かえり券はそれぞれ片道乗車券として有効なため、特急列車や急行列車に
 乗る場合、特急料金、急行料金、指定席なら指定席料金が別途必要
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北海道ゾーンに行く場合はおそらく、夜行急行の「はまなす」にお世話になる。
「はまなす」は青森から中小国を通過して北海道ゾーンの札幌まで結んでいる。
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■ゾーンの出入口駅をまたがる特急列車、急行列車の「自由席」に乗る場合は
 それぞれ乗車駅(下車駅)~ソーンの出入口駅までの特急券、急行券が必要
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【例】「はまなす」で青森から札幌へ行く場合。北海道ゾーンのゾーン券は
   出入口駅の中小国から有効になるため、乗車駅である青森~中小国までの
   急行券が必要になる。
   

では、急行「はまなす」の指定席で青森から札幌へ行く場合はどうなるか?
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■ゾーンの出入口駅をまたがる特急列車、急行列車の「指定席」に乗る場合は
 それぞれ乗車駅(下車駅)~ソーンの出入口駅までの指定席特急券、指定席急行券が必要
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この点が今回、実際に使ってようやく理解できた落とし穴であった。
「はまなす」は急行列車。その指定席に乗車するためには次の料金の合計が必要になる。

・普通運賃
・急行料金
・指定席料金

周遊きっぷのゾーン券は特急、急行の自由席まで乗車が可能である。
だから、指定席料金を追加すれば指定席に乗車できると勘違いしていた。
指定席に乗る場合は、ゾーン券は普通乗車券、つまり普通運賃のみの効力となり、
この「はまなす」の場合、青森から札幌までの急行料金と指定席料金が別途必要になる。
もちろんB寝台なら、これに寝台料金が追加で必要になる。

今回は横浜線の町田を出発駅として、ゆき券は町田→中小国。かえり券は中小国→町田。
北海道ゾーンの5日間用、そして往復に新潟~青森までの特急列車の指定席を使うので
それらをすべて合計すると4万ちょっとになった。

コストパフォーマンスでは同じ5日間を使う場合で比較したら
北海道内のフリーエリアも特急列車の指定席に乗り放題であった「ぐるり~」が
いかに優れているかは明らかである。

今回購入したゆき券、かえり券は、それぞれ6日間有効である。
ゾーン券は北海道ゾーン5日間用。旅行可能な最大日数は6日+6日+5日=最大17日
・・・・ではない。
ゾーン券の開始日はゆき券の有効期限内、かえり券の開始日はソーン券の有効期限内
という条件があるため、ゆき券とゾーン券、ソーン券とかえり券がそれぞれ最低1日
重なる必要があるので、重なった2日を引いて最大15日間の旅行が可能になる。


同じ5日間で北海道を往復するだけなら、確かに割高なきっぷだが
「ぐるり~」と違って、北海道ゾーン5日間用なら5日間丸々、北海道内の特急列車の
自由席に乗り放題である。また、そのゾーンまでも普通乗車券であるため
気の向くままに途中下車の旅が可能である。しかも周遊きっぷの場合は、
ゆき券、かえり券共に東海道新幹線以外なら、それぞれ20%割引きになる。
(東海道新幹線だけは5%引き。JR東海の意地としか思えない。)

普通運賃が20%割引と言われても、ピンと来ないかもしれない。
たとえば、今回の町田→中小国なら、片道の正規運賃なら1万円少しほどするが、
この20%割引きということで、8700円ほどになる。

1週間や10日間などの長期の旅行を考えた時、北海道もそこに行くまでの途中の旅も
どちらもなるべく費用を押さえて堪能したいという場合には「ぐるり~」では逆に
使いづらくなってしまうのだ。

コストパフォーマンス的に「ぐるり~」の廃止を惜しむ声は多い。
でも考え方によっては廃止によって、今までよく知らなかった周遊きっぷという
新たなきっぷに触れる機会を得られた。値段が「ぐるり~」の2倍も3倍もするものなら
流石に避けてしまうが、「ぐるり~」より僅かに高い値段で、それまで計5日間
(帰りに寝台特急を使えば6日間だが)しか旅ができなかったものが、
特急列車などの指定席を我慢しても、最大15日間旅行ができると考えれば、
交通費だけみれば安いのではないだろうか。

あと、お節介ながら。
周遊ゾーンまでの往復は鉄道のみの利用で旅行を計画した方がいい。
飛行機が使えるが、片道だけだし、航空券も別に用意しておく必要があるため、
周遊きっぷを扱っている旅行センターに行く必要がある。
周遊きっぷを購入する前に、航空券と一緒に購入できる旅行センターを調べておく
手間が増えるからだ。また、周遊きっぷはJRバスが利用できない。

そんな諸々の条件があるこのきっぷを使って、北海道への6日間の旅に出たのである。

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