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再び都電カフェに訪れた。
初めて訪れたのは夕方。
そこで週末は19時以降は夜カフェとして営業している事を知る。
昼とはまた違った表情が見られるだろう。夜勤明けで丁度土曜日。
その足で訪れる事にしたのである。その前に見ておきたいものがある。
京葉線だけに1編成のみ走っているE331系である。
小田急のロマンスカーを真似たのか、何と連接台車だという。
有楽町のいつもの店で昼ご飯を食べてから・・・の前に是非見ておきたい映画がある。
ジブリの最新作であり、本日17日に公開された「借りぐらしのアリエッティー」である。
本日公開という理由もあるが、久しぶりに映画でもという気分だった。
大人一枚1800円は少々高いが、大スクリーンと大音響で見るのは映画に勝るものはない。
全く知らない人達と隣同士で同じ時間を共有する感覚が列車旅の楽しさに
通ずるものがあるような気がする。
ここでネタバレする訳にはいかない。
ヒロインのアリエッティーはかわいいし、話の展開は真新しいものではない。
今までのジブリ作品を一通り見てきた人はきっと既視感に襲われる(笑)
個人的には通して強く感じたのはその点だった。
アリエッティーが髪を纏めるのに使った洗濯バサミに3000円近くは高いような・・・
映画ポスターも千と千尋の神隠しとハウルの動く城だけしか扱っていなかった。
舞台挨拶のあったこの東宝スカラ座がこんな感じだから他ではポスターすらないだろう。
映画から受け取ったメッセージは現代の人間が他人と関わることに飽和や恐怖の
ようなものを感じてきているのではないか、という事だ。
小人は異世界の人間と捉えてもよいだろう。
異星人をテーマにした様な昔の映画ではなく、もっと身近なもの。
それが人間である。
人間に見られない様にその人間から必要なものを借りて暮らすという設定には
人見知りをする様な直接話しかける事を苦手にしている私のような“オンライン化人間”に
何処か重なった様に思えた・・・
と少しネタバレ感がしないでもない(笑) 気まぐれで買った小説の読後感のような
スッキリしたようなしないそんな気分で東京駅に向かう。
E331系は事前の下調べの通り、12:25発の各停 蘇我行きだった。
同業者は何名かいらっしゃった。
発車の数分前に目的の列車は3番線に入線してきた。
連接台車で一車両が短いとはいえ、14両となると壮観である。
これが高速で通過したらさぞ、かっこいいだろうと想像しながら。
東京のロマンスカーを期待しながら、連接台車の上に位置する席に座って走行音を
聴いていたが、ロマンスカーのようなリズムはほんの少しだけだった。
やはり本家には勝てないようだ(笑) 運転席のすぐ後ろから正面を見ていると、
正面には入道雲が横に広がっている。観覧車が右手に見える頃には夢の国。
もちろん今の私には用はない。
終点の蘇我まで乗っていくつもりだったが、千葉みなとで下車。
横に走り去るモノレールが気になったからだ。
路線は途中から2系統に別れているが、距離が長い方は往復で1時間位。
時間的には間に合いそうだ。
2両編成の車内は所々に空席が目立つ。
大船と湘南江の島を結ぶ湘南モノレールのようなスリルはないが、
スピードを出している割にはあまり揺れを感じない。
家々からは少し離れたところを走るので、江ノ電の軒スレスレを走るスリルもない(笑)
終点の千城台を下車。
列車旅なら駅前観光をしたいところだが、すぐに折り返しの列車に乗りこむ。
車窓からの風景よりも後方に流れる風景の方がちょっと楽しい。
モノレールとその下にJRの線路という風景もちょっと面白い。
一旦東京に戻り、京浜東北線で上野へ。
京成上野からこちらも新規開業した成田スカイアクセスに乗ろうと思ったが、
すでに満席なのか、その次のイブニングライナーの席の販売しか無かった。
本日から印旛日本医大から先、成田空港まで線路が開通し、営業開始となったのである。
イブニングライナーの車両は成田スカイアクセスに使われるものだったので、
車内も白く清潔感がある。これに乗って八千代台で下車。上野から42分であった。
待っていた快速に乗り換えて、2駅。
夜の勝田台は仕事帰りの人たちを多く見かける。
その流れに添いながら、あの都電を目指す。
訪れている客達が身内の、女子高生のような集まりと一抹の不安はあったが、
杞憂であった。
確かに外のテラス席は店の噂を聞きつけて来ました、という感じの若い女性たちの
黄色い声が聞こえて来たが、対照的に車内は静かだった。
例の大竹しのぶ似が店員だった。
その若い女性店員が教えてくれた通り、電車の窓から覗くと正面向こうに花火が見えた。
そばにいた若き男性店員によればこうして見えるのは初めての事らしい。
どうやら幸運な来店タイミングだったようである。
しかし終わりに近かったようで、外で撮影しようと携帯電話を向けたら
もう打ち上げる気配も無くなってしまったようだ。
店員の話ではこの都電カフェも来年9月以降の営業予定の目処が立ってないそうだ。
来年の今頃はもしかしたら廃線の如く、消えているかもしれない。
いつでも行ける店ではないのだ。
それは例の女性店員との会話でも感じた事である。
店員は元々お客とし、この都電カフェに来たそうだ。
本当のコーヒーを出してくれる場所を提供したい、そんな思いをぶつけられる場所として
店員になったそうである。
そして訪れるお客を強引にではなく、客自らがこのコーヒーを中心とする世界に少しでも多く
魅せられないかと探求した結果、ゆっくりと時間を過ごしてもらう工夫から始めていこうと。
コーヒーへの貪欲な知識欲も話し方から感じられた。
注文したチャイは前に別の店で飲んだよりとても濃い。
その感想を話すと、チャイはインドでは紅茶の意味だそうだ。
ミルクなどに混ぜたのがチャイではないのである。
コーヒー同様に豆と豆を混ぜてブレンドしたり、ミルクを入れたりして好みに合わせて味を
楽しむ点は一緒との事。ただ、その女性店員の話で強く印象に残ったのはコーヒーは
何も入れずとも美味しいと思えるものを出すべきというこの店員になった心意気と
その見つめてくる眼差しだった。
店員曰く、コーヒーマニアがいつでも散歩の途中に寄りたくなるような
マニアがマニアの為に作ったような店だと表現していたが、店がオリジナリティで客に
訴えかけるのは本来の商売には不可欠のはずであり、仕事のやりがいや誇りになる。
そんな店は探そうとしたらなかなか見つからないだろう。
本当に好きな客が訪れて欲しいというその心意気は都電の車両を使った珍しいカフェだと
外から見ただけではこの店を知った事にはならないのだろう。
ゆっくりと時間に身を任せてみようと我々客に都電が静かに語りかけているように思えた。
2時間ほどまったりしている間に客は何度か入れ替わったが、どの客もゆっくり時間を
過ごす事があまり得意ではないようである。
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