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JR東海のあのCMといえば、わかるのだろうか。
先週丹沢に登りにいったという友人が大山へ行ってみたいという。
そのメールをもらったのは前日の夜。横浜周辺をウォーキングしていた時
そろそろ引き上げようと近くの駅を歩いていたときにそのメールを受信した。
大山へ登るルートはいくつかあるらしいが、私は生まれてから13年ほど伊勢原に
住んでいたため、こま参道と呼ばれるケーブルカー駅に向かう階段と大山ケーブルカーで
阿夫利(あふり)神社下社へ向かうルートしか知らなかった。
阿夫利神社へ登る階段そばであの焼き団子はまだ食べられるだろうか?
今回は山登りを楽しもうということで、私自信の体力も考慮し、ヤビツ峠から
大山山頂を目指し、そしてケーブルカーで降りて行こうというルートになった。
朝9時前、秦野駅北口のヤビツ峠行きのバス停は普段のほとんど人がいないのとは
対照的に行列ができている。普段の便数では裁ききれないのだろう、通常の8時55分発
の前にヤビツ峠までノンストップの臨時列・・じゃなかったバスが到着した。
運賃は460円なり。満員電車のように混んではいるが、楽しそうな雰囲気が流れている。
ヤビツ峠までを神奈川中央交通、略称、神奈中の黄色いベースのバスは秦野商店街を
横切り、ゆっくりとしたペースで坂をしばらく続く坂を上っていく。
しばらく走っていると山道らしいカーブばかりの道に入っていく。ここは自転車乗りにも
有名なコースらしいが、自転車を飛ばしていく姿は見当たらなかった。
本日は幸いにも晴れたが、丹沢の頂に雪が残っていることから恐らくこちらも雪が残って
いるか、そうでなくともぬかるみを歩くことになるのは間違いなさそうである。
ということで、親父が今はあまり使っていないらしい登山靴を拝借してきた按配である。
バス停のすぐそばに登山口となる階段が伸びているが、早速ぬかるんでいる。
泥除けのスパッツの出番らしい。用意しておいたスパッツで装備を固め、いざスタート。
始めは友人と一緒のペースで歩いたつもりだったが、しゃべりながら登っていく余裕も
ほんの束の間、友人の姿が見えなくなったのにそれほど時間がかからなかった。
いやはや、思っていたよりも体力が落ちていたらしい。ウォーキングも最初は6時間も
歩けば悲鳴を上げていた足腰も10時間くらいまでは歩ける体力がついていたので、
体力に自信はあったつもりだったが、山ではそんな虚勢はすぐに暴かれるのである。
すでに息が上がっている。こんなときは急いではいけない。
息が整ってから、また先ほどのペースで登ればよい。
久々に登山というのもあるが、前日の十分ではない睡眠も響いているだろう。
私の体力では、少なくとも8時間は寝ておかないとベストな状態にはならないようだ。
登山をする、というのは単に山頂を目指して登ることではない。
ベストコンディションで臨む必要がある。
体力に見合ったコース計画、予想される登山道の状態(今回のような雪が残っている、
ぬかるんでいる)に対する装備の準備、十分な睡眠時間、そして当日も普段歩いている
平地とは全く異なる場所を歩いていることを忘れてはいけない。何度も登山をしている
者ならすでに承知の通り、歩きやすいように整備された登山道はあまりない。
まれに階段状に丸太や角材が横たえている場所があるが、それは登山者のためではなく、
多くの登山者が歩くことで、土が削られたり、荒らされたりして木の根などが痛むのを
最小限に食い止めるためにある。そうした場所や一部の平坦な場所以外は岩の階段だ。
階段はもちろん等間隔な段になどなっていない。天然の階段は登るときも下りるときも
最新の注意を払わないといけない。全身の体力が要求されるだけでなく、大げさに言えば
頭脳戦でもあるのだ。山の神様は山を甘く見る者に容赦しないことを忘れてはいけない。
登山道は登りやすいように山の神様につくって頂いたという気持ち、登らせてもらっている
という気持ちを忘れてはいけないと思う。
かくして遅すぎる私を友人は優しく待っていてくれた。またも息があがっている。
しばしの休憩。でもあまり長く休憩すると登り続けるのが苦しくなる。
自分に適度な水分補給と休憩は何度も登山を経験しないと習得できないだろう。
思わぬ罠にも気をつけたい。
最初のうちは意識しないけれども、1時間、2時間と歩き続けるうちに頂上のことが
気になりだす。体力も多少なりとも奪われ、思考にも余裕がなくなってくる頃
人間の勘の頼りなさを痛感する。つまり、あの坂を登りきったら頂上に違いないから
頑張ろう、と勢いこんでしまうと裏切られた時の絶望感に囚われるのだ。
ペースを乱さんと山はいつでも魔の手を差し出してくる。
その魔の手に掴らないように、友人と声を掛け合いながら先を進んでいく。
それまでは木の幹が不自然に真っ直ぐな明らかに人工林とわかる木々に視界を
覆われていたが、開けたところで隣の山々が顔を覗かせる。
その風景はそれまでの疲れを一瞬とも忘れさせてくれる。不思議なものだ。
山々を眺めているといると、山頂まで頑張ってみるかという気持ちになる。
その後もぜいぜいと息をあげながら、それまでは初めて登る道だと思っていたが
数年前の記憶が甦った。大山阿夫利神社本社(ケーブルカーで来れるの下社。この
下社の横にある急な階段を延々と登って山頂へというコースもある)の屋根と
手前にある小さな鳥居を見た瞬間に、親父と登ったことがあるなと思った。
確か上のほうは雨が降っていて、ペースも今回よりもっと早かった気がする。
かくして山頂に到着した。所要時間は予定より30分ほど遅い2時間。
行程では表参道と呼ばれる道から下社まで向かうつもりで再び歩き出しのだが
道を間違えたらしく、少し遠回りすることになってしまった。
下社に着けるのかと不安を抱きつつも、途中の標識を見つけ安心する。
二重滝と呼ばれる滝とその右手に小さな社、そして幾本の赤い旗が見えてくる。
webで調べてみると、この社はケーブルカーにある下社、山頂にある本社とともに
阿夫利神社の分社のような存在らしく、別名雨降(あふり)神社とも呼ばれているように
雨を司る神様として昔から特に農家、また江の島からも大山が見えることからも
漁業からの信仰を集めていたようである。
その手前にかかるアーチ橋は二重滝橋と呼ばれ、ちょっと立ち止まって撮影したくなる。
さらに下りていくと、緑が多い中で桜と思われる桃色の木が目に飛び込んできた。
周囲との緑とのインパクトがよい。ここでも思わず立ち止まってしまった。
単調な下山かなという予想とは裏腹に、変化に富んだ風景で楽しめた。
右手の林の隙間から停車している赤い車体のケーブルカーが見えてくれば、焼き団子
ではなく下社はもうすぐである。
店に入ると時計は14時を指していた。ここまでも2時間。4時間近くは歩いたことになる。
体を動かした後に食べる月見そばと焼きおにぎりは格別である。
だがここであまり食べてしまうと、後半のコースがきつくなってしまう。
焼き団子は後半のコースが終わって戻ってから食べることを近い、店を後にする。
店はケーブルカーの時間に合わせているようで、17時には閉店するそうだ。
つまり16時くらいにはこの店に戻っていないと焼き団子が食べられなくなってしまう。
焼き団子を励みに後半のコースに挑むことになった。
浅間山へ向かう道はそのまま進んでいけば弘法山に辿り着く。体力に余裕があれば、
また明日も休みであればそうした冒険をしてみるのも楽しいかもしれない。
でも帰る前に私はどうしても焼き団子が食べたい。友人は明日があるから早く帰りたい。
両者の利害関係が一致したというのも、今回のコースとした要因でもある。
浅間山には何か山頂のような目印があるのかと思ったが、知らぬ間に通り過ぎたようだ。
アンテナのようなものがいくつか付いた白い塔は地図でみるとNTT中継局らしい。
浅間山はそのもう少し手前に位置している。何か肩透かしを食らったような面持ちで
その白い塔から来た道を折り返すことにしたのである。
急な登り坂と先ほどやってきた道の分かれ道。
友人は表参道経由で下社を目指したいという。私もこの急な坂を登ってみてから
判断しようと、友人のペースに遅れないように必死に登っていく。
だが瞬く間に友人に遅れ、ぜいぜいと息があがってしまっている。
なんとか苦しい登り坂を越え、表参道へ向かう山頂方面の道とケーブルカー駅のある
下社へ向かう分かれ道に出た。体力を考えると、友人のペースでないかぎり
焼き団子は食べられそうにないなと判断し、迷わず焼き団子、じゃなかった下社方面の
道に放免してもらうことにした。友人は表参道方面の道を登っていくと瞬く間にその
姿は見えなくなってしまった。
こちらは歩いて30分ほど。先ほど来た道を再び下りてくる形だがそれほど苦もなく下山。
歩いているうちにほんの少しだけ、体が登山仕様になったのかもしれない。
下社から東京、相模湾方面まで一望できる景色はしばらく見ていて飽きない。
冬場なら空気が澄んでもっとはっきりと見えるのだろうが、白く薄く霞む向こうに
相模湾に浮かぶ江の島の島影を見ることができた。
景色を堪能したら、階段下にある先ほどの茶店で楽しみにしていた焼き団子を頂こう。
ついでにビールと、それから煮込みおでんもよいですな。
食べ始めている丁度友人が店に入ってきた。もう少し時間がかかるのかと思ったが
体のなまり始めた私から見たら脅威の登山ペース。
次のケーブルカーは16時20分。最終の2本前だったようで、先ほどの分かれ道で
友人と一緒に登っていたら焼き団子どころか、帰りも辛くなるところであった。
もう1本買った焼き団子を食べながら、ケーブルカーへと急ぐ我々。
450円は高い気がするが、大山に登るならとこちらも楽しみにしていたので外せない。
高尾山のケーブルカーよりは乗車時間が短いせいか乗り足りないが、久々のケーブルカー
であったが、変わったのは駅名くらいで何かほっとした。
バス停へ向かう途中のこま参道もその階段の両側から挟むようにして構える宿屋や
豆腐料理屋、そしてお土産屋の風景も記憶のままで変わっていなかった。
バスもケーブルカーにあわせているらしい。我々が乗り込んでしばらくすると
バスはゆっくりと大山を背に伊勢原へと後にしたのである。
友人とは伊勢原駅で別れた。18時には自宅でゆっくりとしたいそうだ。
私はもう一つの楽しみ、小田急線で鶴巻温泉に下車して温泉に浸かることにした。
マンションが立って風景が少し変わってしまったが、駅から2分歩いたところにある
弘法の里湯でゆっくりと湯船につかった。疲れが溶けていく感じがたまらない。
湯上りのコーヒー牛乳もたまらない。そしてここでもビールとカレーうどんを注文。
秦野からヤビツ峠、そして大山、焼き団子、締めは鶴巻温泉。今日はすぐに眠れそうだ。
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