つくもノヲ”X="1≠ 514
【北海道&東日本パスの旅 2日目】リアル「電車でGO!」
(高崎)
1:13発
↓ 上越線~信越本線 8763M
快速 ムーンライトえちご
4:51着
新潟
6:01発
↓ 白新線~羽越本線 1621M
6:36着
新発田
6:45発
↓ 羽越本線 823D
7:08着
坂町
7:17発
↓ 米坂線 1128D
9:56着
米沢
10:42発
↓ 奥羽本線 435M
11:27着
山形
11:29発
↓ 奥羽本線 1431M
12:33着
新庄
12:53発
↓ 奥羽本線 2443M
15:22着
秋田
15:28発
↓ 奥羽本線 1655M
17:15着
大館
17:56発
↓ 奥羽本線 661M
19:50着
青森
20:06発
↓ 津軽線~海峡線~江差線
特急 スーパー白鳥25号
21:54着
函館
水上で運転停車。
線路が白い。天気予報の通り雪が降ったらしい。
越後湯沢を過ぎてから歯磨きと髭剃り。座席に戻ろうかと思ったが、
少々息苦しいのでそのまましばらくデッキの窓から車内の明りで
ぼんやりと見える白い線路を眺めてみる。2本の青い列車とすれ違う。
おそらく「あけぼの」と「北陸」だろう。
座席に戻っても相変わらず眠れないが、終点新潟に近づくにつれて
ようやく眠くなってくる始末。
眠気を覚ますつもりだったが、朝風呂作戦は失敗に終わった。
いくつかあるホテルのひとつで訪ねてみたが、早朝の新潟駅前では
ホテルはもちろんのこと、やっているところはないとピシャリ。
本当なのかと少し歩き回ってみたが、言われたとおりで
カプセルホテルすらないようである。
少しでも清潔を保つべく、トイレで下着は着替えることにする。
5:45にシャッターが開いたニューデイズで、朝ごはんとして
お茶、おにぎり、パンを買い、ホームに止まっていた新発田行きの
ロングシートに座る。2日目はなるべくロングシートを避けるルート
で青森へ向かうことを考えた。うまい具合に新発田で乗り換えできる
村上方面行きの列車番号の末尾に「D」。気動車なのである。
気動車ということは、クロスシートがあるということだ。
発車を待つ新発田行きの車内では私と同業の方が2名座っておられた。
その雰囲気ですぐに明らかなのだが、乗り換える気動車でも
一緒かもしれない。豊栄から乗り込み、向かいのロングシートに
座ったスポーツ刈りの3人。いずれも細い体型だが、もっている鞄から
野球部の早朝練習だろうか。お互い等間隔に座り、静かに自分の世界に
入りだした。ゲームと音楽、瞑想(寝たふり)と音楽、ケータイと音楽。
首都圏近郊の騒がしい雰囲気がないのがせめてもの救い。
新発田では酒田行きがやって来るまでホームで待つ。
村上よりの架線柱にとまっていた大量の黒い軍団に一瞥をくれ、
やってきた2両編成の気動車に乗り込む。クロスシートとロングシートが
混在する車内。車両だけ見ると、八高線に乗っているような気分だ。
窓の外、田んぼには「白い絨毯」が敷かれている。
発車してまもなくして車内検札がはじまった。車掌に例のパスを差し出し
ハンコを押してもらう。それまで夜が支配して空が列車が進むごとに
徐々に明るさを取り戻してきている。雲に覆われて青空とはいかないが。
中条駅。
雪が降っている。秋田に着く頃にはもっと降っているのかもしれない。
平木田で母親と女の子が降りていく。ホームも白い。
坂町では今回初乗車路線となる米坂線。
車両だけ見ると先ほど同様に八高線か水郡線に乗りに行く気分である。
それぞれの路線には特徴ある車両が走っているべきという自分なりの
価値観で見てしまうので、それこそ米坂線に東北本線などで跋扈する
701系のあのロングシート車両が走っていたら気分は幻滅だろう。
ニューデイズで買っておいたパンとおにぎりで旅2日目の侘しい朝ごはん。
朝ごはんのメニューはともかく、ボックスシートでゆっくりと時間を
かけて雪見をするのは贅沢なことかもしれない。
駅弁を朝にまで適用してしまうと、予算オーバーしてしまう。
ここにきて辺りはすっかりと明け、手前の道路に目を瞑れば
車窓からは白と黒の世界がしばらく続く。米坂線は山陰本線同様に
雪の季節に来るべきだろう。近くで一眼レフのシャッター音が聞こえる。
越後大島を出てしばらくすると、しばらく朝日に向かって列車は走る。
雪が降っているためか、正面に見えた太陽は眠そうにぼんやりしている。
越後片貝を出ると、川面が鏡のごとく頂きが白くなった山を写す。
小国に7分停車。
白くなったホームに降り、小さな雪合戦に講じる父親とその男の子。
他の交通機関ではまず見ることはないだろう束の間の風景。
只見線のように、こちらでは「越後~」で始まる駅名が続いたあと
「羽前~」で始まる駅名が飛び飛びで登場する。
伊佐領でふと携帯電話を見ると圏外。ずっと圏外ならいいのに。
駅舎の屋根を見ると氷柱。氷点下まで気温が下がったようだ。
白いスポンジケーキのように積み上がった雪を見ていると
意識がなくなりそうになる。未乗路線故に眠気との戦いである。
いつものノートにメモ書きで、意識を保つ作戦を敢行するのである。
気動車は勾配が多いためか、時折エンジンのうなりをあげ、
トンネルに入る度に眠そうな汽笛を鳴らす。
羽前椿で12分停車。
小国でも降っていたが、こちらはもう少し降りが強い。
でも見上げた空は地元で見たことのあるぼんやりとした白一面でなく
白い雲の隙間から淡い青空が見えている。
ここでも駅舎の屋根にも白い布団が被さっている。
羽前椿を出て降雪ゾーンを抜けたようで、後方から日の光で明るくなる。
今泉の手前で右手から山形鉄道の線路と合流。今泉ではまた分岐し、
線路を挟んで、山形鉄道とJRのホームが並ぶ配置になっている。
ここで23分停車。列車はのんびりとしたペースで進むのである。
山形鉄道は愛称「フラワー長井線」。
23分停車の間に列車を見たいと思ったが、時刻表を見ると
こちらの列車の発車時間3分前に下り荒砥行きの列車が来るようだ。
この列車との接続するダイヤになっているのかもしれない。
JRとのホームにつながっている跨線橋の下をゆっくりと通り抜け
荒砥行きの気動車は、少し離れた連なる山々に向かう形で
白い絨毯の2本の黒いレールの上を右へ進路を変えて遠くへ
走り去っていくのを見送ると発車を待つ我が列車へと駆け込む。
羽前小松で女の子4人組が乗り込んでくる。「東京化」がここにも
進んでいる。無理やり地元らしさを捨てようとしている感じが頂けない。
お互いがその場を凌ごうと気分だけで話しているように見える。
米沢定刻着。
みどりの窓口で青森~函館の自由席特急券を購入。
始発から急行「はまなす」では風呂に入れないだけでなく、
ゆっくりと食事することもままならない。
そこで今回は特急列車で函館まで出ることにしたのだ。
「はまなす」の函館発車は1:23。最終となる函館行きの特急列車は
函館に22時少し前に到着。函館駅や五稜郭駅前には夜遅くまで銭湯が
いくつも開いている。五稜郭タワーまで散策しながら、遅くまで
やっているラーメン屋で食事にすればよいだろう。
わかってはいたが、ここで再びロングシート車両である。
米坂線が早くも今日最後の気動車の旅となってしまった。
乗り換えルートではゆっくりと次の発車時間まで昼ごはんとする
時間がない。さてどうしたものか。
奥羽本線は山形新幹線と共用しているため、線路が標準軌である。
東京でいくらでも見ているので、米沢で新幹線を見ても新鮮味がない。
新幹線だけ見ると、東京駅が米沢駅になっただけという感覚だろう。
こうして遠くまで来ると首都圏では見かけない光景に出くわす。
列車が羽前中山を出た後、おじいちゃんは自分の右隣が空いた席に
ドア近くに立っていた若い女性に座るように手招きをする。
女性も無下に断ると面倒くさい展開になりそうと察知してか
ここはひとまず素直にしておくかという雰囲気で隣に座る。
なんてことはない、ただおじいちゃんが若いそれもかわいい女性と
話すのが好きなだけ。ボケ防止には最高かもしれない。
男は何歳になっても死ぬまで若いかわいい女性が無条件で
好きな生物ということを示す好例である。
性欲も、女性への劣等感もきっと死ぬまで解消しないだろう。
向かいのロングシートに目をやる。
子供がこちらに背を向けて窓の外を見ている。行儀良く靴を脱いで。
隣に座る若者ふたり。聞こえてくる会話の内容からどちらも
20才になろうとしているのか。成人式の話をしている。
茶髪の男は右手に銀色の指輪をしている。
その隣に座る男は黒髪、黒縁メガネ、こちらも同じように指輪をしてる。
私の偏見だろうが、どうしてもこの茶髪がリーダー格で、黒髪は
その男に従って無理やりに合わせているように見えてしまう。
眠くなってくる。でも初めて乗る区間で眠る訳にはいかない。
でもロングシートだから、初めて乗る路線なのに気分は東北本線。
しかも立ち客も少々、他人の股を見ながら定刻山形へ到着。
山形からもロングシート車両かと思ったが、ボックスシートが混在した
セミクロスシート車両。すでにボックスシートは埋まっていた。
先ほどとは違って屈な空間からは少し開放されそうだ。
結局座ったのはロングシートだが。
新庄までも仙台あたりを走っている車内の気分である。
運転士すぐ後ろのドア隅に立っている上下ジャージの女の子2人組。
こちらは無理やり東京化しようとはせず、自然な雰囲気が好ましい。
同じ雪景色でもボックスシートで見るのと、ロングシートで見るのでは
印象が違うようだ。米坂線のように気動車のエンジン音が響く中
ボックスシートでゆっくり見られれば実は何でもよいのかもしれない。
車窓を見る目がその瞼が重くなってくる。ロングシート車両とはいえ
中々乗る機会がない路線である。睡魔と戦うために車窓以外に
注意を向けざる得ない。お腹が空いてくる。昼ごはんにしたい。
新庄駅に定刻着。心情的に駅そばのような座って食事できる
場所がないかと改札を出てみたが、新幹線が発着するホームの
近くで駅弁を売っているだけ。次の大館行きもロングシート車両。
駅弁はどうも新幹線の客向けに売っているようだ。
だが、これから乗る列車は途中の駅で長時間停車しない。
ロングシートでは駅弁は食べないと決めていたが、
意を決して駅弁を食べざるを得ない状況になってしまった。
新庄から大曲にかけては残念ながら特急列車が走っていない。
駅弁のためだけに新幹線に乗るのは馬鹿らしい。
クロスシートとは違って正面に人の目があるので
なんだか怒られているような気がして、早めに食べ終えねばという
気持ちになる。景色を見ながらゆったりというわけにはいかない。
食べている最中に地元の方と思しき4,5人のおじさまが乗り込んでくる。
どうも状況的には席を移動せねばならない。
おじさま達はまわりを気にせず、大きな声でしゃべっている。
東北地方ではこれが普通なのかもしれない。たまに何を言っているのか
聞き取れないところがあった。東北弁だろうか。
津軽三味線の代わりにロングシートではあったが、駅弁を食べながら
東北地方の人たちの生の会話を聞けたと思えばよいか。
これまで乗ってきた同じロングシート車両でも東北らしい空気である。
向かいのシートでは男の子がニンテンドーDSにずっとにらめっこ。
釜淵駅の駅名標は枠にレールを再利用しているのが珍しい?
記憶しているのはここまで。いつの間にか意識が亡くなっていた。
目が覚めると三関という名の駅。まわりを見渡しても同じ顔ぶれの客。
時間帯では秋田へ出る唯一の普通列車ということで、終点まで顔ぶれは
変わらなさそうな感じだ。
湯沢で10数人の学ラン集団。地元の中学生と思われる。
先ほどの列車でもそうだったが、休日にも関わらずこれほど学生を
見かけるのは丁度受験のシーズンだからだろう。
大抵の学校は冬休みを終えているはずで、シーズンでもなければ
昼間の列車で若い女の子をこれほど見かけることはないだろう。
野郎ばかりよりも若い、かわいい女の子がいれば
ロングシートだろうが、無条件でなんとなく気持ちが軽くなる。
好きな子でもないのに、車窓よりも女の子に目線がいってしまう。
時折女の子に目線がいきそうになるのを車窓へと意識的に移す。
相変わらず白の世界。この分では北海道はもっと雪が降っていそうだ。
すぐ隣に座っている地元の男性が、向かいに座る同じ地元の人に
話をしているのを聞いていると、東京圏とは違って思ったことを
ちゃんと話すという文化がありそうだ。その意味では
この地方の人たちは優しい人たちなのかもしれないと勝手に推測。
横手到着前にワンマン運転は横手で終了する旨の車内アナウンス。
横手に到着すると、向かいのホームには駅舎。
壁には大きく「釣りキチ三平のふるさと」と主人公の三平の
イラストともに描かれている。
大曲定刻着。ここで盛岡方面から伸びている秋田新幹線と合流。
ここから新幹線とは終点秋田まで併走することになる。
乗り込んできた女の子数人。黒いスカート、ネクタイ、
そしてストッキング。高校生だろう。会話を聞いていると
訛りがある。なんだかほっとする。地元の高校生のようだ。
会話から推測すると「ここから」という意味は「おりから」という
表現を使っているようだ。(調べてみないとこのあたりは不明)
そういえば、大曲~秋田は電車運転ゲームとして大ヒットした
「電車でGO!」でも取り上げられた路線だったことを思い出す。
先ほどの女の子たちは神宮寺、刈和野とゲームと全く同じ駅名の
ホームへとひとりずつ降りていった。
車両の後方から、標準軌と狭軌が併走するのを見ていると
ふいに大曲方面への新幹線がすれ違っていった。
流れていく景色を見ると、ゲームは風景を忠実に再現している
ことがよくわかる。リアル「電車でGO!」の線路を進んでいく。
女の子達が座っていた隣の親子に目を向ける。
それまでも退屈そうに母親の方に寄りかかりながら
居眠りをしていたが、座る客が疎らになったことをいいことに
とうとうベットのごとく、小さな女の子は横になってしまった。
お出かけ帰りのようだが、ずいぶんと長い移動距離である。
秋田定刻着。
秋田直前ですれ違う新幹線を撮影しようと、ケータイのカメラを
構えていたら、車掌が気を利かせてくれたのかワイパーを
一振りしてくれた。お礼を言ってから到着したホームに降り立つ。
大館行きもロングシート車両。
席が埋まっている先頭車両に乗り込むと、運転士のななめ後ろの
角に陣取り、こちらを背中を向けいている女の子。
背中を少し丸め、黙々と見ているのは入試対策の問題集らしい。
ページには色とりどりの付箋が貼ってある。
その傍らにあるミスター・ドーナツの箱からドーナツの甘い
匂いがほのかに漂ってきた。自宅に帰って食べながら勉強の
続きでもするのかもしれない。
土崎で、その女の子は降りて行った。
16:05。鯉川でコンテナ積載の貨物列車と交換する。
窓の外は雪が降っている。八郎潟、そして北金岡。
東京や神奈川とは違い、大粒の雪が降っている。
吹雪いていたらかろうじて見える2本のレールすらも隠れて
真っ白な世界になるだろう。
今のところは幸いにも遅延なく順調に列車は走り続けている。
向かいのロングシートに座るカップル。同じ学校の彼氏と彼女。
そんな感じの彼氏が途中の駅で降りると引き換えに、
同じドアから2人組の女の子が乗り込み、彼女に話しかける。
話題は当然、降りていった彼氏の話がメインになる。
その子は途中から同じ側のロングシートに並んで座り始め、
おしゃべりは続くが、反射する向かいの窓越しに観察する限り
あまり彼氏については話したくはなさそうだ。
こちらの女の子たちも地元だろうが、東京化されつつある
空気を感じた。東京へ行ったらすぐに同化するだろう。
髪を染め、スカートの裾を短くし、しゃべり方もより洗練されて。
大館に着く前には窓の外は完全に暗くなる。2日目の夜。
大館では次の青森行きまで30分ほど待つ。
改札そばで待っていると、発車10分前の改札に急に現れた若い男女。
同じ列車でにぎやかになるのかと思ったが、
どうやら同時刻に発車する秋田方面の列車へ向かう人たちだった。
おそらく受験生だろう。
ということで、青森行きは1車両に2,3人という状態で
発車メロディーも寂しげに列車は出発する。
普通列車は暗がりの中、津軽湯の沢を18:12に通過。
駅の明かりがすぐ後ろへと流れていった。
時折トンネルの轟音が聞こえるだけで車窓に変化はない。
最後尾車両の運転台に目を向けると、貫通扉を含めびっしりと
白く雪が張り付いており、後方展望は望むべくもない。
静かな車内でこのまま終点青森なのかと思ったが、
石川で乗り込んできた学生らしき数人によってその静けさは
見事に破られた。車内がにぎやかになり活気を取り戻す。
受験シーズンはどの場所も事情は一緒らしい。みな野郎だったが
普段なら地元のおじいさんかおばあさんくらいしか見かけない
だろう車内にまだ若者がいることに妙な安堵を覚えたりする。
話し方に独特のイントネーションがあったから地元の受験生だろう。
ロングシートで駅弁を食べたときにも遭遇したように、
地元の人の会話を聞いていると、東北まで来たことを実感する。
弘前では青森からやってくる寝台特急「あけぼの」と交換するため
13分程停車する。この13分間で乗客がさらに増える。
しばらくして青い車体がホームいっぱいに横付けされる。
「あけぼの」は津軽三味線の発車メロディーに見送られ、
夜の線路を上野まで向かうことになるはずである。
津軽新城では8分程停車。
続いて青森からやってくる寝台特急「日本海」を通過させるためだ。
しばらくして青い車体が通り過ぎ、暗がりへと消えていった。
こちらは大阪へ向けて、夜な夜な走っていく。
函館で温泉と食事で一息入れるため、最終の函館行き特急である
「スーパー白鳥25号」に乗り換える。自由席は満席かと思ったが
青森でどっと降りたため、難なく席に座れた。荷物だけは席に置き
私は別の自由席、つまり例の「展望席」へ向かう。
車両の一番前、または後ろまで行くと青函トンネルを通るため、
通路の少し奥が緊急時の非難口として貫通扉になっている。
その貫通扉にはワンマンの普通列車のように隣に運転士がいたり
「立入禁止」のロープが張られているわけではないので、
貫通扉に張り付いて窓から流れる景色を楽しむにはよい「席」。
もちろん避難通路なので、座席などはない。
車内販売のワゴンも来なければ、なぜか車内検札も来ない。
ということで自由席特急券を買わなくても、函館まで乗ろうと
思えばできなくもない。ただし首都圏のように頻繁に普通列車が
発着はしないので、改札から出場するときは普通列車が着く
タイミングでないとすぐにばれてしまう。
もちろん不正乗車であり、好きな鉄道にそんなことはできない。
きちんと自由席特急券を事前購入した上で乗車している。
あくまで空想上だが、普通列車の発着時刻から自由席特急券
がなくても、改札を出場しても怪しまれない組み合わせを
調べてみると面白いかもしれない。
私が先客ではあったが、どうやら青函トンネル通過の風景を
見たいがために後方車両のいちばん後ろよりの指定席に座る
若い集団。格好とスポーツバックと仄かに臭う汗臭さから
試合か何かの帰りだろう。案の定、野郎はかわるがわる
こちらの様子を覗きに来てははまた車内に戻る。
そのまま他のオタク同様に依怙地になって動かないつもり
であったが、あまりの視界の悪さに見るのはあきらめた。
手動で動かせるワイパー(『お手を触れないで』と黄色い
テプラが貼ってあるけれど)で雪を掻いても、
瞬く間に白くなり、内側も白く曇ってくる。
ワイパーを動かしたり、手で拭いたりと面倒臭くなってくる。
過去にこうして見てはいるので、珍しさはないのだが
ぼうーとただ席に座っているだけではつまらないので、
有意義な時間つぶしの意味だったが、例の集団への嫌がらせの
つもりで、青函トンネルへ突入したことを確認してから
自分の席へ戻り、窓側から楽しむことにした。
しばらくして竜飛海底を通過。
新幹線工事が進めば、この駅も見学できなくなるかもしれない。
またしばらく闇が続く。
・・・青、青、青、緑、青、青、青・・・・・
20:56。青函トンネルの最低部を通過した。
私の中では北海道に片足を入れた気持ちになる。少々眠る。
次に目が覚めると、トンネルを抜けた後だった。
少し離れたところに「セイコーマート」の看板の灯りが見えた。
ようやく北海道である。北海道特有の車道部を示す「↓」の
赤いネオンが点滅している。
21:30。
渡島当別で今度は寝台特急「カシオペア」に道を譲ってもらう。
21:37。函館の街を真横に眺めながら函館に向かう。
通路ドア上の電光表示機にはもう少しで五稜郭であることを
告げている。予定では終点函館で下車するつもりだったが
ふと五稜郭で下車することにした。
銭湯が駅前にあるらしいこと。
何度か通り過ぎているのに降りたことがないこと。
五稜郭タワーに寄ってみようと思ったこと。
団体のパックツアーではこれほどフレキシブルには予定変更は
できない。友人同士でもここまでわがままできまい。
だから鈍行列車旅はひとりが好きなのである。
銭湯は駅前から歩いてすぐに看板が見つかった。
亀田温泉は近年登場しているスーパー銭湯のような施設とは違い、
近所の交流の場という銭湯独特の文化が生きていた。
入れ替わりまわりの客がみな近所の親しい人同士のようで、
ちょっとした近況報告の場にもなっているようだ。
他人の家の風呂を借りているような気まずさを感じてしまった。
あるいは修学旅行でしばしば宿の部屋でひとりぼっちになった
苦い思い出が少しだけ蘇った。
相模大野の銭湯にも置いていないビンのコーヒー牛乳や
フルーツ牛乳が置いてあるのは嬉しかった。
迷わず飲む機会がないフルーツ牛乳を飲み干す。130円。
外は相変わらず寒いが、銭湯上がりで体がぽかぽかしているので
逆に今はこの寒さが心地よい。次第に寒くなってくるが。
函館行きの列車が来るかと思って一旦、五稜郭駅まで戻ったが
もう函館行きの列車はない。雪の歩道を函館駅方面に歩いていく。
そのまま函館駅に戻るのでは面白くないので、五稜郭タワーに
寄ることにした。五稜郭駅から離れているとは聞いていたが、
タワーは見えるのだが、歩いてもそうすぐには到着しない。
30分くらい歩いてようやくタワーのそばまで到着。
すでに展望台は営業を終えている。
すぐそばのこれも函館名物といわれる「ラッキーピエロ」で
ハンバーガーでも食べようかと店内を覗くが、若い男女が
中央部のテーブルを囲むようにして談笑している。
どうもノコノコと店内に入るのは憚れる雰囲気だったので
そのまま通り過ぎることにした。
函館駅への戻りかけの途中でどこからかチャルメラの音。
その音をたどると一軒のラーメン屋にたどり着いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿