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【出張からのひとり旅 2日目】「あまるべマリン号」と鳥取砂丘
大阪
8:13発
↓ 3011M 福知山線~山陰本線
特急 北近畿1号
10:42着
豊岡
10:59発
↓ 9161D 山陰本線
快速 「あまるべマリン1号」
12:08着
浜坂
13:12発
↓ 533D 山陰本線
13:57着
鳥取 ※鳥取砂丘、宿泊
時刻表で何度も調べてみたが、目的の臨時列車、餘部鉄橋を
走る快速「あまるべマリン号」に間に合うためには、
普通列車だけで乗っていこうとすれば、早朝の5:55発に
乗らないと間に合わない。
この列車しかないなら、何としても5時には起きるだろうが、
目を横にずらすと、特急の赤い文字。「北近畿1号」は、
うまい具合に「あまるべマリン号」の始発である豊岡に
接続している。乗り換えなしの特急列車である。
5:55発の普通列車では早く到着しすぎてしまい
豊岡では1時間20分ほども時間を潰さないといけない。
しかも途中の福知山での乗換え時間はわずか2分しかない。
間に合うのか大変不安である。
福知山からは山陰本線となるが、9時台に福知山を出発する
普通列車がなく、その代わりにこの「北近畿1号」が
運行しているというダイヤになっている。
普通列車は1時間に1本という割合で発着しているが、
他の時間帯でも同じように普通列車の代わりとして
特急列車が運行している。
福知山での乗換えリスクを考えると、少々金がかかるが
「北近畿1号」に乗ることにした。
「北近畿1号」の指定席を券売機で購入しようとしたが、
表示された座席表では、どちらが進行方向なのかわからない。
鉄道オタクの端くれとしては、初めての列車は進行方向
に対して右側の窓側席、快適度を重視して車両の真ん中
辺りを狙いたい。右側であれば、すれ違う列車を人目を
気にせずに楽しむことができるからだ。
持参しているJR時刻表では、巻末には主な座席配置図は
載っているが、これから乗ろうとしている北近畿1号は
載っていない。仕方なく、券売機の呼び出しボタンを押す。
横の小窓から案内の人が顔を出す。
案内の人が一旦奥に引っ込んで、座席配置が書かれた本を
広げながらまた出てきた。
お客との直接の会話を交わすという意味ではデジタル世紀の
には貴重な機会になってきている。
個人的な要望としては、券売機に表示される座席表には
どちらが進行方向なのかを判るようにしてほしいが、
そんなことは呼び出しボタンを押して確認すればよい話。
利用客が問い合わせなくても済むように、
今回なら私が呼び出しボタンを押さなくても済むように
なれば、それは便利かもしれない。
でも私を含む人間が利用客である以上、問い合わせが
全く無くなることはないだろうし、すべて自動アナウンス
で対応するようになったら、それは逆に不安になる。
人間である以上、最終的に人間に確認することで安心できる
ようにプログラムされている。
利便性の向上と安心して利用できる環境の両立は
実は結構難しいのかもしれない。永遠の課題かもしれない。
そんな殊勝な考えは「北近畿1号」に乗っているときには
微塵も浮かんでなかった。ただ初めての特急列車に心が
浮かれていただけであった。
浮かれて少し落ち着いた頃に、再び時刻表を開いて気づく。
「あまるべマリン号」が全席指定席の快速列車であることを。
果たして席は取れるのか。少し不安になってきた。
下りは「あまるべマリン1号」と「あまるべマリン3号」。
1号で満席なら、3号。3号も満席なら普通列車に乗って
餘部鉄橋を楽しんでくることにしよう。
今日は鳥取に泊まることにしているので、時間は
たっぷりとあるからだ。
特急列車の車窓から見える桜は今が盛りのようだ。
東京に比べると、西日本は桜に力を入れているようだ。
植えられるところには植えているらしく、桜色が遠くでも
目を楽しませてくれる。
豊岡には定刻着。さっそくみどりの窓口へ。
予想に反して、すんなりと希望の海側席が取れた。
観光シーズンだからと思ったが、たまたま運がよかったか。
窓口の人いわく、それでも海側席は人気があるそうだ。
席が取れれば、あとは駅弁を抱えて列車が待っている
ホームに急ぐだけである。
2両の気動車は今は山陰本線では見かけなくなった国鉄色。
この色こそが、山陰本線というイメージが未だにある。
きっと「電車でGO!」が影響しているかもしれない。
先頭の顔には「あまるべマリン号」の円形のヘッドマーク。
車両はすべて固定のボックスシート。
最近の通勤車両のように上から少しだけしか開かないような
味気ない窓ではなく、下からしっかりと上まで開く窓である。
これは何でもないようで実はかなり重要である。
満席なら周りの人を気にしてしまうところだが、今回は
気にすることなく窓を開けることができそうだ。
列車が動き出す。駅弁の蓋を開ける。
途中、上りの特急「北近畿」とすれ違う。国鉄色同士?の
貴重なシーンである。「北近畿」は国鉄色??
快速列車だが、途中の駅で信号待ちのために7分停車。
普通の快速列車では許されないのだろうが、
観光列車ゆえに至るところで窓から顔を出す人。
カメラのレンズを向けたり、後ろ側を覗いてみたり
私も含めて考えていることは同じである。
山陰の日本海は良く晴れているために気持ちよい青だ。
この前の白く雪が残っている時期に見たのとは印象が違う。
香住海岸に近づくと、車掌による観光案内の車内アナウンスが
流れ、列車は徐行し始めた。しばしの日本海観察タイム。
トンネルへ入ると、列車はまた元のスピードで走り始める。
再び列車は徐行。ハイライトである餘部鉄橋だ。
鎧駅を通過し始めたころから、トンネルに入ると徐々に
スピードを落とし、トンネルをゆっくりと抜けると
餘部鉄橋である。ゆっくりと橋を渡る眼下には
前の旅では地上から見た家の屋根が並んで見える。
そのときに食べた駅弁「餘部鉄橋物語」に付いていた紙には
住民が悲願した餘部駅が開業したことを祝福し、5本の桜が
餘部鉄橋そばに植えられていたとある。
その桜も現在進行している架け替え工事で支障が出るために
伐採するという話があったようだが、桜への思いは強く
工事に影響がない場所に植え替えられることになった。
その桜を見つけることができないまま、餘部駅を去る。
終点浜坂までも何度かトンネルに潜る。
線路を敷くために、山だらけの地形と格闘した結果である。
日本に線路を敷くのは並大抵ではないことを思い知らされる。
浜坂には定刻着。
次の普通列車まで1時間ほどある。途中下車。
改札を出ると、正面に「湯村温泉・浜坂温泉郷」とあるが
休日のためか、人がいなくて寂しい雰囲気である
周辺を歩き回ってみたが、駅前の喫茶店以外に
休めるところはなさそうである。
喫茶店「岬」。店内は少し暗めの照明で落ち着いた雰囲気。
座ってすぐそばにあった「らくがきちょう」。
駅ノートみたいなものだろう。開くとこの店に訪れた客が
書き込んだ文字が何ページが続き、ふいにこどもの落書き
が出てきて思わず笑ってしまう。
「らくがきちょう」なんだから、この落書きこそ正しい。
そのギャップが面白い。
私もここに旅の途中で立ち寄った旨を書き付けた。
テーブルそばに知恵の輪があったり、「おやつにどうぞ」と
書かれた容器の中身は柿の種。ブレンドコーヒーで
食べる気にはなれない。知恵の輪はすぐに解けてしまったが
帰り際に各テーブルに知恵の輪が置かれているのに気づいた。
遊び心があり、ほっとできる喫茶店は初めてであった。
浜坂に寄ることがあれば覚えておこう。
知恵の輪を解いてテーブルを廻っていたら、次の列車に
間に合わなくなってしまう。店を出て駅に向かう。
鳥取行きは前の旅でも同じ、ステンレスむき出しの気動車。
一両のワンマンカーは個人的に嫌いな現代型。
ボックスシートは1人が占拠できるほどの乗車率。
定刻発車。途中の駅から小柄な高校生と思われる女の子が
乗ってくると、隣のボックスシートに座った。
男が座っている席より、おばあちゃんの方が安心か。
岩美から少々人が乗ってくる。結局向かいには野郎が
座ることになった。
鳥取定刻着。
鳥取砂丘は車で20分ほど。私の体力なら歩いていけない
距離ではないが、日が暮れてしまう。
それに鳥取砂丘以外にもこの鳥取駅周辺を観光してみたい。
タクシーで周ろうとすると高い観光料金になってしまうので
バス乗り場に向かうと丁度よい循環バスが走っている。
実は前も青春18きっぷの旅の途中で少し時間があったので、
下車した時に知ったのだが、「ループ麒麟獅子」である。
1日それぞれ6便、鳥取駅から鳥取砂丘、鳥取港などを
観光スポットを回るコースと、その逆のコースで
計12便が走っている。
バス乗り場で一日乗車券(600円)を購入した際、
もらったパンフレットにはそれぞれの到着時間が
書いてあるので、列車のように計画が立てやすい。
鳥取駅に着いたタイミングが遅すぎたようで、
この「ループ麒麟獅子」では、あと2便しかない。
途中で一回降りて、少し見て周って最後の便で、
鳥取砂丘へ行けるが、帰りの「ループ麒麟獅子」を
考えると、鳥取砂丘を時間をかけて見る時間が
あまりない。
「ループ麒麟獅子」とは別に鳥取砂丘や鳥取港までは
走らないが、市内の循環バスが20分間隔で走っているので
昼間に来て、うまく使えば鳥取駅周辺を結構楽しめる。
14時30分発の「ループ麒麟獅子」は鳥取港を回って
鳥取砂丘へ途中寄り、鳥取駅へ戻るコース。
運転手は青い法被を着ており、鳥取名物という
麒麟獅子が車外にも車内の座席にも描かれており、
観光気分が盛り上がる。座席配置も路線バスでは
珍しい窓側に向いたロングシートがある。
観光バスだけに窓も大きくなっており、外が見やすい。
乗り込んで後ろの座席に座って待っていたが、
乗客はしばらく私1人という寂しい車内。
発車直前にもう1人乗ってきたが、雰囲気から明らかに
地元の人で観光目的ではなさそうだ。
そのおばあさんも途中で降りてしまい、砂丘まで
私1人の貸切状態となる。
大きな窓故に、周りで信号待ちしている車からも
バスの中は丸見えで、少々恥ずかしい。
途中の鳥取港までは普通の住宅街を走っていくので
観光気分があまり出なかったが、砂丘が見えてくると
また気分が出てきた。小さな砂漠である。
県道に面して海に向かって砂漠が広がるが、
正面の「馬の背」と呼ばれている小高い丘が無ければ
規模の大きい砂浜である。
この砂丘全体を歩き回っているのかと思ったが、
観光客は皆、「馬の背」まで行って戻るだけである。
「馬の背」に掛けているのか、「馬の背」の周りを海を
見ながら入り口まで往復する馬車が動いている。
1000円だが、もう800円だすとラクダにも乗れる。
馬車とはどうやら違うルートらしいが、乗っている人を
見ることはなかった。
カップルや家族連れが乗る馬車に乗り込む勇気はない。
ロングシートの車両で駅弁を食べる勇気と似ている。
しばらく見ていたが、ラクダよりも馬車の方が利用客が
多いように見受けられる。
細い木の棒の上にうまくバランスよく立って元気よく
呼び込むおねえさんが、テレビで紹介されたことが
影響しているのかもしれない。
小高い丘の麓に浅く水溜りがあり、子供たちが遊んでいる。
そこから頂上へ登ろうと思ったが、勾配がきつく砂に
足首まで埋まってしまい、うまく登れなかった。
通常ルートで「馬の背」に登ると、反対側は海まで砂が続く。
集まって携帯電話で写真を撮っている者たち、座り込んで
ゆっくりとしている女性、家族連れとにぎやかな砂の上である。
海から風が絶えず吹いている。風が強くないので砂が
舞うことがないが、日差しは初夏を思わせるような暑さだ。
昨日の客先会議のために着ていたスーツのままなので
たまらず上着は入り口の砂丘会館にあったロッカーに
放り込んで、今はシャツの袖を捲くっている。
会館でアイスクリームをつい買ってしまうほどの暑さのなか、
2時間ほど過ごす。日焼けしそうである。
山陰本線の車窓から見た日本海とは印象が違う。
同じ海だが、太平洋と呼ばれる側ともまた何かが違う。
砂と海、それだけなのにずっと見ていて飽きないから不思議だ。
ループバスの最終便が来るので、そろそろバス停に戻ろう。
まだ強い日差しの夕日を避けるように、会館のみやげを
見ながらバスを待つ。帰りのバスには行きとは正反対に
若者たちでにぎやかな車内になる。
途中で鳥取城が見えてくると降りようか迷ったが、
駅に戻ってから考えることにしよう。
駅前のホテルは、今まで泊まってきたビジネスホテルとは
ちょっと違っていた。フロントで現金を前払いするのかと
思ったら、隣の機械に払い込むとレシートが出てくる。
レシートには部屋番号と暗証番号が書かれている。
この暗証番号が部屋の鍵になる。24時を過ぎるとホテルの
入り口が施錠されるため、その鍵でもある。
浴衣も部屋にないので、必要な人はフロント向かいの
棚から持っていく方式になっている。
部屋のドアノブは鍵穴の変わりにボタンが並ぶ。
暗証番号を押してドアを開けると、後は寝るだけの部屋と
いう印象を強く押し出している。
まず足元に書かれた「靴をぬいでぐっすりとお休みください」
が目に付く。ここで靴を脱げということらしい。
窓からは道路が見えるが、ブラインドを開け放しだと
3階でも下を歩いている人が少し気になる。
ベットの上に補助ベット。2人まで寝ることができる部屋
ということだが、すぐ頭上にあって邪魔である。
しかもベットのすぐ側にある壁に掛けられたテレビは
ベットに向いて固定されているので、テレビを見るには
ベットに座るか、横になるしかない。
玄関部分には電灯はない。その代わりユニットバスから
ドア越しに漏れる灯りをフットライト代わりに使えと
書かれたシールがユニットバスのドアに貼ってある。
試しに窓近くの電灯と、ベットライトを消すと、
ドア越しにユニットバス内の明りが漏れている。
補助ベットの他に、もうひとつ不満だったのが
ユニットバスに出入りするには玄関で靴を脱ぐ部分に
裸足で歩かないといけないことである。
スリッパを履く習慣がないので、裸足派の私にとっては
ちょっと気になってしまう。
浴衣のセルフサービスといい、電灯の省略化といい、
剃刀や綿棒の省略といい、省エネルギーと省資源で
地球環境に貢献するホテルをアピールしているようだが、
浴衣の洗濯や、部屋の清掃省力化など省コストが本音だろう。
そして利用客には部屋に入ったら出来る限り早く寝てもらい、
テレビや電灯など電力使用を抑えてもらう戦略によって
コスト削減を図ろうとしている感じてしまう。
朝食無料はありがたいが、時間は7時から8時半と今まで
泊まってきたホテルより少し短い。
これが6時半からならゆっくりと朝ご飯を食べてから
出発できるのだが、ここは個人的な問題である。
省コストをやんわりと利用客にも押し付けて
快適な睡眠環境と、健康な朝食で「ロハス」なホテルとは
少々眉間に皺を寄せてしまうが、こうでもしなければ
安価では提供できないだろう。
地球環境保護に貢献という名目で見れば、かなり頭のよい
戦略であることは評価できる。
今も昔もサービスはやはり払う金額に比例しているらしい。
この不況で払う金額に敏感な客が、出来る限り安価で
よいサービスを得ようと我儘になっているのかもしれない。
そんなケチをつけながらもひとまず夜の鳥取駅周辺を
歩き回り、恒例のラーメン屋探しである。
すぐ見つかる場合もあるが、なかなか見つからないと
他にどんな店があるのだろうと探す楽しみがある。
山陰本線と並行している県道を歩いていくと、
因美線の陸橋だろう、下をくぐったところに黄色い看板の
明りが見えてきた。
気持ちよくビールに酔いながら、ラーメンを食べる。
知らない街でワクワクする時間である。
お腹がいっぱいになり、帰りがけに途中で見つけた
たい焼き屋で、味がちがうものをそれぞれ一つずつ買い、
本屋でエロ本を買う。ホテルに戻ってすることは一つだ。
たい焼を食べながらテレビを見て過ごす。
目を閉じたらすぐに眠れそう。
ユニットバスで汗を流して、歯磨きをして時刻表を再度
開いてみる。やはり朝7時25分発の因美線に乗らないと
その日の明るいうちに家に帰ることはできない。
6時半には起きなくてはいけない。
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