2011年11月12日土曜日

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【北海道&東日本パスの旅 2日目】柱のない風景と姨捨の夜景と












松本
10:41発

↓ 8361D 大糸線
快速 リゾートビューふるさと

12:44着
南小谷
14:21発

↓ 429D 大糸線

15:19着
糸魚川
16:18発

↓ 549M 北陸本線

16:37着
筒石
17:32発

↓ 551M 北陸本線

17:50着
直江津
17:51発

↓ 3330M 信越本線

19:22着
長野
19:50発

↓ 1230M 信越本線〜篠ノ井線

20:21着
姨捨
21:24発

↓ 452M 篠ノ井線

21:34着
聖高原
21:44発

↓ 1229M 篠ノ井線〜信越本線

22:22着
長野


リゾートビューふるさとの発車まで少しだけ時間があるので、徒歩で松本城へ。
熊本は熊本城、千葉は大多喜城や館山城、名古屋は名古屋城とここ近年の鉄道旅行では
城に巡るようにもなってきた。城巡りが今後の旅行のネタになるのかもしれない。

熊本城に比べるとその規模は小さいが、野面積みの城壁からはかなり古い歴史が伺える。
野面積みは排水に優れるが、積み石に隙間や出っ張りがあるので、敵に登って責められやすい。
さらに年代が進むと、この積み方が洗練されて隙間なく、表面が滑らかな切り込み接ぎなどの
積み方が広まるが、こうした基礎知識を実際の目で理解するなら熊本城を強くお薦めしたい。

天守閣からかつての城下町から近代的な街並みに変わった風景をしばし見下ろして後にする。
城から今度は近代的な建物に移動しなくてはならない。もちろん松本駅である。

ホームにはすでに2両編成の緑色ベースが爽やかなステンレスの気動車が発車を待っている。
顔の真ん中辺りに「RESORT HYBRID」と書かれているとおり、従来の気動車では不可能だった
エンジンの負荷軽減を図っている。発車から低速域においては蓄電池の電力を併用する事で
出来る限りエンジン負荷を抑えることで燃費、排気ガス節約を図る仕組みとなっている。

新幹線等で使われている回生ブレーキの技術によって、モーターから回生した電力を
ブレーキ時に蓄電池へ充電する事で電力を使いまわしている。 車内灯などのサービス電源も
この蓄電池からの電力が使用されているようだ。

なので、乗り込んでしばらくして列車は動き出したが、とても静かである。
いつ発車したか気づかないくらいは言い過ぎだが、それぐらい静かな発車であった。

東北の五能線を走る「リゾートしらかみ」程は人気がないのか、知名度が低いのか
車内は空きが目立つ。それでも車掌と客室乗務員を兼任する女性による観光の車内アナウンスが
流れると華やいだ気分になる。車両も新造されてそれほど月日が経ていないので、綺麗な車内と
いうのも少しはあるかもしれない。

大糸線は糸魚川方面に向かうと、左手の車窓には安曇の山々の雄大な景色が出迎えてくれる。
これを観光資源にと車窓から眺めの邪魔にならないように、一部区間で架線柱が右手に設置
されていると車内アナウンスで観光案内が流れる。

信濃大町に到着する少し前に例の客室乗務員から短冊一枚と筆ペンを渡される。
信濃大町に飾ってある竹に飾ってはいかがでしょうとのこと。
信濃大町では6分間停車。改札外に飾られた竹の枝にはすでに何十枚もの色とりどりの短冊が
ぶら下がっており、様々な願い事が書かれている。おそらく叶わない事を知りつつも。

途中の白馬でほとんどの客が降りて、終点の南小谷まで乗り通す客は私以外には女性に
話しかけるのが好きなおじさんだけであった。 乗務の邪魔なのだろうが、これもサービスとして
例の乗務員は相手をしてあげている光景が前方の車両に見えた。

南小谷に到着する直前に見えた唯一と思われる海鮮丼の看板を出している店以外に飲食できそうな
店は見当たらない。それを分かった上で客室乗務員に訊ねてみたが、海鮮丼以外におたり名産館
というそばを食べられる店があるのみ。そばと海鮮丼、少し前に海鮮丼を食べたせいか気持ちが
海鮮丼に傾き、築地から仕入れたらしい三色丼を頼んだ。

夏らしく強い日差しにこの辺りは盆地のためか、かなり湿気がありベットリと汗をかく。
ビールを飲みながら海鮮丼を食べる。南小谷まで足を運んだ割には食事に芸がないが、
他に飲食店がないのでは仕方ない。
歩き回ったら疲れるだけでなく、日焼けしてしまう。汗だくで次の列車に乗りたくない。

時間を持て余さないようにゆっくりと食事をし、ビールを飲む。
財布に余裕があれば、 さらにビールを頼んでほろ酔い気分と行きたいところだが、
安月給故に予算も限られる。限りある環境でどれだけ楽しめるかも旅行の醍醐味だろう。

発車の10分程前に唯一のコンビニもとい、商店で飲み物を買う。
店主に話しかけたが、ここは地形と海からの水蒸気で湿度が高くなるという。

南小谷からは気動車。ここからJR西日本線になるのだが、非電化路線としては最北だろうか。
先ほど乗って来たハイブリッド気動車も終点の糸魚川まで乗り入れは可能なはずなのだが、
どんな事情があるにせよ、この南小谷を境に東日本と西日本との温度差を感じてしまう。

一時やっていたメモ書きだが、最近止めた。
見た事を忘れないメリットと引き換えに書く事ばかりに気になって景色を楽しめない。
きっと忘れるだろう、現に今思い出しながらニッキを書いているが、南小谷から先の景色は
覚えていない。宮脇俊三氏に言わせれば、「メモ書きしないと覚えてられないことは書くに
値しない」ということなのだろうが、その意味を最近自分なりに理解してきたと思っている。

どういう事柄をメモ書きすべきか。必要最低限のキーワードで、後でそれを見返した時
ぱっとその時の風景が鮮明に思い出せるなら、ニッキを書く私にとっては理想である。
読ませる文章を起こしやすいように、そのメモ書きのテクニックを得られたらという
淡い期待を抱いて、『「最長片道切符の旅」取材ノート』を読んで見たのだが、
宮脇俊三氏がどういう点を観察しているかは何となく分かったが、それらの文字の羅列としか
読み取る事が出来なかった。やはり答えというか、その感覚は時間をかけて自分なりに
感じ取るしか方法はないように思えた。

様々な個人サイトやブログで批判しているように、この作品は故人となった宮脇俊三氏は
商品化を望んでいなかったのだろう。メモ書きが個人が自己満足で書くブログ用なら
全く構わないが、それをそのまま本にして商品化する事は幾ら売れるからとはいえ
生前の宮脇俊三氏が上梓した作品内で言及しているように、メモ書きがそのまま作品に
なるわけではないと思う。 出版社の態度は一部の読者を馬鹿にしているだけでなく、
また多くの読者が尊敬する氏に対しても失礼だと思う。

単にメモ書きが面倒臭くなったという説も今のところ、有力とのこと。

どこかの知らない人が書いたブログにJR西日本のやる気の無い気動車の写真が載っていて
まさにその表現通り「レールバス」である。関西本線や山陰本線に乗った時にも同じ形式の
気動車に乗った時にどことなくガッカリした記憶がある。

糸魚川から北陸本線に乗り換え。前回乗った時は元寝台車として使われていた583系をそのまま
転用した 419系と呼ばれる車両だった。ほとんど改造していないため、出入り口は車両両端に
それぞれ一つずつある折戸のみで、しかも普通列車として転用されるなど想定されていないため
人一人がやっと通れる程の狭さ。自動かと思いきや、降りる際は手で開ける半自動扱いだった。
おかげで583系で折戸を手で開けるという貴重な体験が出来たのだが、名車とも迷車ともいえる
この車両はかの東日本大震災後のダイヤ改正で定期運用を終了しているようだ。

都度、見る者にインパクトを与えたJR西日本はさらにそのやる気のなさを展開するだろう。

そのまま直江津まで乗っていっても良かったのだが、有名なトンネル駅で途中下車する。
個人的には「リトル・土合」だと思っているこの駅には私の他に数名が下車した。
この駅は土合とは違って、駅員のいる有人駅でホームで降りてくる乗客を待つ。
そして列車が発車するのを見送ってから改札への長い階段を昇っていく。

前回は駅員とは会話しなかったが、今回は話しかけられた。
記念スタンプを押せるハガキを頂き、スタンプを押してから次の列車まで散策することにした。
前回は駅の撮影が目的だったので、改札を出たがすぐに戻ってしまった。
今回は地上に出て見てどんな景色が広がっているのが、楽しむことにしたい。

マップで確認するわかる事だが、地上に出てしばらく坂を登ると大きな車道に出る。
その向こうは緩やかに下っていて、広がる海が顔を覗かせている。
北陸の日本海は山陰とも奥羽とも雰囲気が異なり、穏やかだ。けれどジメジメする。

海沿いに学校がある。この時期の体育は気持ち悪い汗をかくことだろう。
体育後の授業を考えると気の毒にさえ思えてくる。でもこれから下校と思しき生徒達の顔は
笑顔と元気に溢れているように思えた。だぶん気のせいだと思うけれど。

突き当たりは眼前に海が広がる。穏やかな夕日とともに帰宅を促すチャイムが響く。
帰りがけの道端に咲く紫陽花に別れを告げ、再びトンネル駅に戻る。

ほんの15分くらいしか歩いていないのにベッタリと汗をかいている。
駅員と共に改札を抜け、先ほど昇ってきた階段を降りる途中は下から吹いてくる風が
天然のクーラーの如く、心地よい。時間が許せばしばらくそのまま当たっていたいくらい。
これから乗る列車に乗務するのか、一緒だった駅員と今回の旅の目的だとか、有名なトンネル駅が
他にもあるとか、この駅も以外に利用者があるとか、そんな雑談を交わしていると
列車がホームに入ってきた。乗る際に駅員に「お疲れ様です」と声を掛けてもらい、
なんだかそれまでの疲れも忘れて、少し楽しい気分になった。不思議だ。

トンネル駅を抜け、列車は定刻に直江津へ到着。
直江津から信越本線で長野へ。そのまま長野で下車しても良いのだが、少し時間が遅くなるが
とある場所で夕飯にしようと思いついた。夜景を見ながらの駅弁。そのまま姨捨に向かう。

そうそう行く機会もないだろうから、幸い天気に恵まれた今日、姨捨から善光寺平の夜景を
見ながら、ビールを飲みながらの駅弁。我ながら何と名案だろうと心の中でほくそ笑む。

長野で姨捨へ向かう列車の発車まで時間があるので、夕飯とビールとつまみを調達。
それらを入れたビニール袋をぶら下げながら、列車に乗り込む。
車内を観察する限り、私と同じ事を考えている人は他にはいなさそうだ。

例のスイッチバックに入り、列車は進行方向を変えながらゆっくりとホームに停車。
降りる前から右手の車窓にはその日本三大の夜の表情が出迎えてくれている。
ホームには誰もいないのかと思っていたが、地元の人らしき数人の中高年か高齢の人たちが
この列車が到着するかなり前からこの夜景を楽しんでいたようだ。

列車が再び発車してから、彼らも駅から姿を徐々に消し、静けさが戻ってきた。
夜景の上には「田毎の月」と表現された月が照らし、ビールもより美味しい。
駅弁の蓋を開けて、しばらく箸を突っついていると、離れたベンチに若いカップルが一組。
こちらの奇行に一瞥をくれていたが、こちらは気にしない。ことにした。

夕飯を食べたあとは缶ビールを飲みながら、つまみのプリッツをポリポリ。
もっと芸のある楽しみ方はあるのかもしれないが、数少ない旅行経験ではこれが精一杯。
夜景にも正直飽きたところで、松本方面の列車に乗り込む。聖高原まで乗れば、
あまり待たずに長野方面の列車に乗り換える事が出来るからだ。

聖高原で10分程待っていると、長野方面の列車がやって来た。
車内から再び、先ほどの善光寺平からの夜景を見ながら、本日の宿へ向かおう。

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