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上野
19:03発
↓ 1 東北本線~IGRいわて銀河鉄道~青い森鉄道~
東北本線~津軽線~津軽海峡線~江差線~函館本線~
室蘭本線~千歳線~函館本線
寝台特急 北斗星
11:15着
札幌 ※宿泊
10:37発
↓ 5010D 函館本線~千歳線~室蘭本線~函館本線
特急 スーパー北斗10号
13:50着
函館
13:54発
↓ 4026M 函館本線~江差線~津軽海峡線~津軽線~東北本線
特急 スーパー白鳥26号
16:45着
八戸
16:57発
↓ 3026B 東北新幹線
はやて26号
20:08着
東京
20:13発
↓ 893M 東海道本線
20:39着
横浜
月曜日、火曜日と頑張って仕事には行ってみたけれど
水曜日はどうも行く気がしない。
体調不良の旨を会社に連絡してサボッた。
インターネットカフェに立ち寄る。楽な自殺方法を
webで検索した。時間をかけたが、見つからなかった。
木曜日の朝。やっぱり駄目だった。また会社に連絡した。
頭痛が治まらないとして、またサボッた。
同じようにインターネットカフェに立ち寄る。
また自殺方法を探す。でも逃げるようにエロ動画でオ●ニー。
だんだん虚しくなる。そして自宅に帰る。
金曜日の朝。雨。会社に連絡する気もなくなった。
会社の前まで来た。しかし行く気がしない。
会社の前の公園のトイレに籠る。
締めていたネクタイをはずして、輪にして手すりに結んで
首吊り自殺をしようとしたが、次第に苦しくなるだけ。
とてもできそうにない。諦める。
外は雨。もう出勤時間を過ぎているだろう。
もう携帯電話の電源を入れるつもりはなかったので
ずっと切っておいた。そのまま歩きまわる。
ふと高層のマンションが見えてきた。とても高い。
首吊りは苦しいけれど、飛び降りなら楽かな。
でもそう簡単には屋上へと行かせてくれるマンションはない。
そうだ。このまま遠くへ行ってみよう。
すぐに思い浮かんだのが、北海道の根室。
遠く東端の街でひとり死ぬのも悪くない。そう思い始めた。
夜行列車で旅立ちたい。
北海道へ行く寝台特急、「ぐるり北海道フリーきっぷ」が
使えるのは北斗星のみ。始発の上野は19:03発。
時間をつぶすために上野駅前のインターネットカフェ。
もう自殺方法を検索するのはうんざりしてきた。
浦沢直樹の「20世紀少年」を読んでみることにする。
携帯電話の電源は切っているが、もう会社から連絡が来てるだろうな。
そう思ったけれど、怖くて携帯電話の電源は入れられなかった。
「20世紀少年」のヒロイン、遠藤カンナはなかなか萌えだ。
白い帽子と青いジャンパー姿はよいオ●ニーのオカズ。
漫画を読んでいても時間はあっという間に過ぎていく。
そろそろ出発の時間である。
18:50。時間どおりに青い客車を先頭にして推進運転で入線してくる。
これから死に行こうとして人間がしっかりとデジカメ撮影。
先頭1号車2上段。初めて乗った時はまだ青函トンネルの新幹線工事前で
1日2本、上野から出発していた。北斗星1号と3号だが、そのうち1号が
青函トンネルの新幹線工事の時間帯確保のために運転が取りやめとなり
これから乗る北斗星は、北斗星3号のダイヤとなっている。
そして、私が初めて乗った時は実は最初で最後の臨時の北斗星81号。
電気機関車は普段の赤いEF81ではなくカシオペヤ専用塗装だった。
連結されていたロビーカーも最初で最後の乗車経験となってしまった。
これから乗る元「北斗星3号」である「北斗星」はロビーカーこそ
連結されているが、席も少なく、自動販売機などがあってどうしても
初めて乗ったロビーカーに比べると狭く、窮屈な感じが否めない。
すでに隣下段のベットにはおじいさんが座っていた。
軽く挨拶をしたが、途中の函館まで乗っていくという。
これから遠く北海道で死のうと考えているなんて知るはずもないが
おじいさんはこれから始まる夜汽車の時間に期待を膨らませているだろう。
楽しそうに笑顔である。早々に上段の寝台にあがり、シーツを敷いたり
荷物を降ろしていると、すぐ下にもおばあさんが座った。
先程のおじいさんとはすぐ隣。すぐにおばあさんとの会話が始まった。
おばあさんは東室蘭まで乗っていくようだ。
通勤列車のロングシートではまずあり得ないこうしたお互いの挨拶から
始まる寝台特急の旅は一緒に途中まで、あるいは一緒に旅をしているという
連帯感があって、私の虚しい気持ちを少しの間だけ忘れさせてくれる。
寝台に揺られて、眠っている間に・・・とはまだ考えるまでもなく
とにかくこんなときでも空腹なので、まずは上野駅で買っておいた駅弁を
抱えてロビーカーへと移動。すでに席がだいぶ埋まっていたが、駅弁を
食べながらビールを飲む。まだ味を感じる。おいしい。
ゆっくりとしばらくビールを飲みながらこれが最後かもしれない車窓を
眺める。すでに夜の中を街の灯りが横に流れていくだけ。
自分の寝台に戻る。浴衣に着替えるのが面倒臭い。
仕事しに行くつもりで着てきた背広のまま、ごろんとしていると
いつのまにかそのまま眠ってしまっていた。
「ぐるり北海道フリーきっぷ」は購入した際に往復で使う列車の指定席を
受ける必要がある。「ゆき」はともかく、もう「かえり」の列車は必要
ないんだけどな・・・と思ったが、とりあえず日曜日の札幌発寝台特急
「北斗星」の個室B寝台ソロの指定を受けた。
目が覚める。まだ青函トンネルには入っていないらしい。
付属の浴衣のひもを輪にして、上着を掛けたハンガーをかけておくフックに
結んで首を吊ってみる。しかし次第に苦しいだけで意識は飛ばない。
首の後ろが圧迫されれば頭に血が流れなくなって意識がなくなるかと思い
仰向けの状態でしばらく吊ってみる。頭の中が何か熱くなってくる感じが
あるが、それでも一向に意識が飛ばない。むしろ体が心がそうすることを
全力で拒否しているように感じる。
車掌の車内検札さえ済んでしまえば、カーテンを閉めれば終着札幌まで
誰にも邪魔されず、誰の目も気にすることはない。
好きな鉄道に揺れらながら死んで行くには申し分ない環境のはずだが
どうしても踏み切ることができない。列車は踏切を通りすぎていくが。
いつのまにか、轟音が続いている。青函トンネルだろう。
この轟音が途切れれば北海道に入っている。それまでに何とかしないと。
終着札幌まであと5時間。それまでに何とかしないと。
しかし、結局寝台でじっとしているだけ。
こんな気持ちであってもお腹は空いてくる。いかめしで有名な森駅に着く直前、
6:30から食堂車は営業再開する。昨夜のディナータイムと違って予約不要だが
好きな席で食べたいなら早めに食堂車へ向かったほうがよい。
営業案内の車内アナウンスがあってから1時間後、のろのろと寝台から降りて
食堂車へと向かう。1600円。ちゃんと味を感じる。
食べている間は何も考えることができなかった。
落部駅で貨物列車とスーパー北斗1号の通過待ち。後ろのテーブルでは
家族連れだろう、子供が窓の向こうを行きかう列車を見てはしゃいでいる。
ゆっくりと1時間かけて朝ごはんを食べて寝台に戻る。
すぐ下段のおばちゃん以外の2人は函館で下車しており、静かな寝台で
そのおばちゃんが東室蘭で降りるまで、向かいの寝台に座ってお話をした。
地元が東室蘭で東京からの帰りらしい。東室蘭からは札幌へ行く路線バスが
走っている。列車の本数が少ないから、主なの移動手段は車になる。
しかし高齢になると車の運転などできなくなるから、列車やバスに頼らざるを得ない。
東室蘭では空港まで列車かバスまで行く必要がある。
しかし乗り換える必要があって面倒だ。時間はかかるけれど東京まで乗り換えなしで
いけるこの寝台特急「北斗星」で帰ることにしたと。
仕事終わりにプライベートで旅行していることを話すと
おばちゃんから楽しい旅行をと言葉を残して、東室蘭で降りて行った。
楽しい旅行か・・・
おばちゃんもいなくなって、終点札幌まで一人きりの寝台空間。
窓の外を横に流れる線路を景色を見ていると、なぜか泣けてきた。
(おれ、まだ死にたくないよ・・・)
札幌へ少しずつ近づく度に誰にも連絡せずにここまで来てしまったことを
後悔している気持ち半分、もう戻れないなという気持ちも半分。
札幌が終着だが、私はこの世界に執着したくない。
この時点ではそう思っていた。
脱線事故でも起きればいいのに。
しかし列車は健気に定刻通りに駅を発着していく。
そしてとうとう札幌に到着してしまった。定刻11:15着。
降りる。一番先頭へ向かうと。初めて間近でみる青いDD51の重連。
北斗星のヘッドマークが誇らしげである。
初めて北海道への旅行で訪れた街。日本最東端の根室まで行ってそこで
自殺することを考えていたが、いざ札幌まで来てしまうとそんな決意も
いつの間にか揺らいでいた。あと30分ほどで釧路まで行く特急列車が
出発してしまう。その列車に乗っていくか、どうしようか。
出発10分前。まだ迷っていた。
出発5分前。まだ迷っていた。
結局乗らなかった。
札幌駅の改札を抜けて、駅周辺を歩き回ってみる。
主要都市だけに背の高いマンションが建っている。
あの高さなら、列車を見ながら飛び降りができると思っていたが、
当然ながら簡単に階段を登れるようにはなっていない。
ビジネスホテルに泊まることにした。
まだチェックインまで時間があるので、近くのネットカフェで
時間を潰すことにした。けれど気持ちはちっとも紛れない。
パソコンに向かっている時間が経てば経つほど、死ぬのが面倒臭い
気持ちになってきてしまった。
ホテルにチェックインする。部屋に入る。
まずお風呂に入って、汗を流すことにする。
人がいる。そそくさと出る。部屋に戻る。
浴衣の紐を輪にして、壁のフックで首を吊るという考えはなかった。
恐る恐る電源を切っていた携帯電話の電源を入れてみる。
留守電が溜まっていた。メールが溜まっていた。
留守電を1件聞く。削除する。また1件聞く。削除する。
待っている人が向こうにいる。
泣きながら母親に連絡する。札幌にいることを告げる。
父親に代わった。弟くんに代わった。
首を吊らなくて良かった。本当に良かった。そんな気はなかったけど。
帰ってよかったんだ。何か気が楽になってそのまま夕ご飯も食べずに
寝てしまった。あまりに早く寝たものだから、夜中の3時くらいに
目が覚めたが、もう一度寝ると目覚めたのは8時過ぎ。
朝ご飯を食べる気が起きずにひと風呂浴びて、チェックアウト。
なのにお腹が空いてくるから、買った駅弁を抱えて特急列車に乗り込む。
通路側の席だったが、駅弁を食べようとしたが止めた。
寝台特急「北斗星」とそろそろすれ違う時間である。
一番前の車両まで行き、雨で揺れて視界が悪くなっている「展望窓」から
しばらく前を見ていると、青いディーゼルカーが少し離れてすれ違った。
席に戻る。駅弁を食べる。ぼうーっとする。
車内販売がやってくる。アイスクリームを買った。
臨時があった頃の北斗星で食べたアイスクリームの味を思い出した。
ビールを飲みながら寛いだあのロビーカーに乗れなくなったのは
ちょっと残念ではある。
青森では向かいのホームで待っていた特急列車に乗り込む。
席は中学生か高校生と思しき集団で賑わっている。修学旅行だろうか。
しかし、幸いにも先頭の「展望窓」には誰もいない。
が、やはりこの事をすでに知っているようで何人かが見にやってきた。
その中に女の子は一切いない。むさ苦しい野郎ばかりが展望窓の狭い空間に
肩を寄り添うように前を見る。湿気で窓の内側が曇ってくる。
目的はひとつだけ。青函トンネルである。
普通列車が走っていないため、先頭車両から前が覗けるのはこの「展望窓」が
ついた形式の車両だけになる。
途中の木古内から乗り込んできた若そうな人も加わり、いくつかのトンネルを
抜けて、北海道最後の駅である知内を通過してしばらくすると青函トンネル。
俊足の特急列車は53kmあまりをわずか25分で駆け抜けていく。
トンネル壁をよく見ると、残りkmが数字で標識が付いている。
53から数字がどんどんカウントダウンしていく。
轟音の中を北海道新幹線工事のために乗客への駅見学が一旦休止となり、
旅客列車が一切停車することがなくなった臨時の吉岡海底駅を通り過ぎ、
しばらくすると海面下240m、トンネルの最深部を示す緑色の蛍光灯が後ろへと
流れていくと、今度は本州側に向けて上り坂となる。
竜飛海底駅も通過していき、しばらく轟音が続いて出口の光が見えてくる。
野郎たちを含めた学生の車内での自由時間が決められているらしく、
それが無情にも青函トンネルを出るまでと決められているらしい。
興味があるのか、トンネルが終わりに近くなる頃に、ふいに女の子2人組と
先生と思しき女性のも覗きにやってきたが、野郎が騒いで群がって
ただのトンネルを見て何がおもしろいのか全く理解できないと表情である。
女の子2人組に関しては、「どうやって見るの?」と囁き合っていたが、
ついぞ「展望窓」まで近づくことはなく席へ戻ってしまった。
見ようとはしたのだろうが、私のような野郎が張り付いていて戸惑ったという
というところが、本当のところだろう。
木古内から乗り込んだ若い人は青森から飛行機で帰るそうだ。
木古内から乗り込んだから北海道側の人間かと思ったが、ライトな「乗り鉄」
だったようだ。しかし、「展望窓」があるのは特急の名称に「スーパー」が
あるからすぐ分かるなんて、そんなことを知らなかったぞ!
青森に到着。先ほどの白いシャツに黒い長ズボンにスカートの学生たちは
ここで一斉に降りて行った。静かな車内を自分の指定席まで向かう。
八戸定刻着。事故に遭うこともなく、ここまで列車はやってきた。
行きもそうだったが、うれしい気持ちであっても、楽しい気持ちであっても
虚しい気持ちであっても、辛い気持ちであっても、不安な気持ちであっても
どんな時だって、定刻通りにやさしく、無言で、迷いなく列車は駅を発着する。
逃げたくなっても、帰りたくなっても、いつでも列車は待ってくれる。
後は新幹線で真っすぐと東京に向かうだけである。
東京に着く頃にはすっかり、夜20時である。
駅弁を抱えて乗り込む。夕ご飯に少し早いけれども駅弁の蓋を開ける。
八戸を出た時は曇り空で、しばらくは無粋にトンネルばかりの景色だったが
盛岡、仙台と東京に近付くたびに夕日が顔を出して窓に差し込んできた。
東京に着いてしまった。
新幹線は事故に遭うことなく、定刻どおりに到着してしまった。
東京から東海道線の普通列車に乗り換え。
ふと途中の横浜で下車。改札で210円足りませんよと言われる。
「ぐるり北海道フリーきっぷ」の東京都区内って蒲田までだったのね。
茅ヶ崎まで行かなくて良かった・・・。
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