2011年2月8日火曜日

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【北海道&東日本パスの旅 7日目】 駅の食堂と駅の喫茶店と

東根室
6:01発

↓ 5624D 根室本線

8:24着
釧路
09:05発

↓ 3728D 根室本線~釧路本線

11:36着
止別
12:48発

↓ 4732D 釧路本線

13:00着
原生花園
13:49発

↓ 4731D 釧路本線

14:12着
知床斜里
15:14発

↓ 4735D 釧路本線

15:49着
緑
16:03発

↓ 8737D 釧路本線

16:44着
摩周
17:06発

↓ 4737D 釧路本線~根室本線

18:29着
釧路
19:33発

↓ 2532D 根室本線

22:12着
帯広






朝4時半に目が覚めた。いや覚めてなくては困る。
始発駅の根室から乗るつもりだったが、東根室から乗っていくことにした。
降りる機会はあっても、乗り込む機会はそうそうないからだ。せっかくだから最東端の駅
から乗り込まない手はないと思って、早めに起きたというわけだ。
鈍行列車だけで移動する旅は必然的に早朝の列車で移動を始めることが多いので、
早寝早起きという、本来の人間が持っている生体リズムに戻れるので健康的であるが、
普段の生活でそれが実行できていないので、やはり早起きは少々辛いときがある。

根室駅からなら徒歩30分は見ないと不安である。地元の慣れている人でなければ
すぐに迷ってしまうような場所にある。成央小学校まで来れば、セイコーマートを目印に
左に曲がったり、右に曲がったりして住宅街の中にある。

「東根室地下道」と名づけれた線路のガード下を潜り、東根室へと向かうが、雨が降る
高台にあるホームには誰一人待ってはいなかった。ホームから見ると、向こうから犬の
散歩に歩いてくるおじいさん。朝飯前の運動だろうか、雨合羽を着て歩くおばあさん。
散歩がてら、東根室のホームの様子を覗くのが日課になっているのかもしれない。
おじいさんの付ける日記には、「今日の朝には珍しく、ホームに待ち人が・・」と書かれる
のかもしれない。2両編成の気動車は時刻通りにやってきた。わかってはいたが、すでに
始発駅の客で席は程々に埋まっている。根室本線らしく、朝霧のぼんやりした中を気動車は
走っていく。花咲、西和田の車両型の駅舎はまた綺麗に塗り直されていた。
駅名のフォント、ツートンカラーのデザインは同じ人が担当したものかもしれない。

昨日見た落石~別当賀の海と緑の丘は乳白色の霧に包まれて見えない。
晴れている日中帯に撮影、鑑賞するのがベターなのである。

別当賀。車両型の駅舎はペイントされているが、左下には「花咲線全通80周年 2001.7」。
厚床小学校が描いた様で、今年で89年目。来年90年を迎えることになる。
我が小田急線が我が80周年を最近迎えたので、それより少し前に全線開業したことになる。

朝早く起きているので、油断していると意識が飛びそうになる。
厚床。乗っている列車は2両編成だが、ここで後ろの一両を切り離すために6分停車する。
切り離された一両が唯一の臨時列車8325Dとして、厚床発根室行きとして発車するらしい。

「意識飛び」対策ではないが、時刻表を開いてみると今乗っている列車は茶内で
快速「はなさき」と交換するようだ。こちらが先に発車するようだ。
姉別。地元らしき若い女性が一人乗車。さらに時刻表を見ていくと厚岸で厚床止まりの
5627D、終点のひとつ手前の東釧路で5629Dと交換し、こちらが先に発車するだろう。

浜中。地元らしき数人が乗車。ほとんどがおばさんだが、2人ほど制服姿の女の子たち。
地元の高齢なほど、降りるのに近いロングシートの傾向が高いように思われる。
女の子2人は気まずくない位置を瞬時に「検索」して、後ろの方へと移動していった。

茶内。整理券の発行機械でトラブル発生。旅に出るとまれにこうした光景を見かけるが
乗務員が直そうと試みるも大抵は直らない。ワンマン故に運転も車掌も一人でこなさない
といけないので、機械を細かく見ている余裕などない。結局終点の釧路で直すらしい。
釧路で交代してから、トラブル関連諸々の報告をしないといけないので、乗務員の仕事が
余計に増えるのである。

糸魚沢で一人乗車。糸魚沢を出てからしばらくすると左手に湖、右手に沼が広がる。
よくこんな所に線路を敷いたものだと関心してしまう。
厚岸。地元のおばちゃんが2人下車。入れ替わりに学生さん数人の白いシャツ軍団。
後は高齢者が数人乗り込んできて、車内は賑やかになる。この車両の定員に近い乗車率
に違いないだろう。

門静。一人乗車。花咲線のラッシュ時間帯だろう。上尾幌でもおじいさんが一人乗車。
ロングシートを根城とする白きシャツ軍団は音漏れするほどの音量で耳へ音楽を突っ込み
任天堂のDSでゲームをする光景は北海道では列車を「汽車」と呼ぶ以外にこのまま首都圏
の通勤電車に切り取って見比べてもまったく違和感はない。

武佐。ここでいよいよ立ち客まで出てくるようになる。
このまま釧路まで乗っていってもよいのだが、気が変わって東釧路で降りることにした。
まだ下車したのない駅だからだ。東釧路から釧路まで歩いてとも考えたのだが、地図で
確認すると、東根室よりもさらに長い時間が掛かるようで道順は分かりやすいけれども、
逆に列車に乗り損ねる心配がある。

トイレがないので、近くのガソリンスタンドで借りる事にした。
釧網本線の起点駅であることを示す、0キロポストが立っている。待合室の駅舎を通りすぎ
構内踏み切りでホームに上がる構造の島式ホームになっている。ホームにはすでに白い
シャツの男子が一人。高校生だろうか。後は地元らしきおじいさんが一人やって来た。
それ以外に乗客は増える様子はなさそうである。昨日の暑さが嘘のように涼しい。
釧路側でも雨が降ったようで、日が差していないために暑さが和らいでいるのだろう。

もう一人乗客が現れた。青いブレザーの男子が一人、耳から音漏れさせながら駅舎に戻って
時刻表を確認し、また戻ってくる。北海道が地元の知り合い曰く、道民は時間にルーズだと
話に聞いていたが、昨日のノサップ岬へ行ったときに見かけた車の追い越しといい、
この男子のせっかちそうな雰囲気といい、結構せっかちな人種かもしれない。
北海道の多くの地域が車で移動することが前提になっているだろうから、運転本数の少ない
列車をじっと待つという耐性が備わっていないかもしれない。

ホームの時刻表には鹿対策のために、花咲線の発車時刻を変更する旨の張り紙があった。
鹿のために徐行運転するのは、北海道くらいだろう。我が小田急線は何も無くても大抵
徐行運転するのだが(笑)

列車がやってきた。根室よりもさらに混んでいるようだ。通勤、通学、そして我々観光客
が混じる車内は私のような関東圏に住む者はまず体験する事はない。
デッキには立ち客。車両真ん中のテーブル席は始発からすでに狙っていたのだろう、
おばさん方の団体が陣取っている。摩周まで足湯めぐりか、釧路湿原までの客だろうか。

釧網本線も列車本数はそれほど多くない。列車によっては車両運用の事情なのだろう、
あと数駅行ってくれば次の列車に乗り継げるのにという駅止まりの列車がある。
網走周辺まで行って折り返すか、釧網本線を乗り通すかのどちらかを選ぶことになる。
後者の場合はあまり寄り道ができないが、前者なら乗り降りする列車を調べてみると
何とか寄り道はできそうだと分かった。

まずは今乗っている快速「しれとこ」で止別まで行く。
そしてそのホームにある食堂で食事、次の列車で北浜へ。最後は原生花園に降りてから
釧路へ戻ってくるという予定である。特に原生花園は期間限定の臨時駅なので、下車する
機会も貴重なものになる。

釧路湿原。後方のデッキではスポーツ刈りの少年が夢中でカメラを向けている。
デッキにいた数人が降りていく。塘路でも数人が降りていく。団体客かもしれない。
釧路行きの普通列車とすれ違う。後方のデッキは撮影会場の様相を呈している。
テーブル席は相変わらず、おばちゃん方の談話室になっている。「談話室滝沢」ならぬ、
「談話室釧網本線」というところか。にぎやか車内の中、車窓からは釧路湿原が広がる。

茅沼。丹頂鶴が見られることで有名だが、この時期では流石に見られない。
ホームに機関車の動輪。おばさんが一人乗車。標茶では数人が降りていき、2,3人が乗車。
標茶あたりまでが地元利用者がよく利用する範囲かもしれない。釧網本線に入ってから
ある程度の規模がある街並みが広がる。窓を開けると心地よい風が吹いて来る。

南弟子屈の青い車両型の駅舎を通過。摩周。降りる客はなし。若い男性、中年男性が
一人乗車。席は結構埋まっている。網走まで午前中に出る貴重な列車のため、必然的に
混んでくるのは仕方がない。車内にはどこからマクドナルドのポテトのような匂いが
漂ってくる。誰かがお昼ご飯として食べテいるのかもしれない。
私の隣には摩周から乗り込んできた若い男性が座り、カメラを取り出して撮影を始めた。
どうやら車窓の景色を撮っているようなので、声をかけて窓側を譲ることにした。

こちらは座れればどこでも良いのだ。譲ったら何故かカメラ撮影を止めてしまい、
お互いの旅行話で盛り上がることになった。彼は周遊きっぷで、北海道を回っているようで
宗谷岬に行ったという写真を見せてくれた。北海道に2編成しかないという形式の車両の
写真や最近運行している国鉄色の赤い塗装のキハ40系も見せてくれた。
あと、釧路の駅弁情報。摩周の温泉情報や、摩周湖の鏡のような水面、そして川湯温泉、
砂湯があることは初めて知った。彼は知床斜里へ向かう予定だったが、旭川に向かうことに
するそうだ。離れた席から中年男性が一人こちらにやって来たが、旅の途中で一緒になった
旅行仲間のようだ。雨が降っている止別のホームに降り立ち、車内に残る彼らに手を振って
発車する彼らの列車にお別れの挨拶をする。駅舎の屋根には食堂の「駅馬車」のシンボル
なのか、風見鶏のような馬が立っている。観光客向けでもあるが、中に入ると雰囲気から
地元の人たちの憩いの場としても愛されている駅の食堂という感じだ。気取らない雰囲気が
大変落ち着いて個人的には好きである。ラーメン一杯だけにしようと思ったが、じゃがバタ
も気になるので一緒に注文。ゆっくりと食べないと次の列車まで間が持たない。
雨が降っていなければ、食後に駅周辺を歩き回ることにしたかったのだが、雨では店に
閉じこもっているしかない。食後にコーヒーでも飲んでゆっくりとしたいが、まだ旅の
半分なので、何があるかわからないので手持ちの現金はなるべく節約しないといけない。

発車時間になる少し前に店を出る。あわてる事はない。目の前がホームなのだから。
小さな女の子が乗り込む。その次に私が乗り込む。緊張しているのだろう、すぐ後ろに
人が気づかないくらいで、閉めようとしたドアを私が抑えてようやく振り返った。
列車は北海道では見慣れた白地に青と緑の帯が入ったキハ40系の1両。
浜小清水。制服の女の子が一人乗車。原生花園では中年夫婦が一組乗車。雨は降っている。

北浜。ようやく降り立つ事ができた。オホーツク海に近い駅として有名だが、
その駅舎にある喫茶店が気になって降りることにしたのだ。まず目を引くのが壁や天井に
喫茶店への扉と向かいのトイレのドア以外にはビッシリと貼られた名刺。しかし天井を
よく見ると、古いタイプの青春18きっぷや磁気定期券も何枚か画鋲で貼られている。
というより、天井にはどうやって貼ったのだろうか?肩車でもして貼ったのか(??)

撮影を済ませて、逃げ込むように店内へ。
カウンター席とテーブル席があり、テーブル席は客車で使われたらしいシートをそのまま
利用しているようで、ボックスシートでコーヒーを飲みながら、冬なら流氷を眺めつつ
列車がやって来るのを待つという何とも洒落ていて、贅沢な喫茶店である。

ボックスシート側に目を向けると、2組ほどのグループがボックスシートに座っている。
マスターの収集品だろうか、天井近くの壁にタブレットを収めるキャリア(自転車の
ワイヤー錠のような形状といえばわかるだろうか)や、蒸気機関車の車両形式を示す
プレートなど鉄道部品が控えめに展示されていて、気づく人には楽しめるようなしぶい
演出がされているのが何とも好ましい。なお、ボックスシートに座ってもよいかと
マスターの奥さんと思しき中年女性に訊ねたら、2人組以上でないと駄目らしい。

ボックスシートの客がいなくなってからマスターがもう忙しくないので、座ってもどうぞ
と言ってくれたのだが、列車の到着まで後数分だったので気持ちだけ有難く頂き、
レジ横に駅スタンプがあったので、手持ちのメモ帳に押していると列車がやって来た。

次は原生花園へひとつ釧路方面へ戻る。狭いホームに下りると生憎の雨模様だが、
この雨でも私の他に何人かが降りる。駅舎では入場券やオレンジカードの販売している。
節約したいところだが、観光客としてはただで見て通り過ぎるのもなんだか忍びないので
入場券の10枚セットを一枚購入した。
原生花園は海岸沿いに小さく作った花壇のような風情で、一周20分ほどもあれば見るのに
十分だろう。だがこの雨では、鳴り砂浜まで降りていく客は皆無らしい。
鳴り砂浜に着くまでに雨に濡れた植物に触れて、ズボンはほんのりと濡れていく。
これが分かっているから、後から観光バスでやって来た団体の観光客も誰ひとりとして
下まで降りてくる人は見かけなかった。
雨のせいで水分を含んでいるためだろうか、踏んでも音が聞こえなかった鳴り砂浜・・。

原生花園の植物に水遣りするためなのか、「となりのトトロ」に出てくるような昔の
レバーを上げ下げする方式の手漕ぎポンプ式の井戸がある。
晴れていれば他の観光客の目もあってちょっと恥ずかしいが、雨で誰もここまでやって
来る気配はないので、気にせずにレバーを上げ下げしてみる。水は出てこなかったが。
北海道の原生花園にくれば、もれなく「となりのトトロ」のあのシーンが体験できます(笑)

団体の観光客は望遠鏡のところまで、しばらくしたら姿が見えなくなった。
踏切を渡ったお土産などを売っている建物などに避難したのだろう。

先ほどの駅舎に戻ると、1600円分の「入場料」(原生花園は無料です)を支払ったのが
良かったのか、駅員が使っている本物の制服で記念撮影のサービスをしてくれるという。
この年になって、駅員の服を着て写真を撮られるとは予想していなかった。
制服といえば、小さいころに消防士の作業着を来た記憶ぐらいしかない。
少し寒いのもあるが、黄色い足の蚊が刺してきてかゆいので、踏切を渡ったそばの建物の
中へと逃げ込む。お土産や食べ物を販売しているが、観光地なら割高なのはどこも同じ。
しかし何も食べずに列車まで時間を潰すのは厳しそうなので、ジェラートを出す店で
夕張メロン味を選んだ。2色盛りのサービスをしてくれるというので、流氷オホーツクを
組み合わせにしてみた。氷のイメージしたような塊だが、どこかで食べたような味。
次回は食べるだけでなく、この目で本物の流氷をお目にかけたいものである。

列車の到着時間を見計らい、駅舎に戻ると原生花園に停車するキハ54系のオレンジカード
まで衝動買いしてしまった。何という不覚。販売員を兼ねた駅員氏が教えてくれた通り、
やってきた列車はキハ54系であった。乗客は結局先ほど降りた私と一緒におりた老夫婦
だけであった。知床斜里でまとまった客が下車。中斜里も同様に数人が下車していく。
ただし、南斜里から乗客に変化はなし。緑でようやく乗客が何人か乗り込んでくる。
ここで14分ほど停車する。前回乗車した臨時列車として運行されている「足湯めぐり号」が
先に発車してから、しばらくしてこちらも発車する。Iphoneはここでは電波は圏外。
こと釧網本線では圏外になる区間が長い。緑からは上り勾配が続いているのだろうか、
ケーブルカーのようにゆっくりとしたスピードで走っていく。トンネルを抜けると本来の
スピードに戻る。川湯温泉は残念ながらすぐに発車するので足湯はできなかった。

摩周。ここでは22分停車する。網走行きの列車と交換する関係だが、これだけ停車すれば
ちょっとの間だが、足湯を楽しむことができる。生憎の雨でも何人かが足を入れている。
見た目とは違い、足湯はこんなに気持ちいいものだと前回の旅で教えられたからだ。
川湯温泉よりはぬるいので、ずっと浸かっていたいが、そうもいかない。
網走行きの列車がやってくれば、こちらが発車する。まだ雨は降り続けている。

磯分内。乗客なし。標茶では学校帰りの制服姿が何人か乗り込んできた。
車内に少々の生活臭が漂ってくる。五十石。乗客なし。茅沼でもなし。丹頂もなし。
塘路で先ほどの学生さんが2人ほど下車していく。網走方面の列車と交換して発車する。
細岡。相変わらず、Iphoneは圏外である。隣のクロスシートでは窓側に座って携帯電話を
いじる女性が窓に反射して映っている。そのうちに3本の指で彼氏をダウンロードする事が
できるに違いない。火葬されるときは棺には花ではなく、携帯電話のモックアップで
埋めつくされる時代になるのかもしれないという妄想をしてしまった。

釧路湿原を出ると、Iphoneの電波が戻りつつある。遠矢で学生さんが数人降りていく。
すっかりと夜になった東釧路でも学生さんが殆ど降りていく。反対に停まっているのは
根室行きだろうか。そして終点釧路。ここでは次の列車まで約1時間待ちとなる。

計算していなかったが、釧路が舞台になっているという恋愛漫画の原画展が本来は17時まで
だが、今日は19時までやっているそうなので、時間つぶしに覗いてみることにした。
恋愛漫画を見たことはないので、よくは分からないが、少女が夢見る恋愛漫画らしい。
展示された数々の原画をゆっくりと見たが、釧路駅の1番ホームが出てくるのが何とか
分かるだけで、あとは地元でこの作品を読んでいるでないと共感できないだろう。
「僕等がいた」というタイトルのポスターが至るところで見かけたので、釧路駅が・・
というところで覗いてみたのが正直な理由だろう。全く不純な動機で申し訳ない。

19:33発の新得行きは1両編成。学生専用かと思われるくらい、学生さんしか乗っていない。
学校帰りの学生さんが、家路へ向かう途中の車内は仲間と談笑する大事な時間だろう。
特に列車本数が限られているような地域なら尚更である。どこかでカップラーメンを
啜るような音が聞こえたとしても気のせいということにしておく。
扉で仕切られたデッキもジャージと制服姿の女の子同士が談笑する秘密の空間となる。
扉越しに見る限り、誰にも聞かれたくない本音トークが繰り広げられているに違いない。

新富士。仕事帰りのサラリーマン風と学生さんが数人降りていく。
ジャージ姿のメガネの男の子がうろうろと前へ行ったり、後ろへ行ったりと落ち着かない。
列車の交換のために5分停車。ホームの反対側を釧路方面の特急列車が通過していった。

左斜め向かいのボックスシートでは制服の女の子が一人、無防備にも向かいの席に足を
投げ出した格好で鞄を枕代わりに気持ちよさそうに居眠りしている。
現在車両は、学校帰りの学生さん専用、走る談話室となっている模様。

新大楽毛。乗降客はなし。後方のボックスシートは男の子と女の子たちが一同にじゃれ合い
背中越しに楽しそうな空気を感じる。某掲示板だとこの場合「リア充爆発しろ」か。
乗ってくる客は学生さんだけだ。見事に私だけが客としては浮いている。
青春18きっぷではないシーズンは、学生さんばかりのまさに背中越しに感じているような
青春時間が日々、垂れ流しになっているのだろう。
列車を通じて、釧路の夜の日常を覗いているのは私にとっては非日常で何だか楽しい。

釧路発の青春列車はボックスシートの至るところで、リアル「僕らがいた」状態(笑)
あの恋愛漫画のコマの中に一人、放り込まれているような変な気分でもある。

庶路。学生さんが2人降りていく。クロスシートに座る友達にバイバイと手を振りながら
デッキの下に消えていった。
西庶路。夜のホームに学生さんと仕事帰りの中年男性が降りていく。
車内から徐々に青春の空気が抜けていく。夜の列車は静かになっていく。
左斜め向かいの女の子はようやく目が覚めたようだ。目が覚めるやいなや、早くここから
脱出する事を念じているかのように、両手で携帯電話で音楽を聴いている。

列車という空間でどうしたらよいか、時間の使い方は下手に見える。
携帯電話がないと、きっと彼らは急に踊りだすかもしれない。
村上龍著「5分後の世界」のロシアンマンボの後に、ヒュウガウィルスと同じく
倒れてしまうかもしれない。

白糖。学生さんが数人降りていく。待合室にいるジャージ女とボックスシートに座る
太目のジャージ女がガラス越しにお互いに手を振り合う光景。後方のデッキを振り返ると
高校生らしき男の子と女の子が微妙な距離を保って、会話しているようだ。
その距離は友達だがまだ彼氏彼女ではない、ということを示しているのか。

宮脇俊三氏よろしく、地元の日常を運ぶ列車にぼーぅと身を委ねるのは好きだ。
乗ったことがない路線で、こうした日常風景に出会える事は楽しみの一つである。
利用するのが主に地元の人間である以上、路線を特徴付けるのは日常の空気である。
このまま知らない日常に逃げ込みたいと思う瞬間が時折、やって来る。

後ろのボックスシートは部活帰りの集団らしい。
音別でここまで続いてきた青春列車は打ち切りとなり、完全に静かな車内となる。
ホームへ降りていった彼らの野郎どもは一緒の帰り道で女の子に告白するチャンスを
女の子たちはそんな事はお構いなしに、他の男の子が自分のことをどう思っているのか
何となく探りながら、だらだらと話しているのかもしれない。

相変わらず、雨は降っている。私を含めて野郎は4人ほど。
尺別。乗降客なし。運転士の吹く笛の音だけが夜のホームに響くのみだ。
直別も厚内も同様に誰も降りず、乗ってはこない。上厚内で3分停車。反対側を特急列車が
通過すると発車する。Iphoneはほぼ電波は圏外が続いている。
暗がりの中を、いつの間にか常豊信号所を過ぎたらしい。車窓を注意深く見ていたが、
駅名票のような看板を見つけることは出来なかった。

浦幌。昼間とは違い、誰も乗ってこない。半袖では少々肌寒くなってくる。
昼間の暑さとは対照的な夜の北海道ではやはり、上着を持ってきた正解だったようだ。
利別。浦幌行きの普通列車と交換。先ほどの浦幌行きは空気輸送状態だったが、
今交換した浦幌行きは2.3人ほどの客の姿があった。

幕別。背の低いシルクハットのようなものを被ったクラシックな格好の若い女性が一人。
駅前では学生さんと思しき若い連中がたむろしていた。次は帯広。今夜の宿泊地である。

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【北海道&東日本パスの旅 6日目】 納沙布岬まで20kmを歩いてみる

釧路
08:15発

↓ 5629D 根室本線

10:40着
根室






朝4時半に目が覚める。眠い。始発の列車で根室へ向かう予定であったのだが
誘惑には勝てずに二度寝し、起きたのは7時過ぎ。朝食を済ませてから出発。

8:15発の根室行きに乗り込む。
発車5分前だったが、席はところどころ空いていた。
隣のホームでは、これからやって来る普通列車に設置するサイドボードを
所定の位置に準備するおじいさん。清掃も兼ねている様である。

今日もよく晴れている。日焼け止め対策をせねばならない。
北海道まで来てこの暑さとはまったく予想外である。南稚内のキヨスクのおばさんも
釧路の立ち食いそばの店員の若いお兄さんも話していたように、本来なら長袖でないと
肌寒いくらいのはずであった。歩くと気持ちいいくらいに考えていたのだが、
どうやら暑さとの戦いになりそうである。

列車は釧路川を渡ると、東釧路。
幅の狭い小ぢんまりとしたホームで釧路行きと交換。釧路行きが先に発車していった。
一人おばあさんを降ろすと、こちらもホームを離れていく。

ここから終点の根室までは別名、花咲線として単線をひた走る。
武佐。青年が一人乗車。今時の若者は北海道でも格好は変わらない。
気動車の一両編成は、リズミカルに線路のジョイント音を刻みながら緑の中を走る。
尾幌へ向かう途中でiphoneの電波は圏外になる。北海道を旅行していると、時折
日常からの電波が圏外になる。日常からの逃避に大変都合がよい。

上尾幌。釧路行きと交換。今乗っている列車は一日に2本しかない貴重な各駅停車。
狙ったわけではないが、なかなかない機会なのでじっくりと各駅を見ることが出来る。

尾幌。車掌車を転用した駅舎。北海道だとよく見かけるタイプのもの。
たいていは中で誰も待っている姿は見かけないのだが、初めて待っている人の姿を見る。
この列車に乗る様子はなく、腕時計を見ながら時間を気にしているおばあさんが二人。
これから来る釧路方面の列車を待っているのかもしれない。
きれいな状態の駅舎はここ最近になって、補修したのかもしれない。動物のかわいい絵が
ペイントされているが、ちゃんと利用されていることを実感できるのがうれしい。

門静。右手に砂利が広がっているが、おばちゃん達が昆布を干している最中であった。
太平洋が広がりはじめ、根室本線最初のハイライト。海沿いの住宅街ではここでも
昆布干しの光景を見ることができる。しかし、これは海ではなかった。厚岸湖である。

緑の沼地を左手に見ながら、列車は走っていく。
糸魚沢。乗降客はなし。ドアが閉まる。茶内で4分ほど停車。トランクを引いた中年女性が
一人降りていった。上り列車と交換すると発車していく。

茶内は小規模な住宅街という印象。4分停車するなら、私と同じ考えを持つ同業者は
早速ホームでの撮影会となる。茶内を出てしばらくすると、列車はスピードをあげて
それまでの2拍+2拍から3拍の早いジョイント音になる。

浜中。乗降客なし。姉別で作業員が3人。これから移動して保線作業でもするのだろうか。
窓から下を見下ろすと、走る去る風で草が避けていく。となりのトトロに出てくる
「ねこバス」に乗ったような気分になる。

厚床。2人乗車。地元のおばあさん方だろう、いずれも暑い、暑いと口にしている。
地元の人がそう言うのだから、異常な暑さに違いない。
線路沿いから少し離れた「地震計測」と書かれた建物で作業員が3人ばかり作業していた。
そのうちの一人はこちらは向いて何かを書いていた。

初田牛。乗降客はなし。
別当賀で2人乗車。この時間帯の根室行きはそれなりに利用者がいる。
無人駅で乗ってくる人の姿を見ない事が多いが、駅がある限り、利用者がいるのだという
当たり前の事実を実感できる事がなによりうれしい。

3つ目のハイライト。今度は本当に太平洋が左手に見えてくると、緑の丘の上の線路を
列車は優雅に走り去っていく。北海道以外ではおそらくこんな景色はないだろう。
うまく表現できないことは何とも隔靴掻痒、こんな所に線路があって、列車(一両なので
列車ではないが、そう呼びたい)が走るのが少し現実離れしているような気がしてくる。

昆布盛。乗降客はなし。細長いホームが後ろへ去っていく。西和田も乗客はおらず。
花咲。この駅は初めての北海道旅行で下車した無人駅である。当時の記憶どおり、
少し奥に広がる海沿いには風車がいくつか、ゆっくりと回っている。
緑の崖に風車が立ち、その向こうはずっと海が広がっているのだ。

東根室。すでに有名な日本最東端の駅。
駅前には車が停まっており、目的は明らかだが、撮影客だけで賑やかである。

終点根室。少し前までは実はこちらにも「日本最東端の駅」と看板があった。
初めて北海道旅行してやってきた当時はそうなっており、最東端の駅が2つあるという
奇妙な状態だったが、ここ最近は「日本最東端有人の駅」に修正されている。

根室から早速道道3号線に向かってもいいのだが、折角なので先ほど通り過ぎた
日本最東端の駅へ寄ってみることしたい。列車では何度か通り過ぎことがあるが
実際にホームに足を踏み入れた事がなかったのである。
根室から線路沿いならそれほど距離はないのだが、線路沿いに歩けるような道がない。
地図をよく確認しながらでないと忽ち、迷ってしまう。もともと駅が無かったところに
できた駅という歴史を後で知り、それでふたつの「最東端の駅」の謎が判明した。

IphoneのGPSを使いながら、住宅街の中を歩いていくとようやくたどり着いた。
住宅街の中に少し高台にある板張りのホームは、根室駅に比べると最東端という雰囲気が
あまりしない。「日本最東端の駅」という控えめな木の柱がなければ知らない人は全く
知らないだろう。根室駅の「日本最東端有人の駅」の看板は東根室が出来てここ近年まで
「日本最東端の駅」となっていた。歴史的に見れば、根室駅の方が長いので、看板に対する
気合の入り方が東根室とは違うのは当然である。だが今や東根室がもっと主張しても
良いのだが、控えめな感じなのが何とも不思議と思えるのが一観光客として印象である。

列車が来るところを撮影したいが、あと1時間程やって来ない。
これからの行程を考えると、ここでのんびりとする訳にはいかないのでホームだけを撮影し
納沙布岬へ向けて歩き出すことにする。
まずは道道35号線へ。「海岸町一丁目」の信号がスタートラインとなる。時刻は12時。

予定ではもう少し早い時間から歩き始めているはずだったが、朝起きれなかったのである。
帰りも歩いて根室に戻るという当初の予定は変更し、帰りはバスで根室に戻ることにした。
稚内でまさか日焼けするとは思わなかったので、日焼けした後では遅いのだが、これ以上
日焼けしないためにも、すでに日焼け止めクリームを塗って来た。

今日も日焼けしそうな日差しである。しばらく歩いていくと左手には海が広がってくる。
道道35号線は列車の窓から見た道路とは正反対に車の往来が頻繁にある。
地図では分からないが、道は上り坂と下り坂が緩やかに繰り返している。歩き進めるうちに
道路沿いにはあまり家が建っていないことに気づく。そのために左に広がるオホーツク海が
よく見えるのだが、それもそのはずでかつて走っていたオホーツク海経由の路線バスが
廃止されており、実質車でしか往来するしかなくなってしまったからである。
根室駅周辺でないと、通勤通学も現実的ではないだろう。家が少ない地域にこれほどまでに
車が頻繁に通るのは、観光客だけでなく地元の人も混じっているのかもしれない。

頻繁に通るといっても、アップダウンが激しいために見通しが悪い区間があり
車も下手にスピードを出せない様子だ。または周辺に何もないからゆっくりしたスピードに
こちらからは見えるのかもしれないけれども。
海と牧草と放牧されている数匹の牛。北海道でなければなかなか見れない景色だろう。

歩いてから1時間半。目をこらすと遠くに白い柱らしいのが見える。納沙布岬の白い塔だ。
しかしまだその姿ははっきりとはしない。その少し手前に2機の風車がゆっくりと回って
いるのが確認できる。ゴールの灯台はまだまだ先である。
東京のように高い建物など邪魔するものがないので、遠くまで見渡せる。

スタートから2時間経過。原生花園公園の前に到着。ちょうどトイレがあったので用を足し
ちょっと一休み。進むべき方向に目をやると小さかった灯台は前よりはっきりと見える。
リュックに忍ばせておいたココナッツビスケットを栄養補給に齧っていると、原生花園公園
の入り口となる木の柵からポニーが一匹顔を出していた。彼にお別れの挨拶をしてから
あの白い塔を目指して再び歩き始めることにする。

地図ではわからないが、根室駅周辺と比べると家は少ないが住民の気配は感じられる。
干されている昆布がその証拠だろう。日差しは強く、北海道とは思えない暑さには参るが
途中で休憩を入れたので何とか歩き通せそうである。
しばらく歩くと、道路は先ほど遠くから見えた2機の風車のすぐ横を通りすぎる。

前方の白い塔がだんだんと大きくなってくる。道路は右にカーブしたり、左にカーブしたり
を繰り返す度に、白い塔は右に移動したり、左に移動したりする。歩いている人が珍しい
らしく、すれ違う車からの視線を感じる。歩いて4時間もかけて納沙布岬を目指そうなんて
よほどの物好きでなければまずはやらないが、車ではこのはるばる来た感はわからない。

途中から何故か歩道が無くなる所がしばらく続くので、歩くときは注意が必要だ。
頻繁に車を見かけるがほとんどが納沙布岬からやってくる車で、私と同じ方向の車は
あまり見かけない。見かけても数台で、少し前方で後方の車が追い越しをかけるのを
何度か見かけたが、道路沿いの観客(=私)に見せたい心理が働くのだろうか。

途中で湖が見えてくる。トーサムポロ沼という海の跡らしい。
沼の向こうに緑の大地が広がり、その奥に白い塔が右手に見える。ゴールはもう少しだ。

最後の1時間が長く感じる。納沙布岬まであと10kmを示す看板を見てから2時間経って、
ようやく到着した。時刻は4時過ぎ。予定通りのペースである。白い塔や北方領土返還を
願うモニュメントを見に行きたかったが、この暑さの中では4時間も歩けばヘトヘト。
そばのベンチで買っておいた1リットルの紙パックコーヒー牛乳を飲みながら、海の向こう
に霞んで見える淡く黒い島影を見る。国後島、そして歯舞諸島だろう。実質今もロシアの
領土となっている島々の返還を願う気持ちは根室駅前の「返せ北方領土」の看板よりも
より強く静かに感じる場所である。

体力が回復したところで、「四島の橋」という名のアーチ方のモニュメントを見上げる。
珸瑶瑁水道(オホーツク海とは呼ばのは愉快ではないだろう)の先で分断された元日本領土
を再び日本に繋ぎ止めたい、そしてその願いを世代を超えても渡したいという意味で
「橋」が使われているのだろう。それはすぐそばで燃え続ける炎も同じ意味である。
返還を祈る気持ちを消さないように、消えないように燃やし続けているという。

「希望の道」。石畳の所々に各都道府県名が刻まれた石が埋め込まれている。
この祈りが北海道だけでなく、日本全体で祈るべき一大事であることを静かに訴える。

そばの「北方館」は2階建ての横長の白い建物だが、入り口そばでは署名を求める活動以外
後は展示物だけという感じで、広く多くの人に理解を深める趣旨こそはわかるのだが、
今ひとつ力が入っていない印象がある。どうしても観光客向けの一スポットという感じで
車や観光バスでやってくる観光客の殆どは「北方領土」には関心はほとんど無い様で、
納沙布岬から遠くの島々を見ていたときに老夫婦から記念撮影を求められた時は、なんだか
やるせない、無力感のような気持ちでカメラを向けていた。

ここは本来北方領土返還の理解を求める場所で気軽に記念撮影をするような場所ではない。
しかし「北方館」やすぐ後ろの「平和の塔」と名の白い塔を維持するためにはどうしても
地元だけでなく、観光客からの収入が必要になって来る。観光地に成り下がっては駄目だが
観光客すら来ないのでは困ってしまう。北方領土の問題をどう伝えていくのかが実に
そのバランスが難しいものと考えさせられる。

白い塔は予想したとおり、展望塔であった。
もう閉まっているかと思ったが、18時まで開いているようだ。帰りのバスは17時29分。
それを逃すと19時過ぎまでバスが来ない。扉を開けて中に入る。受付には若い女性二人。
場末な雰囲気だからか、他に客がいないからか、あまり元気がないように見える。

エレベーターで3階、そして4階が展望台である。900円の入場料がが観光客としては
割高な気はしたが、はるか奥まで続く地平線が丸く湾曲しているのはやはり地球が丸い
事を改めて実感させてくれる。今まで歩いてきた道道35号線を見下ろすと、根室方面は
先が白く霞んで見えないけれど、感慨はひとしおである。

もうすぐバスがやってくる時間なので、トイレで急いで着替えてから展望そばのバス停で
しばらく待つ。17時29分ギリギリになって滑り込むようにバスがやってきた。
バスは夕暮れの海岸沿いを今度は太平洋周りに根室市街に向けて戻るのだが、
次のノサップ岬のバス停から一人若い男性が乗ってきた以外は乗客は増えなかった。
この時間帯はほとんど利用客がないのかもしれない。バスが走っているルートだけに
太平洋沿いの道道35号線は家が多く、海があまりよく見えない。
改めてオホーツク沿いを歩いてきて良かったと思った。行きでもあったが、バスの後ろから
追い越しをかけていく車があった。バスの運転手もその辺は心得ているらしく、適当に
バス停に停車してやり過ごしていた。夕食はエスカロップと決めていた。
駅周辺には出す店があるが、前回の旅で閉店間際で駆け込んで迷惑をかけてしまった
ジャズ喫茶「薔薇」に行くことにした。一旦ホテルにチェックインして荷物を置いてから
その店は向かう。前回はものすごい雪だったが、今は夏。でも肌寒くない。

駅に近い「ニューモンブラン」に比べると、こちらはあっさりとした味付け。
それに瓶ビールを注文する。ジャズが控えめにゆっくりしたテンポで流れる店。
釧路のスパカツより、私には根室のエスカロップが好みに合いそうである。

ホテルに向かう途中に気づいたが、去年の冬にお世話になった駅前の「タイエー」は
セイコーマートに変わっていた。明日は釧路へ戻り、ちょっと釧網本線を寄り道しながら
帯広へと向かうことにする。早めに寝ることにしよう。

つくもノヲ”X="1≠ 569


【北海道&東日本パスの旅 5日目】 再び2429Dとスパカツ

旭川
08:10発

↓ 2154M 函館本線

08:56着
滝川
09:37発

↓ 2429D 根室本線

17:39着
釧路






朝6時半に目が覚める。私の場合、起きなくてはならない1時間前にセットしておくのが
肝要らしい。目を覚まして歯磨きをする。旭川四条からも旭川からも離れた中間くらいの
地点に立地するホテルだが、窓を開けると宗谷本線の線路が見える。ゆっくりと列車が
走っていく姿を鑑賞できる。隠れたトレインビューホテルでもある。
このホテルはサウナやお風呂をメインに、月単位の連泊利用も提供しているために
マンションの部屋そのものなので、さながらウィークリーマンション利用者の気分だ。
ただし、ビジネスホテルと違って小さいながらもキッチンが付いているので、歯磨き
しながら、髭剃りをしながら、テレビを見ることができる。マンションの一室なので
広々としてゆったりしている。これで4000円を切るのだがら、かなりの良好物件(笑)。

旭川始発の列車に乗るため、7時半にはホテルを出払う。
発車10分前。ホームで待っていると5分前になって岩見沢方面から711系の赤い3両編成が
ゆっくりと入ってきた。先頭車両の前よりには、山登りにでもいくのか行商のような
大きなリュックを背負って何人か若者が乗り込んだ。

先頭車両の中央付近が空いていたので、左側のボックスシートを選ぶ。
右側にしなかったのは窓が少し汚れていたからだ。これは結構気になる事なのだ。
定刻どおり、列車が発車する。発車するとすぐ隣のボックスシートには高校生と思しき
年代のカップル。彼氏の方がやたらとテンションが高いのは、どうやら異性と付き合い
初めた経験が少ないのかもしれない。もっとも実は私はたった「一日」しかないので
人をどうこう言える立場にはないのだけれど・・。

制服姿の彼女はのどが渇いた、と言うので、ペットボトルのお茶を差し出していたのだが
どうやらそのやさしさは伝わっていなかった様だ。彼女の駅で降りて喫茶店でも連れて
いけば、彼の株はもっと上がったのかもしれないと勝手に心の中で指摘してみる。
しばらく何となく彼らを観察していると、彼女は納内で降りるようだ。
彼女がここで降りることは知らなかったらしく、つられるように後を追うようにして
降りていった。もう少し話していたかったのに残念、という表情に見えた。
彼女にとっては、単なる男友達なのかもしれない。それでも川の水面近くで誘うように
踊っている疑似餌を必死に追って、結局釣られてお終いとなったとしてもアタックする
ことに燃えるタイプに彼はどうやら当てはまりそうだ。九州のように3度断られても
諦めずにアタックするか、しないかでリアル充実(リア充、と略すらしい)か否かに
分かれるのかもしれない。ルックスだけではなく、プラスアルファが必要なのだろう。

納内を出てからしばらくしてトイレに行きたくなった。
以前ほど緊張しなくなったのか、決まった時間帯にお通じが来るようになったので
トイレのある車両か、その近くでないと少し不安になる。何度か旅を通して、少しだけ
度胸のようなものがついたのかもしれない。

滝川。本日のメイン列車でもある。
2429Dが列車番号だが、JR北海道が宣伝し、話題が広がったことで、芸能人のごとく
一躍時の列車になっている。以前はそれほどの乗車率ではなかったと思ったが、
席はほぼ埋まっている。私のように乗りとおす物、途中の富良野辺りまでの区間利用など
乗車目的は様々だろう。サイドボードもそれまでの白地に「釧路」と書かれただけのが、
専用のサイドボードに変わっており、JR北海道の力の入れようが伝わってくる。
(完全乗車証明書の配布期間も2011年の10月まで延長なったそうだ)

特に富良野への観光客にとっては、従来の特急列車だけでなく、「特別な」鈍行列車で
北海道のローカル線体験を気軽に楽しめる、という別のアプローチが選択できる。
もちろん旭川あたりに宿泊する行程が前提になるが、これをきっかけに時間をかけて
ゆっくりと旅行する機会が増えれば、今まで特急列車で素通りしていた観光客を取り込む
よい影響が生まれる事をJR北海道としても、期待しているのかもしれない。

この旅行のためにというわけではなかったが、最近読んだ鉄道関連の本によると、
もともと札幌などからはるばる20時間以上かけて走っていた列車の最後まで残ったのが
この滝川~釧路である。しかもこの滝川~釧路のダイヤは昔はほとんど変わっていない。
「はまなす」を除いた長距離の道内夜行列車が無くなった現在、将来夜行列車が不要に
なっても継続的に使用できるようなダイヤ編成は先見の明というべきだろうか。

今朝は慌しい出発で優雅に朝ごはんを食べる余裕がなかった。
途中で買う時間もなかったので、何も買わずに滝川まで来た。しかし腹が空いてきた。
2429D列車はすでに1番線に停車していた。そのそばの立ち食いそば屋から良い香りが
漂っている。食事は座って食べたいというのが信条なので、立ち食いそば屋は好きではない
のだが、駅スタンプを押すように旅の記念という気分からか、かけうどんを注文した。
おそらくJR東日本のエキナカにある駅そばよりもうまいだろう。小田急の箱根そばとは
肩を並べるかもしれない。つゆは濃い目。空きっ腹に染み渡る。美味しい。

食べている店員の若いお兄さんが顔を出す。店の中は大変暑そうである。
お兄さんと発車までのひと時をおしゃべりで過ごす事になった。話をするのが好きな様だ。
お兄さんいわく、この暑さは異常らしい。これは南稚内のキヨスクのおばちゃんも
同じ事を話していた。今の時期なら肌寒くなるはずだが、この暑さでは駅弁をあまり
置けないが、この滝川でもネタが痛んでしまうので、すし屋も泣いている状況らしい。
さらに盆地という地形から、寒いときは徹底的に寒いが、暑いときは徹底的に暑い。
根室に行くのだ、と話したら、根室はさらに暑いだろうという。海からの蒸気が暑さに
拍車をかけるそうだが、果たして真相はいかに。行ってみれば分かるだろう。

発車5分前になったので、お兄さんに別れを告げる。
かけうどんをさっと胃に流し込んで、すぐに車内に乗り込んで席を確保できたのだが、
今回は北海道をゆっくりと楽しむのが大きなテーマにしている。せこせこしてはいけない。
座れるところに座れば良いのだ。

定刻に2429Dは滝川のホームを離れていく。

赤平。れんが造りの駅舎は宗谷本線の美深を思い出す。
先ほどのお兄さんの話を思い出しながら、メモをしている。2429Dが停車していた1番線は
かつては駅弁の立ち売りがあったそうだ。今は数えるほどの気動車が発着するだけだが
かつては長編成の客車の窓から、客が駅弁を買い求める光景があったのだろう。

平岸を出たあたりで相席のおばあさんに話しかけてみた。
なんと同じ神奈川県の町田からはるばる列車でやってきたという。函館本線を回ってきて
今夜は釧路で宿泊。明日は釧網本線で旭川に戻り、札幌から北斗星で帰京するそうだ。

野花南を出てしばらくすると、長いトンネル区間となってしばしお話を中断。

度々鉄道旅をされているようで、東西南北のそれぞれの最端の駅は制覇したという。
「日本一周鉄道の旅」でトワイライト・エクスプレスにも乗ったという。うらやましい。
私はまだ憧れのその優雅な緑色の客車には乗ったことはない。果たして将来乗れるのか。

トンネルの湿気で窓が曇る。窓を開けていないと暑い。
北海道の夏はこうも暑いのか。以前訪れたときとはかなり気候が異なっている。

富良野。大半の客が降りていく。今や言わずと知れた代表的な観光地である。
例のおばあさんは景色を楽しみたいということで、斜め右後ろのボックスシートに移動。
会話もそれなりに気を遣うので、後は一人で楽しみたいのが本当のところだろう。

実際、私も只見線の臨時列車として乗った「風っこ会津只見号」で相席の青年との会話に
集中していると景色を楽しむのはなかなか難しいのである。
確かこの時は只見の駅前で、この臨時列車に合わせて食べ物や飲み物を販売する模擬店が
いくつか出ていて、買ったものでしばし昼ごはんとしたが、私が彼に近づくと彼は何も
言わずに別の場所へと移動してしまった。話しかけられるのはいいが、ある程度は距離を
置いて基本は一人で楽しみたいのである。

そうした経験があるので、後は一切話しかけることはしないことにした。

例のおばあさんは一眼レフで色んなアングルで停車中の二両編成にレンズを向けていた。
富良野を発車間際。隣のホームでは青年がデジカメに三脚を立て、自分を入れて撮影して
いた。隣のボックスシートに座る中年男性は恐らく同じ目的の客だろう。
すでに持ち込んだ日本酒やら食べ物やらを広げた半個室状態で撮影業務も忙しそうだ。

金山。お父さんらしき男性と小さな女の子が降りていく。
女の子を抱いたその男性の手にはおむつの袋がぶら下がっていた。買出しも大変のようだ。

東腰越。なんという湖だろうか。その奥を山が囲んでいる。
駅舎そばにどこかのホテルらしき送迎ワゴンが待っていた。そのワゴンに列車を降りた
中年女性客が一人乗り込んだところで、列車は発車していく。

次は幌舞。ではなくて幾寅。
この駅でまとまった人数が降りるのは、同じ考えで降りる人だけである。
ゆっくりと撮影したいなら、次の列車を待つ行程を組む必要があるだろう。

隣のボックスシート氏は席を暖める余裕はなさそうだ。
主がほとんど座っていないその席に目を向けると、「全国駅前銭湯情報」なる本があった。
そんな本があるのか。500円で買える安宿情報本なら知っているが。

落合には12:08着。ここで13分ほど停車する。
観光客としてはひとつ隣の幾寅で停車してほしいのだろうが、退避設備上の理由の他に
じっと13分も停車するのは、この落合駅が元々、蒸気機関車の配置が必要だった歴史を
経てきた名残ではないかと思われる。今でこそ、狩勝峠を短編成の気動車は難なく
上ったり下ったりをしているが、勾配をできる限り避けるように配された旧線の線路は
今の新線よりはもう少し北寄りを遠回りする形で機関車がうなりを上げながら、客車を
牽引していた時代があった事だろう。しかしその眺めは今の新線になってからは失望の
声が聞こえてくるほど、絶景だったという。今は列車の中からその眺めを拝むことは
叶わないが、今も列車が走っているなら、日本「三大」車窓である。(今は「二大」・・)

落合のホームからも見えるが、列車が発車してしばらくするとトンネルの入り口が近づき
列車ははトンネルの闇と轟音に包まれる。落合側と石勝線のトマム側からやってくる線路
は同じトンネル内で合流し、根室本線として釧路まで向かう形になっている。
そうした線路配置のため、釧路方面に向かうときは「入り口が2つ、出口は1つ」という
全国にも珍しい構造の長大トンネルになっている。

12:25。右手から線路が合流し、その3分後にはトンネルを出た。
先程の銭湯情報氏は相変わらず、デジカメ業務に忙しい様子である。

トンネルを出たら、進行方向左側のボックスシートに座るべきだ。
大きなS字カーブを描きながら、列車は狩勝峠を下がっていく。旧線に比べたらこちらの
眺めは劣るのだろうが、斜め上に視線をやれば先程走ってきた線路が見えてくる。
能ある鷹は爪を隠す、ではないが、それほどスピードを出していなかった気動車は
この大カーブを気動車らしからぬ軽快なスピードで飛ばしていく。気持ちいい。
過去にもここは列車で通り過ぎているが、カメラを向けてしまう魅力があるらしい。

記憶通り、十勝清水では学生さんの団体や地元の方が乗り込んで来る。
ここから先も記憶違いでなければ、地元客の乗降が続く筈である。
今乗っている列車も含めて、札幌近郊路線を除いてはまだ車両の端がロングシートで
それ以外が4人がけのボックスシートというスタイルになっている。
若い地元客、すなわち高校生などの学生諸君はロングシート、私のような観光客は
ボックスシート、という基本的な住み分けが出来ている。

ボックスシートに先客がいる場合はそうなるけれど、団体のリーダー格が人数分座れると
計算したならボックスシートにも座ってくる。尤も計算というよりはその時の気分
というのが、正確なところか。残りのメンバーはその気分に合わせて動くのである。
気分優先で動く団体さんの場合は、ボックスシートで座れない人が出るとその人は
私が座っている側のボックスシートには座らずに肘掛けに寄りかかるよう立つ。
座れる席があっても大抵は座らない。理由は簡単。気まずいからである。

白いシャツの制服を着た女の子とパピコ。ショートヘアの子はパピコを手にしながら
友達と談笑している。私は今、パピコになりたい。

白糖。ホームではこの列車狙いと思しき男性がカメラを向けている姿。5分停車。
西庶路。学生さんが一人乗車。庶路。民家に柵がないホームはどうやら使われておらず
代わりに植物が植えられているので、間違って待つ人はいないだろう。

夕日を背にして列車は釧路に近づいていく。
阿寒川を渡る頃には風に乗って磯の匂いが開けた窓へ入ってきた。

大楽毛。ここで12分停車する。
貨物列車の通過。上り普通列車が島式ホームの反対側へ到着すると同時にこちらは発車。
新富士に向かう途中で高架になる。新富士で地元客が数人乗車。釧路はもうすぐだ。

先程の町田からやって来たおばあさんは親切にも運転士から訪ねた情報を教えに
私のボックスシートに来てくれた。改札口の駅員に申し出れば乗車記念証がもらえる
とのこと。そして列車は8時間を経て、終点釧路へ。
8時間はあっという間である。静岡県を鈍行列車で横断するのは苦痛でしかないが、
この2429Dでは8時間でも不思議な事に物足りない気持ちになる。

ホテルに荷物を置き、洗濯物をコインランドリーに放り込む。
この地ではB級グルメと有名(?)な「スパカツ」を食べに、下調べしておいた
「レストラン泉屋」に電話で営業時間を確認する。webでは22時となっていたが、
実際は21時半まで。21時にオーダーストップだという。コインランドリーでの
洗濯、乾燥が終わって出かけることにする。

さて、スパカツ。注文してしばらく待つとウェイトレスの若い女性が持ってきたのは
熱々になった鉄板にスパゲッティーとトンカツが載ったものである。
初めてなので無難に普通のサイズを選んだのだが、普通でもお腹いっぱいになる。
というより、なんとか食べきったという感じであった。
会計時にウェイトレスに訊いたら、丸い鉄板で出る「大盛」もあるとのこと。
私の能力ではとても無理であろう。

明日のために、今日は早めに寝ることにする。

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【北海道&東日本パスの旅 4日目】 ノシャップ岬へ歩き、旭川四条駅の愛

南稚内
14:16発

↓ 4332D 宗谷本線

(15:12着)
幌延
(15:50発)

↓ 4334D 宗谷本線

(18:22着)
名寄
(18:24発)

↓ 330D 宗谷本線

20:12着
旭川四条






朝9時に目が覚める。9時半に目が覚める。
昨夜稚内駅の観光案内のおばさんに訊ねたところ、徒歩で1時間半の距離だという。
バスに乗っても良いのだが、北海道に入ってから始めの行程なので軍資金は節約しないと。
往復3時間、ノシャップ岬で1時間くらい滞在する事を考えて余裕を見て稚内に戻るのに
5時間の計画。南稚内から稚内へ歩く。丁度20分。このペースであれば1時間少しで
ノシャップ岬に到着出来そうだ。

稚内駅を通り過ぎたところで、ふと思い出して寄り道。北防波堤ドームを忘れかけてた。
初めて訪れたのは雪が積もっていた冬。戦前の短期間ではあったが、
旧稚内桟橋駅の防波堤として使われていた。
使われなくなってからは朽ちるのに任せていた状態だったが、地元の要望で昭和55年に
当時の姿に復元。その大事な北海道遺産である柱の周りの積もった雪に人目に付かぬよう
あまりの寒さに我慢できず、小用を足してしまったのである。

韓国か中国らしき若い男性がひとり、デジカメのセルフタイマーで記念の動輪と一緒に
撮影しようと頑張っているが、強い風でうまく撮れない様子だ。声をかけて写真を撮って
あげると、彼は大阪から飛行機でやって来たと話してくれた。昨夜は旭川に寄ったそうで
気温は20℃を下回ったそうだ。はるばる北海道まで来たのに日焼けする程の暑さが続いて
いるから、ようやく北海道らしい涼しい気候を期待出来るかもしれない。
アジア系の彼が車で去るのを見送った後、北防波堤ドームに近づいてから前回の無礼を
詫びておく。何となく胸のつかえが消えた気がした。

これで気持ちよく、ノシャップ岬へ歩いていけそうだ。
歩き始めると磯の匂いが強く鼻に付くが、飛んでいるタンポポの毛を見て少々驚く。
サイズが大きいのだ。スーパーマリオのデカ面、と言っても分からないだろうが、
そんな事を連想してしまった。
最北の地でもトンボが飛んでいる。秋の訪れを知らせる使者なのだが、北海道なのに
夏のような強い日差し。北海道だからと思って特に日焼け止めを塗らなかったが、
これなら塗った方がよかったかもしれない。

しばらく歩いていくと地元では見られないようなクモが巣を張っている。
よく見かける足が踏切のような黄色と黒のしましまのヤツではなくて、全身が青い色した
クモである。何という名前なのか、知る気にはならない。
正面遠くには赤と白でしましまになった灯台が見えてくる。
左側の開けた一帯は陸上自衛隊の基地のようである。緑の丘に物物しいアンテナが
いくつか建っている。赤と白のしましま灯台はノシャップ岬のトレードマークというより
水族館のオブジェのような扱いである。灯台の前で撮影する人はおらず、その近くに
設けられたイルカのオブジェの前でやって来るカップルや夫婦などが撮影している。
一種の儀式の如く、撮影するためにそそくさと車やバイクでやってきた彼らは撮影が済むと
一休みすることなく、店に入ってみやげ物を見ることなく、車やバイクで帰っていく。

こちらは1時間半を歩いてきたが、この暑さではすぐに引き返す気にはなれない。
あまり出費はしたくないが、この暑さではアイスクリームが恋しくなってくる。
土産物屋に入り、ふと目に付いたのが250円の「稚内牛乳」で作られた
というチョコレートアイスクリーム。
暑い中を歩いて来ただけに甘いのと冷たいのが染み渡る。
体力が回復したようである。稚内駅へ向けて歩く事にしよう。
行きは途中から車の通る大きな通りに入ってしまったので、帰りは海沿いの道を
磯の匂いを嗅ぎながらゆっくりと歩いて行く。
路線バスで走り過ぎていたら、おそらく気づけなかった風景がすぐそばに広がる。
漁に使う網が天日干しされており、その隣では昆布も干してある。
そして左斜め前方に目を向けると北防波堤ドームの背中が見える。
さらに奥には細長い黒い島影が横たえている。サハリンかもしれない。

稚内駅のホーム、そばの踏切を横切ろうと思ったが、ホームに特急列車が
停まっている。どうやら回送として引き返すらしい。
滅多に撮影できるものではないから、しばらく待っていると案の定、
警報機が鳴り出した。しばらくしてゆっくりと抜海方面へと特急列車が踏切を横切って
行く。その踏切を渡って、南稚内のセイコーマートのATMでお金を下ろして、南稚内に
戻れば、列車が来る頃合いだろう。
南稚内のキヨスクで駅弁を購入する。店員のおばちゃんと訊ねると北海道でこの暑さは
異常だという。平年なら半袖では肌寒いくらいのはずだが、この暑さではあまり駅弁を
置いておくわけには行かなくて参っているとのこと。私が購入した1個でどうやら売り切れ
の按配らしい。
話が続けたところでは、元々横浜に30年ほど住んでいたそうだ。
横浜の大和付近に住んでいて、娘さんも東京で働いていたそうだが、
あまりの人の多さがストレスになったのか、結局この稚内へもどって来て18年ばかりを
一緒に暮らしているそうだ。北海道という土地柄、寒さに耐えて、不便な環境にも耐えて
心身強い人たちという勝手なイメージがあったが、どうやら一部は違うらしい。
あまりに多くの人に関わるという未体験に驚いてしまうらしい。その洗礼を乗り越えた者が
東京という魔界に生き残れるのだろう。

やって来た列車はすでに大半が地元客で席が埋まっていたが、
途中の豊富や幌延で降りて行き、我ら観光客だけの他は車両後方には黄色い声。
若い学生らしき集団が乗っている様子だ。幌延では38分停車する。昨日乗って来た列車と
ここでご対面することになる。今度はこちらが発車してから向こうが発車する。

輪行(りんこう)客が数人。途中まで自転車、途中から袋に詰めた自転車を持ち運んで
列車に乗っていく行為を「輪行」と呼ばれているようだが、最近は珍しくない光景だ。

幌延では38分ほど停車するのだが、駅前には何もない。

何もないところで何をするか。携帯やスマートフォンを弄るなら誰でもできる事だ。
その携帯の電池が切れたら?圏外だったらどうするのだろう?
車内を改めて見渡すと時間の使い方がうまくない人が多い。携帯から離れるのが怖いのか。
列車は観光のために運行されているのではない。鉄道事業者側の事情と利用者の需要の
最適解であるダイヤに従って運転されている。嫌がらせで38分も停車するのではない。

しかし居眠りしていない限りは、38分も列車内でじっとしているのは退屈だ。
携帯の狭い画面を見続けるのも、イヤホンで好きな音楽を聴き続けるのも退屈になる。
なので、私は車外に出る。乗り遅れたら次の列車まで待てばよい。かなり待つけれど。
海外ならともかく、ここ日本だ。鉄道の定時運行では世界レベルの信頼度がある日本では
発車時間が遅れる事はあっても発車時刻前に発車する事はないだろう。
(まれにそんな事故が発生したというニュースはあったが)
人間の気まぐれに比べたら、列車のダイヤは余程の信頼がおけるのだ。

幌延を出発して雄信内。そして宗谷本線唯一のトンネルを抜ける。
昨日とは逆に右手に天塩川が沿ってくる。ゆったりとした流れが心地よい気持ちになる。
正面の線路に目を向けると、こんなところに線路を敷いたものだ感心してしまう。
平坦な土地ではなく、山の斜面に縋るように設置された鉄橋を見るだけでも工事は困難を
極めたものだと想像できる。

次は天塩中川。車両奥から地元のおばあちゃんがひとり、前のロングシートまで移動する。
列車が駅に停車してからその座っていたロングシートからゆっくりと立ち上がる。
学生さん達の憩いの席でもあるが、おばあちゃんが駅に降りるサポートも果たしている。
個人的には嫌いなロングシートが、この列車ではやさしい存在なのだと気づかされる。

特急列車の待ち合わせのために10分程停車する。
ホームに下りて列車の撮影をしていると、名寄方面から特急サロベツがやってきた。
サロベツは向かいのホームに停車すると、あわただしく稚内へ向けて発車していく。
発車してからこちらもすぐに発車して良さそうなものだが、16時42分00秒になってから
発車する。秒単位まで改めて正確なのだと感心してしまう。

佐久。普通列車待ち合わせのために5分停車。
どうやら下りの普通列車がやって来ると同時にこちらが先に発車するようだ。
発車してからシャッター音がしたような気がして、ふと右斜め向かいに同業者を発見。
一眼レフのレンズを構える先を見るからに線路がカーブするところで天塩川とのアングル
を狙っている様だ。

音威子府。中年女性が1人乗車。そして1人下車。乗務員が1人。名寄まで行くのだろう。
右手から差し込む夕日は今日も一日の終わりを告げようとしている。
列車は線路のつなぎ目を拾い、軽快なリズムを刻みながら、飛ばしていく。

天塩川温泉を出ると、警報機と遮断棒のない踏み切りの直前で列車は警笛を鳴らす。

豊清水。下り普通列車がすでに待っていた。こちらが先に発車する。
「JR時刻表」で見ると、今乗っている列車は幌延、名寄で列車番号は変わるが、北剣淵と
南比布以外のすべての駅に停車していく1日1本だけの貴重な直通列車である。
この列車に乗れたことで、普段は窓から通り過ぎてしまうのを見るだけだった駅に降り立ち
じっくりと撮影する事が出来るのである。

この区間はやたらと警笛を鳴らす。警報機と遮断棒のない踏切が多いのだろう。

美深。まとまった客が乗り込んでくる。昨日の稚内行きは1人しか乗ってこなかったから
廃線するのではという心配は余計なお世話かと思ったが、学生さんばかりであった。
比率は大半が女の子である。やはり心配だ。心配しても仕方ないのだけれど。
学生さんが減って利用客が減れば、こちらは別の理由だが、信越本線のように線路が
分断されて、一部、そしてすべてがバス路線にでも置き換わってしまうのかもしれない。
一見賑やかな車内だが、客層を観察すると決して安定した利用状況とは言い難い。
安価なフリーパスで旅行している身分が意見できる立場ではないのだけれど・・・。

女の子たちとロングシートの関係だけは東京も北海道も変わらない位置付けだ。
まとまった人数では落ち着かないボックスシートよりは居心地は良いらしい。
こうして現代っ子との住み分けがロングシートとクロスシートで成されている(?)

美深で乗り込んできた客の中で1人特異な存在だった若い男は、先ほどの一眼レフの
男性の隣に座っておしゃべりが始まった。私のような同業者は団体行動をあまり好まない。
特定の列車を撮影するために、またオフ会といった集まりでもない限りは、単独行動が
メインになる。待ち合わせた友人の可能性もあるだろうが、たまたま同じようなメガネで
同じ波長を感じ取って意気投合した、というのが自然だと思われる。

北星。日進。板張りのホームには乗降に必要最低限の長さしかない。
一両分も入らない長さからは、利用客も数えるほどしかいないのだろう。
根室本線の常豊信号所のような佇まいである。

名寄。美深で乗り込んできた先ほどの女の子達が一斉に下りていく。
名寄から乗ってくるのは旭川方面まで乗っていく客だろう。
相変わらず学校帰りの連中が多くを占めている。
学校卒業したら車に移るのだろうか。あるいは内地へ出て行ってしまうのだろうか。

旭川からやってきた快速名寄行きの2両編成が入線すると同時にこちらは発車する。
このあたりも札幌に比べると田舎なのだろうが、まともに民家も見かけない風景ばかりを
見てきたので、都会的に感じてしまう。

名寄を過ぎる頃にはすっかりと窓の外は暗い。
外の景色はよく見えないが、車内の灯が反射して鏡のように車内を映し出している。
終点までは車窓が映し出す車内の風景を楽しむことになる。

風連で学生さんが2人降り、おばさんが1人乗って来る。
風連で乗ってきたかわいい顔の女の子はすでに座っていたお友達の隣に座って
ボックスシートの背中越しに会話が聞こえてくる。
どちらがどちらの声かをその主を確かめようと後ろを振り向くわけにはいかないので、
真っ暗な車窓に眺めながら、かわいい声だなと思って聞いていたら最初は誰が誰と
付き合ってという話から最終的には周囲の愚痴に展開されていく。

メールでやりとり時間はお互いの暗黙の了解事項になっていて、この時間に寝てしまうのは
ご法度らしい。テレホーダイの時間は寝るな、みたいもなものか。

剣淵。学生さんの乗り降りは続く。
習慣的にロングシートに集まる彼らだが、列車内だけなら東京の山手線などは居心地が
良いに違いない。クロスシートでは居心地が悪いのだ。私のように先客がいれば、
気まずそうに肘掛けに腰掛ける。女の子程ではないが、円陣文化は残っている。
けれども女の子に比べると、円陣の仕方はあまり上手ではない。

東六線。学生さんは何人か降りていくが、まだ車内は青春(?)の空気が流れている。
和寒。ここでも学生さんの下車が続く。あと20年もしたらこうした風景も昔話になるのか?

間が持たないのを恐れるように始終携帯を弄っているのと、気まずい事は避けたい、
というのは場所が変わっても人は変わらないなと思う。
僕らが棺おけに入る頃には花の変わりに携帯の山で手向けられる絵を想像してしまう。
そのうち、ソフトだけでなく彼女もダウンロードする世になるかもしれない。

夜の塩狩峠に差し掛かったらしい。急にスピードがゆっくりになる。
塩狩。特急列車の通過待ちのために6分程停車する。

留萌。ホームは暗く、小さな駅舎内の蛍光灯に大量の蛾が入り口のガラス戸に
張り付く様に羽音を立てている。下車したジャージ姿の女の子はすでに寄せていた眉を
さらに寄せて不機嫌な表情を露にしながら駅舎の脇の通り道からホームの外へ抜けていく。
何もしないのに、車内から窓越しに見つめる女の子たちは「かわいそう」と口にするが
下車した女の子は蛾が集まっていることよりも車内から見ている女の子たちがそう自分を
見ている事に機嫌が悪くなっていたように思える。

比布。ホームに降りた友達を見送るシーン。我が地元では見かけない風景だけに少し新鮮。
北永山。旭川までもうすぐだが、宿の関係でひとつ手前の旭川四条で下車する。

旭川四条。私を含めて降りたのは3人。
地元の若い男の子2人はそのまま階段を降りてしまうのかと思ったが、ホームに佇んでいる
私を見て、片方の男が話しかけてくれた。
宿泊する宿がこの近くにあると印刷した地図を見せたら、丁度帰り道なので近くまで
案内してくれるという。地図では何とかなりそうだったが、高架の駅から降りてみると
迷いそうであった。自転車を取りに行ったもう1人の彼は、一旦自分の家に戻ってから
また合流してくれて、本日の旅の最後に暖かな気持ちになった。

つくもノヲ”X="1≠ 567


【北海道&東日本パスの旅 3日目】 綱渡りの15分間と失望の稚内駅

↓ 201 津軽線~津軽海峡線~函館本線~室蘭本線~千歳線
急行 はまなす

05:55着
新札幌

↓ ※徒歩

厚別
06:14発

↓ 921D 千歳線~函館本線

08:55着
旭川
11:15発

↓ 3321D 宗谷本線

12:35着
名寄
12:40発

↓ 4329D 宗谷本線

(15:14着)
(幌延)
(15:49発)

↓ 4333D 宗谷本線

16:59着
稚内

↓ ※徒歩

南稚内







いつの間に眠りに就いたのだろう?目が覚めたら時間は4:44。不吉な時刻に目が覚めた。
函館で嫌でも目が覚めるものと思っていたが、予想外にも眠りに落ちていた。
何度か「はまなす」に乗って、本気で眠れたのは初めてである。
乗り慣れて緊張しなくなったこともあるだろうが、途中で車掌に起こされないのも
快適性に大きく差がつくようだ。こういうところは金をケチってはいけないのかも。

結局、隣の席の人は現れなかった。他に空いている席を見つけて乗っているのか、
乗っていたのかもしれないが。しかしその点は大して問題ではない。
「はまなす」がこの先も定刻で運行されることが、ある駅に降りるまでの大問題である。
成功する確率は高いだろうが、失敗する可能性もある。
5分以上のダイヤ乱れが発生したら、計画は諦めざるを得ない。それを考えると
何だか気持ちが落ち着かなくなってくる。

今回は鈍行列車のみで稚内へ向かうことにしている。
札幌から旭川へ函館本線で、旭川から宗谷本線に乗り継ぐことになるのだが、
最初の難関がこの旭川へ向かうルートである。時刻表を確認してみると、稚内まで
乗り継ぐ事ができる鈍行列車に乗り換えるためには、札幌から6:01に出発する921Dで
旭川まで乗っていくしかない。この列車を逃すと、途中から特急列車に乗らない限り
その日の内に稚内に辿り着く事は不可能になる。

そして「はまなす」の札幌着は6:07。これでは921Dには乗れない。

さてどうするか?
まず、思いつくのは他の乗車ルートで旭川へ向かう事だが、時刻表をどう確認しても
12:25より前に旭川へ到着することは不可能である。

ならば、素直に乗車券と特急料金を払って特急列車に乗るしかないのか?
答えは否、実は知っている方は知っている有名な裏技が存在する。
その裏技が成功するにはある駅まで「はまなす」がダイヤ通りに運行する事が
前提条件になってくる。

ある駅とは、「新札幌」である。
もしも「はまなす」がこの駅に停車せずに終点さっぽろまで通過するダイヤだったら
残念ながらこの裏技は通用しない。

Googleマップなどで新札幌を確認して頂きたい。
それほど遠くないところに函館本線の厚別がある。
実は両者の駅は歩いて15分程の距離にあり、はまなすの新札幌は5:55着。
大して札幌から出発する921Dは厚別を6:14に発車する。この間約20分足らずだが、
「はまなす」が定刻通りであり、入念に道順を下調べして迷わなければ、間に合うらしい。

テニスラケットの団体さんは南千歳で一斉に降りていった。
南千歳を定刻に発車。ここからが勝負である。遅れてくれるなとその心の祈りが
通じたのかは不明だが、新札幌も無事に定刻着。

ホームと停車中の列車を素早く撮影して、改札へと階段を下りていく。
新札幌からはしばらくは線路沿いに歩けばよいのだが、第関門は改札から出る方向を
迷わないことである。念のために改札の駅員に尋ねて改札を出てから左に曲がって
さらに奥に進んだところの左手の階段を降りることを教えてもらう。

「はまなす」に乗っている間にiPhoneのマップで確認していたが
目印となるセブンイレブンが見えてくれば、後は線路沿いにしばらく歩くだけだ。
教えてもらった階段を降りて、横断歩道の向かいにセブンイレブンが見える。
第一関門は無事にクリア。さらに前方には3人ほど若い男性が歩いている姿が見える。
どうやら同士らしい。地図を確認しながら厚別駅に向かっているのは間違いない。

こちらは紙ではないが、iPhoneのGPSによる現在地確認機能がある。
市街地であれば、ほとんど誤差はなく表示するので実用に耐えることは確認済みだ。
これのおかげで初めての道でも不安なく、歩いていくことが出来るので大変助かる。
実はこの現在地確認機能はここだけでなく、これから何度か活躍することになる。

厚別の写真撮影する余裕がほしいので、彼ら3人を追い抜いて足早に歩いていく。
線路沿いから今度は右手に曲がってしばらく上り坂をだらだらと5分程歩いていくと
次第に一見すると分からないが、厚別駅の細長い建物が正面に見えてくる。
所要時間は10分ほど。競歩のようなペースで歩かないと撮影しながらは厳しいだろう。

改札を抜けるときには発車の3分前。余裕があるかと思ったが、そうでもなかった。
改札側のホームから線路を挟んだ向かいのホームへと跨線橋をわたっていく。
ホームで待っていると、しばらくして列車の接近を知らせるアナウンス。

北海道では見慣れた白地に青と緑の帯の気動車がやってきた。
こうして無事に921Dに乗り込むことに成功し、ひと時の緊張から開放された。
一般人ならこんな馬鹿げた事などせずに素直に札幌から特急列車に乗ることだろう。
東京ならば通勤・通学時間帯のピークなのだろう、普段は客もまばらなのんびりした
車内も、学生やスーツを着たビジネスマンで席は埋まっていてどこか絞まって空気だ。
これから各駅で待っている乗客を拾っていくだろうが、不思議なのは小田急線のように
どんどん混雑するというようにはならない事だ。乗り込むのと入れ替えに降りていく
客がいるのか、それ以上あまり客が乗り込んでこないのか、バランスが維持されている。
だが、北海道を走る気動車では恐らく乗車率がピークと思われる車内も終点旭川までは
続かないことも知っている。記憶が間違っていなければ、途中の岩見沢で一斉に客が
降りていくはずである。

今日も天気に恵まれている。北海道の天気は変わり易いから天気予報は参考程度だ。
札幌を6時に出る列車に乗っていくことを考えると、それよりも早い時間に起きないと
いけない事を考えると、デッキで立ちながらパンを食べている学生さんに同情する。
その点、少し待っていれば列車がやって来るような環境の我々は少し遅れただけでも
文句を垂れる贅沢な身分である。

乗る列車が限られているから時間には厳しいのかと思ったが、その逆らしい。
職場にも北海道出身の人がいて、その人の話では時間にはルーズらしい。
移動がどうしても車中心になるから、時間をそれほど気にしないらしい。
北海道民が東京へ住んだら、鉄道に関しては時間に厳しいという文化に驚くのだろう。

岩見沢。4分停車。予想した通り、まとまった乗客が降りて行く。
向かいに座るスーツの中年男性も一緒に降りていくものと思ったが違っていた。
最初は降りる駅だと思って、席を離れたようだがすぐに戻ってきた。
旭川まで乗っていくのかもしれない。寝たふりしたり、メガネをはずしたり、かけたり、
腕時計を見たり、と落ち着きがない。
普段は乗らないような人種が向かいに座っていることで警戒心というか、ストレスとして
居心地の悪さを感じているのかもしれない。

車窓に目を向けると、秋の訪れを知らせる使者が何羽も飛び交っている。
日本海を北上するときには見かけなかったが、北海道ではとんぼが飛んでいる。

美唄。特急の停車駅ということもあって、岩見沢についでまとまった利用客という印象。
茶志内。ここで特急列車の通過待ちのために4分停車する。
「茶、しない?」なんてナンパな駅だろうとか、考えていないと夜行列車明けで
また居眠りをしそうだからだ。車内をよく観察すると同業者を発見した。
首から下げているパスケースには青春18きっぷの「常備券」だろう。
「常備券」はブームなのか?単に偶然、何度も見かけているだけだろう。

奈井江。豊沼。それまで客層の大半を占めていたビジネスマンの姿に代わって
学生さんが乗り込んでくるようになる。札幌から滝川までが通学・通勤圏なのだろう。
学生さんが何人か一緒に乗り込む場合、ボックスシートに誰か座っていると気まずいのか
隣のボックスシートに座りきれない場合は、空いているから座ればよいのに肘掛けに
寄りかかるという中途半端なスタイルを取る。あるいはデッキに近いロングシート部分に
集まるのは、男子でも女子でも変わらない。

彼らにはボックスシートよりもオールロングシートの方が居心地は良いかもしれない。
さて旭川で2時間ばかり時間が空いてしまうのだが、どうしたものだろうか。
向かいにずっと座っていた先ほどの間が持たない中年男性氏は学生さんが乗り込むのと
引き換えに砂川で降りていった。

滝川でほとんどの客が降りていき、車内はガラガラになる。
ようやくのんびりとした列車旅がはじまりそうである。

江部乙。おばあさんが2人乗車。大学生なのか若い男性と女性が2,3人乗車。
伊納を出ると、常備券氏はデジカメ撮影に余念がなく、席を立ったり、座ったりと
大変忙しいご様子である。石狩川を渡ると終点の旭川である

当初は帯広でお土産を買うつもりだったが、旭川駅前にある西武百貨店で買う事にした。
旭川駅構内にもソフトバンクがあるようなので、営業時間までマクドナルドで朝マックを
食べながら時間をつぶし、iPhoneの充電をお願いする。いやはや大変助かる。

お土産代は予算を5000円ばかり超えたが、想定の範囲内である。
頃合いの時間に駅へ戻り、ソフトバンクから充電してもらったiPhoneを受け取り、
駅弁とお茶を買った袋を携えて、ホームへ向かうと1両編成の気動車が待っていた。
1両編成の快速「なよろ」はすでに満席に近く、車内は少々暑い。

夏なのか、秋なのか良く分からない暑さの中、我がボックスシートは後から乗り込んできた
数人の団体客によって埋まる。隣の中年女性組はデジカメで撮影した写真を見ているが
ちらっと見えた限りではこれも人気がある旭山動物園号の車内らしい。
名寄まで乗りとおす客はそれほど多くないだろうから、途中で空いてくるとだろう。
そしていつの間にか、意識を失ってしまった。

目が覚めると比布。向かいの男性は雰囲気から察するに稚内まで乗りとおす人だろうか。
隣の女性達は旅行の幹事らしき男性から弁当を受け取り、蓋を開け始めている。

塩狩峠に差し掛かると、最新鋭の気動車も喘ぐようにゆっくりと走っていく。
そしてゆっくりと坂の頂点に位置する塩狩を通過していく。空を見上げると入道雲。
夏の終わりが近づいている気がする。向かいの男性の窓側にパスケースが見えた。
「北海道&東日本パス」のようだ。やはり稚内まで一緒なのかもしれない。

和寒。数人が乗り込んできたが、こんな時でも一両なのかと思っているかもしれない。
和寒を出ると、列車は軽快にスピードを上げていく。

隣のボックスシートを埋める団体客も同じように駅弁を広げている。すぐ隣も中年女性組
と思っていたが、よく見ると母と女の子で参加している様だ。家族ぐるみで一緒に旅行へ
出かけているのかもしれない。母親らしき女性は「JR時刻表」を広げて、女の子にも
見せている。旅行行程が印字された紙を見ながら、女の子に教えているようである。
女の子は封筒からその行程が書かれた紙を取り出していたが、さりげなく覗くと
「稚内」の文字が見えた。どうやら団体さんは稚内まで行くらしい。
稚内から富良野線はノロッコ号に行くらしい。急行「きたぐに」の文字も見えたので
大阪からはるばず日本海沿いに列車でやってきた人たちの様だ。

車内は相変わらず暑い。窓を開けずには居られない。
JR時刻表の索引地図と目的のページを行ったり、戻ったりが面倒になったのか
母らしき女性はとうとう索引地図を時刻表から切り離してしまった。
女性同士だと実に合理的に動くのだと実感してしまった(笑)
女の子さんの今までの行程を一生懸命メモしている姿が微笑ましい。

名寄。定刻着。降りようと席を立ったところで、先ほどの男性に呼び止められ
汗拭きに使っていたタオルを忘れるところであった。
線路を挟んだ向かいのホームに待っている一両編成の気動車に乗り込むが、
人数が少ないような気がする。それもそのはず、先ほどの団体さんを見かけない。
どうやら後の列車で稚内へ向かう行程らしい。もちろん先ほどの男性は一緒である。

すでにクロスシートは埋まっていたので、先頭寄りのロングシートに座る。
これならトイレもすぐ近くだし、前面展望も一緒に楽しめるので結果的によかったか。
今回は北海道をじっくりと楽しむというのが旅のテーマなので、駅弁を食べながら
のんびりと車窓からの風を受けて、宗谷本線を堪能することにしたい。

美深。立派な駅舎とは逆に新たな乗客がおあばさん1人のみだった。
よもや、廃線になるのではと地元利用者でもない私が余計な心配をしても仕方ない。

音威子府。17分停車。前回この駅を訪れた時には50代と思しき男に話しかけられ、
お陰で停車中の車内で1時間半飽きることはなかったが、今回初めて駅舎をじっくりと
眺めることになった。駅舎の撮影、駅スタンプ、天北線資料館をゆっくりと堪能するには
17分では少々物足りない。1時間あれば丁度良い。

音威子府そば(16時まで営業)を食べている男の子は迎えを待っているのか、
発車直前になっても乗り込んでくることはなかった。列車はホームを離れていく。

音威子府を出ると、左手には天塩川が出迎えてくれる。
太陽の光は厚い雲に透けている。間接照明のようにやわらかい光に照らされているが
天候は崩れるかもしれない。怪しい空模様にも見える。

佐久。2人下車。どちらもおじいさん。若い人が下車したのを見たことがない。
北海道でも端へ近づく旅に、いや度に見かける人の年齢が比例して高くなっていく。
中年女性が1人乗車。iPhoneの電波が圏外になるように、日常から少しの間だけでも
圏外になる感覚がうれしい。でもあまりの長期間は駄目なのである。
圏外になっていたら、ずっとアップデートできないからだ。やがて使えなくなる。

旅は自分のペースで行けるのが良いと考える。
移動の効率を考えたら、自由度を考えたら、飛行機や新幹線や車や飛行機がいい。
でもどこでゆっくりと物思いに耽る時間が取れるのだろう。その時間こそが旅が
日常からしばらく圏外になることを実感することができる時間である。

新幹線ではない列車旅。旅程のほとんどを移動にとられる非効率な旅。
移動の時間は長くて退屈だ。だから物思いに耽る時間も長く取れるのだ。
そして車のように安全運転に神経を注ぐ必要はない。ビールを飲んで居眠りしてもよい。

時刻表通りにしか移動できないのだから移動には制約がある。
もちろん列車は観光だけに運行されているのではない。沿線利用者の需要に合わせて
ダイヤは組まれている。しかし仮に私のような観光客の好きな時に乗れるものだったら、
列車旅の楽しみは半分以上無くなるだろう。

制約をパズル感覚で楽しんでいる部分がある。
私が幼稚園の頃からあったから少なくとも20年以上の歴史があるプラレールのように
数限りある線路を限られた範囲で、自分の思い描くレイアウトに最大限近づけるように
考えながら線路を敷いていくのと、紙の時刻表でまずは索引地図を眺めておおよその
移動ルートを頭に浮かべながら、それぞれのページに書かれた数字の羅列から列車の
乗り換え方法を検討していくところはとても似ている。
時間をかかるが、安くどこまでも連れて行ってくれる。プラレールがある限り。

天塩中川。2人下車。先ほどの乗ってきた中年女性は一区間だけで降りていった。
普段は車を利用しているのだろう。時間帯が合い、列車に乗ったという感じだ。

左側を国道が沿っている。冬になるとひどい時は雪で埋まる時があり、白いふとんによって
そこに道路があるのがわからなくなる。ふとんから顔を出している標識や両端のポールで、
ようやくそこに道路ががある事に気づくほどである。
車はもちろん通れず、列車が唯一の交通手段になる。
北海道は夏と冬と少なくとも二回行かないといけない所だろう。
雄信内。特急列車のすれ違いのため4分停車。ここから先は時刻表にある通り、
普通列車でも通過してしまう駅があり居眠りしないように油断は禁物なのである。
幌延。35分停車。宗谷本線では音威子府の次に停車時間が長いだろう。
時刻表では名寄方面の列車と同時に発車する。駅前には何もないが、少し奥へ進んだ所に
ガソリンスタンドとAコープという地元らしいスーパーがある。
ただしレジ袋は有料。一枚100円らしい。駅に戻る時、ふと足元のマンホールを見る。
地元とは違って、北海道らしいデザインになっている。
改札そばに貼られている路線バスのポスター「萌えフリーキップ」が気になる。
留萌の「萌」を萌えに使おう、同じように考えている人はいるようだ。
これからはルモエ本線になるのだろうか。

お土産品もよく見たら、「萌え」を使ったお菓子が並んでいる。
同じようなお土産品は秋田駅でも見たが、すでに北海道はに萌えて問題ない。(笑)

豊富。特急の停車駅でもある為か、名寄以降でまとまった人数が乗車。
次は抜海。予想したとおり、天気はさらに怪しくなる。
稚内に到着する頃には雨が降っているかもしれない。どうしたものか。
稚内まで一緒かと思ったが、パスケース氏は幌延で降りていった。
抜海から南稚内までのわずかな区間に海と富士(利尻富士)が見渡せる区間があるが、
カメラを構えた時にはすでに時遅し。明日天気に恵まれる事を祈る事にしよう。

終点の稚内に到着する。しかし様子がおかしい。
ホーム奥にあるはずの最北端の看板がない。
かつて特急列車が停車していた線路が綺麗にはがされている。
改札の駅員に訊ねると駅舎の移転工事中とのこと。
現在の駅舎から特急列車が停車たホーム、つまり最北端の看板があった線路側に新しく
駅舎を移転するようだが、改札を出るとホームだけではなく、駅舎の目の前を囲うように
工事の柵が立ちはだかっている。
その柵に掲げられた新駅舎の完成予想イラストを見て思い出す。
いつかWEBで見た情報だったが、稚内に映画館が出来たという内容。
映画館だけかと思ったら、駅舎を含めた再開発工事だったのである。
来年春には最北端らしい駅舎が白で統一された綺麗な駅舎になり、今の稚内駅を知る者には
少し残念な気持ちになるだろう。新しく出来た映画館の名前は「ティ・ジョイ・稚内」。
6月からすでに営業しているが、この映画館の創立者は収益よりも娯楽を提供しようという
目的でリスクがあるだろうに建てたらしい。
駅だけでなく映画館まで最北端が登場して、今後稚内はどのように変わって行くのかは
楽しみではある。
20時以降のレイトショーは1200円。本日泊まるホテルは南稚内。
国道40号線を歩いて30分だが、飲食店は南稚内の方が賑やかである。
雨が降っていなければ、ご飯の後に稚内まで夜の映画を楽しみたいが、
雨が降っていなくともお財布と相談した結果断念。近くのラーメン屋でラーメンと
ビールを飲んだら寝た方がよさそう。

つくもノヲ”X="1≠ 566


【北海道&東日本パスの旅 2日目】 ボックスシート戦線とリゾートしらかみ号 (下)











今日はよく晴れている。席は程々に埋まっているけれどゆったりした時間。
斜め向かいに案の定、メガネ氏の姿を確認。オールロングシートなら、
ボックスシートのような事件は起こす事もないだろう。
心配しても仕方ないが、唯一の心配は急行はまなすの自由席だろうか。
いなほの奥に白い雲、青い空。BGMは線路のジョイント拾う音だけ。
ヘッドフォンからの余計な音や携帯の余計な情報は要らない。
流れる景色とリズミカルに揺れる車内に身を任せて、何も考えない至福の時間。

遊佐。白シャツの学生さんが2人下車。
吹浦。迎えに来たのだろう、地元のおばちゃんが改札口の向こうで待っていた。
吹浦を出て再び左手に日本海が広がる。村上を出たときよりも心持ちは眺めが
良いような気がする。女鹿という小さな駅を通過する。
JRの首都圏を除いた特急列車メインで普通列車が少ないという路線は特に
各停という種別がない。鈍行列車でも通過してしまう駅が存在するためだ。

小砂川で特急いなほ号を待ち合わせのために3分程停車。
仁賀保。女の子と若い男性が降りて行く。駅員はJRの人ではなさそうな雰囲気。
向かいの座席にそばかすシスターズ。どちらも似たような黒縁メガネの女の子
2人組の会話の内容はアニメらしい。ガチャポンで出てくるようなポケモンの
玩具を弄りながら、ネガティブな空気が漂っている。
「腐女子」はこの東北にも存在するらしい。肌は荒れてお世辞にも可愛くない。
彼女たちだけに限った事ではないが、仲間内にしか心を開けなくなってしまい
社会性に乏しいようなタイプが多くなっているように感じる。

今まで気づかなかったが、火に油を注ぐ氏の姿も確認できた。
この2人には「はまなす」でも見かける事になるだろう。

子連れの親子、こどもがトイレのドアを開けるのに手間取っている。
普段列車を使わない親子なのかもしれない。

羽後本荘。4分停車。まとまった客が降りるわけではなかったが、
ロングシートはきれいに隙間が埋まる。と、メガネ氏は荷物を持って降りて行く。
どうやら、はまなす組ではなかったらしい。

岩城みなと。手前の家々の向こうに日本海。若者が数人乗り込んでくる。
大学生かもしれない。学校帰りでもなければ使うことはないのだろう。
道川。若い女性が一人乗車。国道沿いにガソリンスタンドが見えるが、
市街地という規模ではないけれど、小さな住宅街という様相だ。
下浜。上り普通列車と交換するために3分程停車する。地元の女の子だろう、
Tシャツにジャージのズボンにサンダルという格好で乗り込んで来た。
向かいのホームに上り列車が到着すると、こちらが先にホームを離れていく。

桂根を通過して新屋。JAとパチンコ屋は立派な住宅街からはまとまった客が
乗り込んでくる。主要駅に近づくほど乗り込んでくる客は増えてくる。
終点の秋田まではもう少し。この列車を最後にしばらくロングシート車両から
開放されるはずである。

秋田。定刻着。
リゾートしらかみの発車は2時間半後。昼ごはんとともに電池が心もとない
スマートフォンの充電をしておきたい。幸いにも秋田駅前にはソフトバンクがあった。
昼ごはんの間、ソフトバンクのショップに預けて充電をお願いする。

改札を出てから飲食店が集まっている側とは反対側へ歩くと、小さいながらも
インターネットカフェやチェーン店の喫茶店などがテナントになっているモールがある。
とある店で「ひゃっこしラーメン」なるものを食べてみた。見た目は冷やし中華だが
その味は間違いなくラーメンという少し不思議な食感である。秋田の新名物にするべく
ポスターが張られていたが、マスコミとテレビの力を借りないと名物として広まるのは
かなり時間を要するような気がする。

食後にふらっと喫茶店に寄りたい気分になるが、
北海道入りするまではあまりお金は使わないようにしないといけない。
といっても、これから乗るリゾートしらかみで5時間も何も食わず飲まずでは
旅を楽しむには厳しいだろう。ビールやおつまみ、軽いものなら少しは良いだろう。

構内のベンチに座って、駅前のロータリーを見下ろす。
将棋の駒のように並んだタクシーはほとんど待ちぼうけを食っているようだ。
いつ乗ってくるのかわからない客のために、無駄にエアコンを利かせて待っている。
燃料ばかりが食っていく。蒸し暑い車内でじっとしていられず、外でタバコでも
吸っていないとやっていけない仕事なのだろう。この職業も楽ではなさそうだ。

リゾートしらかみはすでにホームに待っていた。
3両編成の真ん中の車両は個室になっていて、4人掛けのボックスシートになっている。
フラットシートにもなるようになっているので、1人で4人分の指定席を購入して
5時間ばかりをいわば日中走る寝台列車のごとく、寝転がりながらということも可能だが
少なくとも私は個室を独り占めする勇気は持ち合わせていない。

窓側の席が良かったのだが、みどりの窓口を訪れたときにはすでに窓側は完売。
結構な人気のある観光列車のようだ。この列車は東能代から五能線を走るために
方向転換する。そのため、秋田出発時は五能線からの日本海を堪能するためには
進行方向右側の窓側席がベストであろう。

五能線の単線に入ってしばらくは展望ラウンジで前面展望を楽しむ。
車内アナウンスでは途中の絶景ポイントで徐行運転を実施すると案内している。
単線の向こうに入道雲。これが根室本線ならなお最高だが、奇跡に近いだろう。

岩館~大間越のトンネルとトンネルの間で停車してしまうほど徐行運転によって
絶景をこれでもかというほどに堪能する。絶景と一言で片付けるのは少し違うか。
村上で見るのと、山陰本線で見るのとはまた違う表情がそこにある、というべきか。
夕日に照らされているせいか、どこか穏やかな印象だけれど引き込まれてしまう風景。
世界遺産でなくとも、それが白神山地と呼ばれている事を知らなくても、見る者は
素直に唸ってしまうに違いない。私はその1人になっていた。

五能線は普通列車の本数はあまり多くはない。
直通列車も設定されているが、私のように関東圏から鈍行列車で北海道へ向かう序に
乗っていこうとすると時間があわずに難しい。五能線を乗り通すだけで5時間ばかり
時間を要するからだ。乗り通せても「はまなす」には乗り継げないので、青森で
一夜を過ごす事になってしまう。なるべく鈍行という旅としては不本意ながらも
このリゾートしらかみに乗らない事には五能線を乗り通すことはできない。
しかし、そうした拘りを捨てて乗っていくと指定席料金510円だけで乗れるというのは
勿体無いと思われるくらい、乗り得な観光列車であることに気づかされる。

能代。バスケの街ということでホームにバスケットゴールがある。
しかもイベントではこのバスケットゴールにボールを入れる事もできる日本唯一の駅。
岩館でも同じく3分ほど停車。日焼けするのではないかと思われるような夕日を浴びながら
鯵ヶ沢までの80kmあまりをその左手は日本海が目を楽しませてくれる。
というより、ひと時も目を離せない絶景が続くと言った方が良いだろう。
風合瀬、追良瀬、驫木。難読駅名が2つも出てくる有名な駅を通過するときはさらに
本気を出してくるから目を離すわけにはいかない。五能線ほど日本海に一番近く長い
距離を走る路線はなさそうだ。前面展望でも車窓からの眺めも息をつく暇はない。

横を沿う国道の青い看板には「鯵ヶ沢 24km」が見えるころには夕日の光も弱まるが
広がる海と空との境界が曖昧になるとこの風景も見逃せない。
完全に暗くなるまでは目を離してはならない路線であるようだ。

十二湖。青森までの観光客なのかと思っていたが、大半が降りていくところから
五能線沿いに宿泊するらしい。ここでまとまった客が入れ替わることになる。
一度は空いた隣の窓側席だったが、すぐに次の客によって埋まってしまった。

展望ラウンジ付近で千畳敷海岸を堪能して席に戻ってから意識が無くなったらしい。
車内販売で買った瓶入りの濃厚な味のリンゴジュースを飲んでから油断したらしい。

陸森田。そして木造へ。木造ではしばらく停車してほしかった。
駅舎の壁一面に怪しく目が光る遮光式土偶の「しゃこちゃん」をゆっくりと
観賞したかったのだが、どうやら駅へと向かう直前のカーブからその全貌を遠巻きながら
撮影できるシャッターチャンスを逃してしまったらしく、ホームに到着したときは
丁度死角となり、見られるじまい。発車してしばらくは「しゃこちゃん」の目からだろう
早く点滅する紫色の光をなんとか確認できただけであった。
陸羽鶴田。木造では(「きづくり」ではない・・ややこしい)日本一長いとされる橋が
あるそうだ。海から離れて内陸部を走るようになっても油断は禁物である。
先ほど車内販売で購入したリンゴジュースの生産地でもある板柳へ向かう途中には
右手を津軽富士こと、岩木山の雄大なシルエットが構えている。

板柳を出ると、川部までをリンゴ畑の中を列車は走り抜けていく。
寝台特急「あけぼの」で見たときよりもこちらはリンゴ畑はより近くに見える。

川部。ここで6分停車。定期列車を先に通すためである。
このまま青森へ向かうものだと思っていたが、列車はひとつ秋田寄りである弘前へ
スイッチバックのごとく戻る。寝台特急や特急列車との交換する事情があるために
一旦弘前に戻る必要があるのだろう。

弘前ではしばらく停車する。同じ青森方向へ向かう普通列車や特急列車を先に通すためだ。
車内アナウンスでも、臨時列車のためで定期列車を優先して運行すると流していた。
後から来た普通列車に乗れば、このリゾートしらかみよりも30分ほど早く到着するようだが
急ぐ用事でもないので、このまま終点までの1時間ほどをこの列車で楽しむことにした。
弘前から青森を走る時間帯が夕食として駅弁を食べるのに丁度よいのである。
早くから車内販売で購入しておいた「しらかみ弁当」の蓋を開けて、暗くなって見えない
車窓の代わりに駅弁の味を楽しむことにしよう。

特急列車が発車してからしばらくしてこちらも動き出すが、次の川部で運転停車。
上野へ一夜ひた走る「あけぼの」を先に通すためであった。夜に溶け込むような青い車両が
すれ違うのを見送り、こちらも再び発車する。

北常盤。18:43に運転停車。13分停車すると車内アナウンス。
弘前から1時間もかかるのは何度かこうした運転停車をするダイヤになっているためだ。
おかげでゆっくりと日本海の絶景に満足した余韻を浸りながら、駅弁を楽しめる。
定期列車が夜の闇の中をお先にと、横を走り抜けていく。

大釈迦。ここでも運転停車。別に伝えなくても良いのだろうに親切にも車内アナウンスでは
すれ違う上り列車が遅れていると教えてくれる。19:12に発車する。

19:24.津軽新城で最後の運転停車。上り特急列車とすれ違う。
そして終点青森。手持ちのiPhoneの電池残量は60%ほど。秋田でフル充電して5時間ばかり
撮影に使っていたが、このペースなら1日1回どこかで充電すればなんとかなりそうだ。

青森では駅前のカプセルホテルに向かう。ビルの4階にあって、本当は時間外なのだが
入浴だけを利用させてもらう。1000円なり。何度か利用させてもらっているが、
今回は青森に宿泊する予定であり、その際にこのカプセルホテルを利用するつもりだ。
毎回入浴だけというのも申し訳ない気持ちがあったり、なかったり。
ついでにフロントでコンセントを貸して貰えないかと尋ねたところ、携帯の充電なら
フロントで預かってくれるという。どうやら携帯の紛失事故が発生したらしく、
それからフロントで預かるようにしているという。

前回までなら20時には青森駅のホームに行っていないといけないが、
今回は事情が異なる。はまなすの指定席券を購入しているので、自由席確保のために
発車の2時間前からホームに並んでいる必要はないのである。

今年の夏販売から冒頭で述べたとおり、「北海道&東日本パス」の使用条件が変更になり
従来「はまなす」は自由席は追加料金なしで乗車できたが、自由席以外は乗車券と
急行券、指定席券が別途購入しないと乗車できなかったため、自由席戦争がこのきっぷの
利用時期には毎度繰り返されていた。

今夏からは、自由席についても別途急行券を購入しないと乗車できなくなったが、
指定席ならさらに指定席券を寝台ならさらに寝台券を追加で購入さえすれば、
乗車券を購入しなくても乗車できるようになった。また今までは「はまなす」限定だった
急行列車が「きたぐに」にも適用されるようになったので(はまなすと違って、こちらは
JR東日本区間のみ利用可だが)使い勝手が少し良くなったのだ。
同じ金を払って乗っていくなら、席を心配をしなくて済む指定席が精神衛生上よろしい。

同じ事を考えている者はいるだろうから、すでに指定席は埋まっているのかと思ったが
予想に反して難なく自分の好みの指定席を確保することができた。
デッキの人の出入りを気にしなくて済むように、車両の出来る限り真ん中の窓側席を確保。
夕食は先ほどのリゾートしらかみの中で済ませてあるので、後は時間が来るまで
ゆっくりと待っていればよい。

ドリームカーではない指定席は自由席と座席のグレードは全く変わらないが、
自由席と違って、一度車内検札を済ませてしまえば、折角寝ていたところを函館で再び
車内検札で起こされる事がない。この事は6月の「周遊きっぷ」の旅で学習済みである。
旅に出て毎度の事ながら、夜行列車には隣の席に若くてかわいい女の子は座っていない。
カップルを除けば、あとは私を含めてムサイ野郎ばかりで埋まっている。
同じ車両の前半分の網棚には「YONEX」と書かれたテニスラケットのバックが積んである。
どうやら試合か何かの帰りだろうか。静かでいることはありえない連中だろうが、
時間が経つに連れて静かになっていくので、大して気にはならない。

つくもノヲ”X="1≠ 565


【北海道&東日本パスの旅 2日目】 ボックスシート戦線とリゾートしらかみ号 (上)

↓ 8763M 山手線~東北本線~高崎線~上越線~信越本線
快速 ムーンライトえちご

04:51着
新潟
04:56発

↓ 3921M 白新線~羽越本線
快速

05:52着
村上
05:56発

↓ 821D 羽越本線

08:18着
酒田
09:37発

↓ 539M 羽越本線

11:31着
秋田
14:12発

↓ [秋田~東能代]: 8625D
[東能代~弘前]: 8525D
[弘前~青森]: 8635D

奥羽本線~五能線~奥羽本線
快速 快速リゾートしらかみ5号


19:32着
青森
22:42発

↓ 201 津軽線~津軽海峡線~函館本線~室蘭本線~千歳線
急行 はまなす






向かいの車窓は徐々に明るくなってくる。ロングシート車両ではあるが
夜明けから乗る時間帯にはほんの少しは旅情が感じられる。
久しぶりに乗って朝日に光るレールを見たからかもしれない。

金塚を通過すると単線区間。中条。ホームには「中条まつり」の提灯が
いつくかぶら下がっている。だが待ち人の姿はない。静かな朝のホームを
出ると再び複線になる。しばらくしてコンテナ列車とすれ違う。
先ほどの老夫婦だが、男性側はもう飽きて来たのだろうか。
もう少し頑張れそうな様子である。

平木田を過ぎると、雲に隠れてぼんやりと形が歪んだ太陽が顔を出す。
坂町。男性一人が下車。次は終点の村上である。隣の男性は先ほど
パスケースに入れた乗り継ぎのメモをちらっと確認していた。
坂町を出ると特急いなほ号に使われている車両とすれ違う。
鉄橋をゆっくりと渡るのは朝日を拝むためのサービスだろうか。(笑)

奥には田んぼと山々。山々は白く霞んでいて朝日と空と水墨画の様だ。
この辺りは大抵居眠りをしていて、初めて見たような気がした。
居眠りは勿体無いのだ。居眠りして良いのは地元の小田急線だけだ。

記憶では向かいの前方に待っていると思っていたが、そうではなくて
同じホーム、つまり同じ線路の前方に待っていた。だから村上に到着
する直前でしばらく停車したのちにゆっくりとホームへ入線するのだ。
車両の運転席後ろでは、つまり村上ダッシュをするべく何人かが
スタンバイしていた。そして私もその中に加わる。ドアが開いて
ダッシュしたのはよかったが、大きなミスを犯してしまったのである。
3両編成だが、ボックスシートは一番後ろの車両だけだったのだ。
何という不覚・・・。時すでに遅し。かくして当初の目論見は失敗に
終わるのであった。仕方なく海側のロングシートに座る事になった。

村上を出てしばらくすると、左手に日本海が広がってくる。
何度も見慣れている景色のはずなのだが、飽きずに写真を撮りたく
なってしまうのは何故だろうか。
越後早川。ホームには待ち人なし。乗ってくる客はいなかったが、
ホームの外からこちらに手を振る小さな男の子とおじいちゃん。
越後早川を出るとしばらくトンネルが続くが、トンネルとトンネルの
切れ間からは海岸に立って早朝の釣り人の姿が数十名程見えた。
日本海、いなほ、お墓、そして農家と思われるほう被りをした老婆達。

桑川。男性一人が下車。小さな無人の駅舎を出ると正面には日本海が
見えるのだろう。大きなリュックを背負っているが、釣り人では
なそさそうである。その男性が駅舎を出たところで列車は動き出す。
海岸をよく見ると先ほど同様に釣り人や貼ってあるテントが確認できる。

府屋。女子高生(?)が一人下車。いつも乗る車両が座れないと分かって
前方の車両へと移動していった。
国道7号線の青い看板には「酒田 64km」。鼠ケ関。男子高生(?)一人
乗車。反対側には新津行きが停まっていた。小岩川。男性一人下車。
それなりに下車客はいる様である。あつみ温泉。男子高生(?)と中年
男性が乗車。五十川、小波渡と学生さんと思しき数人が乗車してくる。

山形の通学風景がこの付近までとすれば、関東圏の感覚ではえらく
長い通学時間である。しかし列車の本数は少ないから特に学校帰りでは
途中の駅で降りて寄り道する、という事はできないのだろう。
必然的に列車内で長時間を過ごさねばならないのだから、
これが毎日続けば退屈極まりない。そしてその退屈凌ぎとして携帯を弄る
風景が場所が変わっても見られることになるのだが、どの学生も
申しあせた様に携帯を弄っているのを見ると、時間を潰す他の手段に
考えは及ばないものかと少々首を傾げたくなるのは私だけだろうか。

羽前水沢を出てしばらくすると田んぼが広がってくる。
6月の周遊きっぷで特急いなほ号で通り過ぎたときはまだ青々としていて
張っている水に空と白い雲が鏡のように映っていたが、今はこのいなほが
黄色く彩りを添えて、秋の訪れを教えているようだ。

羽前大山でも学生さんが乗り込んでくる。停車するたびに学生さんが
乗り込んでくるために乗車率もほどほどになったが、これから先は人口が
減少していくと言われている事が間違っていないとすれば
学生さんで賑やかだった車内の風景も昔話となるのかもしれない。
何度か列車の旅に出ていると、個人的には利用者の大部分は学生さんか、
この先それほど長くないかも知れない(失礼)高齢者という印象であり、
東京に限らず、各地方の首都圏(北海道なら札幌など)でよく見かけるような
その中間層と思しき年代の人に見かける事が少ない。

鶴岡。一気に学生さんが下車していく。ここで3分停車。
私のような乗り通す客を除いて、車内の客層が入れ替わる。
そして毎度、このあたりで油断していると意識が無くなっているのだ。
寝ていても終点の酒田で起こされるだろうが、酒田で待ちぼうけを食うことになる。
次の列車まで時間が空くし、何より後述の「リゾートしらかみ」に乗り損なう事は
どうしても避けねばならない。それに次回もこうした旅が出来るかは分からない。
あるいはずっと出来なくなるような予感があるから、寝るのは勿体無い。

東北地方を横切るように陸羽東線で小牛田に出るルートも面白いが、
今回は秋田から「リゾートしらかみ」で青森へ向かう事にしている。
五能線経由で快速列車として青森へ向かう観光用の列車であり、
五能線の売りである日本海の絶景をゆったりと眺められるように窓は大きく
運転席のすぐ後ろにも座って前面展望が眺められる仕様になっていて
快速列車なのにワゴンによる車内販売がある事からかなり気合が入っている。
なお運用は臨時列車という扱いのため、後でも記すように定期列車を優先した
ダイヤ設定になっている。

余目では陸羽西線への乗り換えと思われる客が降りていく。
砂越。中学生かな女の子2人組みが乗ってくる。そして事件が起きたのだ。
名づけてボックスシート事件。一般人とオタク(?)の壮絶(??)な戦いを
隣のボックスシートで見て見ぬ振りをする事になったのである。

進行方向左側のボックスシートがようやく空いたので座ったが、
隣のボックスシートにはおじいさんが一人座っていた。
なんとなく偏屈な空気を感じたが、しばらくして若きメガネの男性が
その席に座るおじいさんに声をかける。

「そこ、私が座っていたんですが・・」
「ここは指定席なのか?何の権利があるんだ?」

メガネ氏の言い分では席にカメラの三脚が置いてあったらしいが、
私が座ったときには座っているおじいさん以外に三脚は見当たらなかったが、
進行方向の席を確保しているつもりで置いてあった三脚がおじいさんには
分かっていながらもわからない振りをして座ることを決め込んだ
という按配らしい。

この緊張した車内にさらに火に油を注ぐ者が現れる。
2つうしろのボックスシートに座っていた若き男性は寝ていたのか
おじいさんの大きな声で寝ているところを起こされたと抗議した。すると
今にも殴りかかろうという勢いでその男性のところへおじいさんが詰め寄る。
幸いにして最後尾の車両だったため、暴力沙汰になる前にすぐに車掌が
乗務員室から出てきて仲裁に入ったため、何とか事なきを得そうだ。

おじいさんには「襟首を掴みましたよね?」と尋ねて、暴力と認定されれば
警察沙汰ですよ?と暗に教え、メガネ氏にも「荷物を置かれて席を離れる方も
いらっしゃる」とメガネ氏へも少し落ち着くようにと教えていた。
自身の業務内で限られた時間の中ですばやく解決へ導く光景を目の当たりし
これがプロの仕事かと少々感心してしまった。こうした場面を見ると
定時運行を乱す恐れがある客同士のトラブルにも常に神経を使う大変な職業だと
改めて思うところだ。けれども、いろんな種類の客に大量に接する職業として
そこで得られる経験は大きいだろうし、その経験が他の仕事で通用する自信に
つながるのも大きいような気がする。そして精神的に体力がない人にはキツイ
職業でもあるのだろう。楽な仕事など堅気の世界ではないと思うが・・

酒田に定刻着。
ホームに降りると、先ほどのメガネ氏が火に油を注ぐ氏へ駆け寄って
話しかけていた。メガネ氏がすれば、共に立ち向かってくれた戦友のように
感じているのかもしれない。火に油を注ぐ氏にしてもおじいさんは煙たい存在
だったという事で戦うつもりだったのだろうが、メガネ氏を助けるというよりも
あの不穏な空気がいつまでも続く事を絶ちたいというのが動機らしい。

だが下手をすると、もっと大きな事件になっていたに違いない。
今回のおじいさんのようなタイプはどんな正論を言ったところで聞く耳は
持たないだろうから、プロである車掌氏に任せるのがベターであった。

火に油注ぐ氏のその動機は良いのだが、トラブルが長引けば列車が遅れる原因
になるし、あなた(=おじいさん)だけでなく、他の方も嫌な気持ちで乗らない
といけなくなる、ということを告げても事態は解決しなかっただろう。
その点を考慮して車掌も触れなかったのだろう。

メガネ氏はホームに降り立ってもまだ付近をウロウロとしている。
私と同じく「はまなす」組なのかもしれない。

酒田では次の列車まで1時間ほどある。
前の旅では朝ごはん代わりに「かがちゃおこわ」という、炊き込みご飯に
グリーンピースが散りばめられたものを食べたが、これは駅弁らしい。
量の割りには680円という値段は高すぎるが、今回は同じ駅構内の土産屋で
売っている「ただっ子ソフト」なるものを食べてみた。
ただちゃ豆という枝豆を使ったソフトクリームで豆の味が強いのかと思ったが
そうではなくほんのりと香る程度であり、バランスが取れている。
こちらは駅弁と違って、値段も良心的なところを見るとそれなりに売れて
いる商品なのかもしれない。
ソフトクリームだけでは小腹は満たされないので、前回も食べた
玉こんにゃくを2本頼んだ後(からしを付けると、眠気もさめて一石二鳥!)
締めにインスタントコーヒーをゆっくりと飲む。

酒田からは再びロングシート車両。
今回はなるべく景色を楽しむ事を旅のテーマにしているから、そうなると
ロングシート車両もそれほど気にはならない。気の持ちようである。
といっても駅弁を食べる時は困ってしまうのは変わらないが(笑)

つくもノヲ”X="1≠ 564


【北海道&東日本パスの旅 1日目】 ゆめぞら号と旅立ちの夜

※仕事終了後、そのまま

渋谷
10:07発

↓ 3600E 山手線~東北本線~高崎線
  特快 湘南新宿ライン
  
11:56着
高崎
12:25発

↓ 735M 上越線

13:26着
水上
13:42発

↓ 1741M 上越線

13:50着
土合
14:25発

↓ 9736M 上越線
  快速 ゆめぞら4号
  
14:36着
水上
14:40発

↓ 744M 上越線

15:45着
高崎
15:50発

↓ 946M 高崎線~東北本線~山手線

17:32着
赤羽
17:36発

↓ 1716K 埼京線

17:51着
新宿

※一旦帰宅

新宿
23:10発

↓ 8763M 山手線~東北本線~高崎線~上越線~信越本線
快速 ムーンライトえちご

これまでこの「北海道&東日本パス」というきっぷには北海道へ旅行
する際にはよくお世話になってきた。これまで有効期間が連続5日間
だったため、鈍行列車だけで移動しようとすると、追加料金なしでは
急行「はまなす」で3日目になってようやくたどり着く。

青森~函館相互発着に関しては自由席特急券のみ購入すれば自由席に
乗車可能という特例を活用すれば、青森~蟹田の自由席特急券
500円を購入して、木古内から普通列車に乗り換えれば、函館には
2日目の20時に着く。もっともほとんどの人は追加料金なしで乗れる
唯一の夜行列車である「はまなす」でこうした追加料金を節約して
宿代わりとして北海道入りするのが、王道になっているようだ。

私のような関東在住にとっては3日目の朝から北海道の列車旅が
始まることになる。しかし北海道の滞在可能日数は3日目と4日目の
2日間しかない。4日目の夜には札幌に戻り、本州に5日目の朝から
自宅のある関東方面へと南下しなくてはならないからだ。

交通費を節約した場合はこうしたモデルになるが、例えばすでに知られている
手法として、「ムーンライトえちご」で新潟へ向かう1日目の夜は
このきっぷの代わりに新宿~高崎の普通乗車券を別に購入して有効開始日を
1日遅らせるという手がある。このきっぷは翌日にまたがる夜行列車の場合
0時になって最初に停車する駅まで有効だからだ。
ムーンライトえちごで新潟へ向かう場合は高崎になる。

こうするときっぷでは2日目の朝から北海道入りが可能になる。
つまり3日間は滞在可能になるが、北海道を縦横無尽に移動したいなら
やはり丸5日間ないと経験的には満足できないと思われる。
だからこのきっぷは北海道内の移動専用にして、行きと帰りは新幹線なり
寝台特急なりで移動するのが現実的な使い方なのだと思う。

それが今回有効期限が同じ値段で7日間と2日間伸びたのである。
2日間伸びたということは、北海道での滞在期間も2日間伸ばせる
ということを意味する。そしてこの機会を逃してはならないと今回は
このきっぷを2枚購入した。連続14日間を2万円で移動出来る機会は
今後の事を考えるとこれが最初で最後になるかもしれない。

そして希望していた長期休暇が取得できた。後は旅行の準備をするだけ。
今回はこの13日間を使って、北海道をゆっくりと満喫する計画である。

夜勤明け。そのまま家に帰って少し寝ても良いのだが、ここから休み。
時間が勿体無い。何か臨時列車はないかとここ数日探して見つけたのが
ほくほく線で走っている「ゆめぞら号」である。通常は乗り入れる事が
ない水上まで運転されるという。ゆめぞら号にも乗ってみたかったので
これはちょうど良い機会だ。しかも夜勤明けでも何とか途中の土合から
乗る事ができそうである。

まずは渋谷に出る。ここから湘南新宿ラインで高崎へ。少し前までは
この湘南新宿ラインは走っていなかったので、こうした場合には
運行している事が大変ありがたいと感じる。

高崎から水上行きに乗り換える。水上では2両編成の長岡行き。
休日だからだろうか、おそらく運転されるSLみなかみ号の撮影などで
これほど混んでいるのだろう。客層は私のような同業者と谷川岳辺りへの
登山客と思われる中年諸氏に大別できそうだ。カメラを首にぶら下げた
若きカメラマンは水上で降りないところは、私と同じ目的だろう。

今年6月に「周遊きっぷ」で北海道へ旅行したときとは嘘のように
混雑している。普段からこれ程の利用者が見込めれば本数も両数も
増発されて越後湯沢への移動もし易くなるだろう。
新幹線が移動時間短縮という現代のスピード世代のニーズに応える
花形列車の影で在来線は必要最低限のダイヤになっていく。
そのうちに信越本線のように上越線も分断されてほくほく線が水上まで
の路線になってしまうのかもしれない。

長岡行きは土合で登山客がけっこう降りるものと思われるが
モグラの穴のようなトンネル駅に着いたら、後ろを振り返ることなく
目の前の長い階段を登って行かないといけないのである。
上りホームにすでに到着しているはずのゆめぞら号を少しでも撮影する
ためになるべく早くである。最初は早かったかけ昇るスピードも
半分と行かないと内に息が苦しくなってきた。長すぎる階段である。
残り20段ほどを残して改札口へと進むと上りホームから数人が戻って
くる姿とすれ違う。駅の利用者ではない。もちろん同じ目的だろう。
そうでなければ、臨時列車を除いたら一日5本しかやってこない
山の駅に普段は人の気配がないからだ。どうやら車でやって来た様で
目的達成のためにこれから帰ろうというところだろう。






到着した10分程前までは彼らもホームにいて、一時の賑わいを見せて
いたのだろう。その彼らと丁度行き違いに到着したので、結果としては
落ち着いて撮影できるので良かったのかもしれない。
単線の上りホームと山と入道雲。その手前にゆめぞら号の2両編成。
水上まで5時間かけてようやく撮影できたが、実に遠い場所である。

一通りの撮影が済むと車内へ。
車内も普段は乗り入れる事がないとあって、同業者がソワソワしている
のが目立つ。小さな子連れもいるようで、楽しげにはしゃいでいる。
ホームでは土合駅の入場券を販売しており、折角なので購入した。
無人駅では入場券の必要はないのだが、購入しようにもなかなか機会は
ないと思い、購入した。絵入りの硬券タイプである。正式な入場券は
とうの昔に販売は廃止されたのかもしれない。

車内で発車を待っていると、突然の夕立。
ほくほく線の乗務員氏達で交わされる会話が聞こえたところによると
返却回送の際に水上で足止めを食らわないかを心配しているようだ。





トンネルではこの列車の売りであるシアターが上映される。
車内が暗くなり、ミラーに反射されたプロジェクターからの映像が
音楽とともに流れる。上越線では滅多に見れらない貴重な体験だ。
湯檜曽へ向かう途中に眼下に見える湯檜曽駅はすっかりと有名らしい。
車内アナウンスはなかったが、視線は皆そちらに注がれる。

ほくほく線を知ってもらうためのPR活動のひとつだろう。
こうした臨時列車で利用状況が良ければ、水上まで運転されるかも
しれない。本数が極端に少ない水上~越後中里は特に移動しやすくなる。


水上へ到着する直前にSLみなかみ号として使われる蒸気機関車が
転車台で煙を吐いて鎮座していた。その周りにはカメラマン。
乗り換える列車に余裕があれば、ゆっくりと撮影したいのだが、
これから一旦自宅に帰らないといけない。蒸気機関車が並びなら
とても様になるのだが、運転まではまだ時間があるようで、ホームで
青い12系客車との並びを撮影するのが精一杯であった。

このまま順調だったら、新宿で席を確保しておいたロマンスカーで
1時間程居眠りをする計画だったのだが、赤羽まで来て運転見合わせ。
常磐線の車両トラブルの影響で前後の列車が団子状態という。
こうしてロマンスカーの特急券は無駄になってしまった。
これから長期の旅行のためにあまり節約しないといけないのだが、
それでも新宿からロマンスカーと急行列車では天国と地獄である。
ロマンスカーの誘惑には勝てない。手を出してしまった。

朝から何も食べていないために鈍く響いてくるこの空腹感。
缶ビールとおにぎり2個を手にしてロマンスカーに乗り込むしかない。
この快適さを味わってしまうとなかなか抜けられないのである(笑)

自宅に戻って風呂に入り、身支度をしてから再び出発する。
旅の始まりは行先がどこであろうと小田急線からだが、新宿からの帰りと
違って、旅行の場合は何故か苦痛にならない。興奮しているために
普段の苦痛を忘れてしまうのかもしれない。映画「酔拳」のように
酒の力で痛みを感じないのと似てるかもしれない。
私は今、旅という名の酒に酔い始めているのだ。

これまで北海道には5日間の旅行には何度か出かけた事があるが、
13日間という私にとっては長期旅行となる経験がない。
おおよその旅費は見当がつくのだが、それでも旅の途中では何があるか
わからない。長期休暇も給料日直前からクレジットカードによる前月の
引き落としがある10日までで取得したのである。

手数料はかかってしまうが、北海道にも駅やコンビニにATMがあるので
必要に応じて引き出せばよいだろう。それでもなるべく北海道にも入る
9月になるまではなるべく使わないように気を付けないといけない。




新宿の5番線ホームで待っていたムーンライトえちご。
見慣れた国鉄色ではなく、山梨方面への臨時列車や常磐線からの臨時
急行列車である「ぶらり鎌倉号」などに使われている塗色である。
水色を基調とした色は昔のムーンライトを思わせる。といっても実車は
みた事がなく、写真で知っているだけであるが。
臨時の急行列車となってしまった「能登」に使われている関係のためか
いつもの国鉄色が不足しているため、運用変更されているのだろう。

先頭の1号車は女性専用のレディースカーになっているが、車体側面を
よく観察すると凹みの補修した後が見える。今後長くないことを暗示
しているような気がした。今年の冬から廃止と噂される「青春18きっぷ」
と時期が重なっているが、指定席券は何なく入手できた。
学生さんの夏休みが終了間近というのが大きいように思われる。

大宮を出てからしばらくして検札が始まった。
どんな客が利用しているのか観察するよい機会でもある。乗客が見せる
きっぷを見ると、私と同じきっぷの者や青春18きっぷの者を見かけるが
前の座席の青年が窓脇に置いているパスケースには青春18きっぷの
赤い券、いわゆる常備券と呼ばれるものが見えた。
窓口のマルス(発券端末機)や指定席券売機で出てくる黄緑色のものでなく
特定の駅にしか置いていないが、窓口で購入できるものだ。
JR東日本ではもう扱っている駅はないらしく、そうなるとはるばる
西から渡って来た途中なのかもしれない。

記憶が正しければ、車内検札が終了した車両から順に少し車内灯を
暗くしていたような気がしたが、車掌の車内アナウンスでは暗くする
事はないという。初めて乗った時には興奮していたためか、眠る事は
出来ずに新潟から乗り換えたロングシート車両の中で居眠りをしていた。
何度も乗り慣れているためか、夜勤明けだったこともあって、少しは
眠れた塩梅である。何度か目は覚めたが、意識がはっきりとしたのは
終点の新潟に到着する事を告げるチャイムとアナウンスであった。

少し汗っぽいので、下車する前に洗顔を済ませる。
着いたら向かいのホームで待っている筈の快速村上行きに乗り換える。
運用が変わっていなければロングシート車両が待っているはずである。
この列車だけ快速列車なのは、かつてのムーンライトえちごが村上まで
運転されていた名残である。新潟までに運転短縮されてもダイヤだけは
残っていて今に至る。車両の運用事情があるのだろうが、快速運転する
なら当時のまま村上まで運転するようにすれば良いのにと思う。

到着したムーンライトえちごは方向幕を忙しなく「回送」に切り替えた。
それを見送りながら、ロングシート車両の快速村上行きに乗り込む。
学生さんの夏休みが終了間近とはいえ、旅行客は多いようである。
席の確保が出来るかは重大事項のひとつ。村上からは気動車の酒田行きが
待っているはずである。全線電化されているのに何故か気動車で走る。
早朝の車両回送も兼ねているのだろう。おかげで貴重な気動車による
旅が楽しめるのはありがたいことである。

乗り換える酒田行きは左側のボックスシートを確保せよ。
と、心の中で呟く。朝の日本海を楽しむためである。日々の雑事は
忘れやすいのだが、こうした事ははっきりと覚えている。
いや、体に染み付いているような感覚が何だか嬉しいのである。

ロングシートに合わせて横長の車窓には徐々に空が明るく、景色が
はっきりとしてくる。今日は天気に恵まれているようである。
向かいのロングシートに座る老夫婦は「鉄道地図帳」というタイトルの
本を手に抱えている。座席に丸めて置いてあるもう一冊はおそらく、
「おとなの青春18きっぷの旅」という雑誌だろう。
どうやら青春18きっぷで旅行している老夫婦のようである。

この老夫婦に限らないが、男性諸君の方が例外なく楽しさや興奮を
隠せいないでいる事がほとんどである。見ているこちら側も何だか
連帯感のようなものが湧いてくる。